goo blog サービス終了のお知らせ 

隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0975.さらば愛しき女よ

2009年04月04日 | ハードボイルド
さらば愛しき女よ
FAREWELL, MY LOVELY
読了日 2009/04/04
著 者 レイモン ド・チャンドラー
Raymond Chandler
訳 者 清水俊二
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 364
発行日 1976/04/30
ISBN 4-15-070452-X

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

ステリーが好きだといっても、僕の中では昔からハードボイルドと呼ばれる小説にミステ リーという認識は持っていなかった。何か間違った解釈が僕の頭の中で交錯していたようだ。積極的にハー ドボイルドを読もうとは思っていないにも拘らず、今までに74冊も読んでいるのは、結構興味深いカテゴリ ーということだろう。
本書もそういったことから、古書店で見かけるままに買ってきたものだ。ハードボイルド・ミステリーの先 駆者とも言うべきチャンドラー氏の、映画化もされているあまりにも有名な作品だから、いまさらという感 じで今まで手が出なかったのだろう、などと自己分析をしても無意味なことだが・・・。

 

 

1940年に発表されたこの作品は、当時のアメリカの世相、風俗などを背景にして展開される。世界大戦を間 近に控えた年代にも拘らず、そうした緊迫感はなく、都会を舞台にしたストーリーながら、どちらかといえ ばアーリーアメリカンといった風情を思わせる雰囲気で進んでいく。
主人公の私立探偵、フィリップ・マーロウについては、これまでに幾度も映画やドラマになっており、多く のファンを取り込んでいる。僕はこの探偵を知ったのは割と遅くになってからで、1975年に本作をもとに制 作された映画「さらば愛しき女よ」だった。原作よりは大分年上で中年のフィリップ・マーロウを演じたロ バート・ミッチャム氏の醸し出す雰囲気は、原作を読んだ今でも彼のイメージが重なるほど、僕の中に深い 印象を残した。世評に名高いハンフリー・ボガード氏の主演作「三つ数えろ」(原作は「Big Sleep(大いなる 眠り)」)もその後に見てはいるが、僕の中ではフィリップ・マーロウといえばロバート・ミッチャム氏が 思い浮かぶ。

 

 

ンドラー氏の長編は本作を含めて7作にとどまっており、いずれもフィリップ・マーロウを 主人公とした名作として知られているが、それゆえに僕と同様映像では見ても原作は読んでいないという人 も多分いるのではないか?(そんなことはないか!)
本書では、大鹿とあだ名され、その名のとおりの巨漢マロイに、人探しを依頼されるところからストーリー が始まる。この発端でマーロウと大鹿(ムース)マロイの出会いの描写が映像を見ているかのような表現力 で表されていて、その後の展開を予感させる重要な場面だ。
銀行強盗の罪で収監されていたマロイは出所したばかりで、刑務所に入る8年前に「フロリアン」という酒 場で歌手として働いていたヴェルマという女を捜していたのだ。だが、8年という歳月は街も店もすっかり と様相を変化させており、「フロリアン」は黒人の店となっていた。マーロウを連れて店に入ったマロイは 店の経営者モンゴメリーとの話し合いの最中に、モンゴメリーが銃を出したために、殺してしまう。

 

 

ところで 、本書を読んでドラマや映画と少しニュアンスが異なっているところがちょっと気になった。映像化された ものを見ると、どれもがフィリップ・マーロウと警察官との軋轢のようなものが誇張されすぎているような 感じがするのだ。この中でも一部にそういった表現箇所はあるものの、彼が事務所を構えるロスの警察とは 、それほどの摩擦はなく、ある意味では協力的だと思えるところもあり、認識を少し改めた。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0907.女には向かない職業

2008年09月10日 | ハードボイルド
女には向かない職業
An Unsuitable Job for a Woman
読了日 2007/1/31
著者 P.D.ジェイムズ
P.D.james
訳者 小泉喜美子
出版社 早川書房
形態 HPB1235
ページ数 256
発行日 1975/4/10
ISBN 0297-112350-6942

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

書については、以前桜庭一樹氏の「少女には向かない職業」(732.参照)のところで、タイトルが似ていることから、ちょっと触れたが、テレビドラマを先に見ているので、どうかなと思いながら読み始めたら、幸い?といったら言いかドラマとは別の物語だった。
本書に登場する女私立探偵、ミス・コーデリア・グレイはまだ22歳の独身女性で、もちろんの事妊娠などしていない。ドラマに登場する妊婦としてのコーデリアが頭にあったものだから、原作もそうなのだろうと思っていたので以外だった。

ブライド探偵事務所というのが彼女の働く場所で、元警察官のバーニイ・ブライドが彼女のパートナーだった。そのバーニイ・ブライドが癌を苦に事務所の自室で自殺した朝から物語りはスタートする。
彼の遺言で、事務所の権利をそっくり譲られたコーデリアは、若い自分を一人前のパートナーとして扱ってくれたバーニイの遺志を継いで、一人で私立探偵としてやっていこうと決心するのだが、誰もが彼女に「女には向かない職業」だという。そうしたところへ、1件の依頼が舞い込む。

微生物学者のロナルド・カレンダー卿から呼ばれて、コーデリアは使者のミス・レミングと共にケンブリッジの彼の屋敷に赴く。数週間前に首をくくって死んだ息子・マークの、自殺の理由を調べて欲しい、というのが依頼の内容だった。
マークは誰にも理由を告げず、突如大学をやめて、マークランド少佐という人物の庭師に就職してしまったという。彼はマークランド少佐の屋敷の敷地内にあるカテージに住み込んで庭師の仕事をしていたが、2週間ほど前にそのカテージで首をくくって死んだというのだ。
コーデリアは仕事を引き受けて、マーク・カレンダーが死んだカテージから調査を始めたのだが・・・・・・。

コーデリアがミニ(車)と自分の足を使って、こつこつと調査をする過程は退屈な部分もあるが、このストーリーのすごいところは後半になってやってくる。著者のP・D・ジェイムズは本書の前に既に数冊の、詩人で警視のアダム・ダルグリッシュを主人公としたミステリーを発表しているのだが、その後半部分に彼を登場させてコーデリアと対決させているのだ。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0887.いつか、虹の向こうへ

2008年05月29日 | ハードボイルド
いつか、虹の向こうへ
読 了 日 2008/05/29
著  者 伊岡瞬
出 版 社 角川書店
形  態 単行本
ページ数 323
発 行 日 2005/05/25
ISBN 4-04-873612-4

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

25回横溝正史賞受賞作。テレビ東京賞を同時受賞して、同局でドラマ化されており、BSジャパンで放送されたものをDVDに録ったが、僕にしては珍しくまだ見てない。
ある時期僕は横溝正史賞の受賞作に疑問を感じたこともあり、(確かこの日記にもそのことを書いたことがあるが?)以前ほど興味を持てずにいたが、それでもネットに安く出ていると、つい手を出してしまう。というようなことで、それほど期待せずに読むことにしている。
本格か、あるいはファンタジー系の作品かと思って読み始めたら、タイトルに似合わず、ハードボイルドだった。

 

 

心臓疾患の息子が3歳で亡くなり、巻き込まれた事件で、犯罪者として獄舎に繋がれることなり、妻にも離婚されるという、哀れな中年男・尾木遼平の生き様が描かれる、ストーリー。
離婚した妻への慰謝料支払いに当てるため、持ち家を売りに出しているが、買い手が見つかるまでの間、彼は、二人の男と一人の女を同居させている。この擬似家族のような面々がそれぞれに個性的で、それぞれにひとつのドラマを抱えており、必要に応じて、それらの胸の痛くなるようなエピソードが語られる。
だが、そうしたエピソードとは別に、主人公の関わる事件は、暴力団のトップを巻き込む事件に発展して、サスペンスを盛り上げる。

形を変えて暴力に痛めつけられる主人公は、かっこいいスーパーマンではなく、警察を追われた、元刑事という、羽根をもがれた鳥のような弱い立場ながら、あらゆる手段を講じて、戦う姿が痛ましくも、好感が持てる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0820.刺青(タトゥー)白書

2007年08月21日 | ハードボイルド
刺青(タトゥー)白書
読了日 2007/08/21
著 者 樋口有介
出版社 講談社
形 態 単行本
ページ数 317
発行日 2000/04/10
ISBN 4-06-210167-X

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

つ頃からか、東京創元社から創元推理文庫で著者の作品が次々と刊行されている。
つい最近この「刺青(タトゥー)白書」も出た。どうやら柚木草平シリーズを全巻出す予定のようだ。著者の作品に登場するキャラクター達に魅せられて、僕は今まで、結構著者の作品を読んできたが、数えてみたら本書で 23冊目となる。このフリーのルポライター・柚木草平のシリーズだけでも5冊目だ。

 

 

本作は、これまで読んだシリーズと少し趣きが異なり、半分以上は三浦鈴女(すずめ)という女子大生の行動が描写される。
CMで売り出したアイドルタレント・神崎あやがマンションの自室で、殺害された。三浦鈴女は、神埼あやが中学時代の同級生・小筆眞弓であることを知り驚く。さらに、その後偶然出会ったばかりの、これも中学時代の同級生・伊東牧歩が隅田川にかかる吾妻橋の橋脚で水死体で発見されるという事件が発生。 鈴女は立て続けに同級生二人が死んだ事件が偶然とは思われず、興味を抱いて調べ始める。伊藤牧歩と出会ったときに一緒にいたのが、同じ同級生で野球部のエースだった左近万作だった。しかし、将来はプロへの道も夢ではないと思われた当時の面影はなく、6年の歳月に彼女の知らない人生が流れていたことを思い知らされる。
今回は、この三浦鈴女の青春ストーリーがメインとなり、併行して、というよりその陰で柚木の事件調査が行われるという形で物語りは展開する。ハードボイルドと青春ミステリーのドッキングは二つの物語を楽しめる。

 

 

は変わる。
購読している東京新聞の日曜版に載っていた数独というパズルを何の気なしにやってみた。この数独というパズルがあることは前から知ってはいたが、面倒そうなので手を出さずにいたのだ。
いろんな呼び方があるこのパズルは、縦横九つのマスからなる正方形がさらに3×3=9の区画が9つというように区割りがされている。
その中に幾つかの数字が配置されており、空いているマスに縦の列9つに1から9の数字をダブらないように埋めて、それが横の行にも1から9の数字が重複しないように埋めていくというパズルだ。
そして、さらに3×3=9の小区画にも1から9のダブらない数字が埋まらなければならないというルールがある。
言ってみれば数字によるクロスワードパズル、否、数字だからクロスナンバーパズルか?
最初から配置されている数字が次々に埋める数字のヒントになっていることは云うまでもない。
新聞には「手始めに」という入門用の問題と、ちょっと上のクラスの問題と2問が掲載されており、文字通り手始めにやさしいほうから取り掛かると、こちらは最初から配置されてある数字が多く、割とスムースに進む。大体の勘所のようなものが分かり、もう1問の方に取り掛かると、こちらは簡単には進ませてくれない。少ないヒントの数字を縦横にスライドさせるような感じで空白に生める数字を考えるのはちょっとした頭の体操だ。
途中で、休憩したり他の事を考えたりしながら完成させるのに2時間ほどかかった。
やっているうちにこのパズルは、演繹的な方法と、帰納的な方法との両方の考え方を必要とすることが分かってくる。また、嵌りそうな気がする。この読書雑感をブログへと公開することやら、数独に夢中になることなどで、ますます肝心の読書がおろそかになるようだ。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0778.ろくでなし

2006年10月01日 | ハードボイルド
ろくでなし
読了日 2006/10/01
著 者 樋口有介
出版社 立風書房
形 態 単行本
ページ数 284
発行日 1997/02/25
ISBN 4-651-66073-8

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

に会うというのか、とにかく読みやすく好きな作家の代表格となった著者。樋口有介氏の本もこれで22冊目となった。多分まだ読んでない本もわずかではないか?
こうして、読書を計画的に始める前に、P・コーンウェル女史の「検屍官」シリーズを立て続けに読んだ時もずっと続けて読みたいと思ったが、樋口有介氏の著作にも同様な感じを持っている。そういう読み手の感情を持たせるのがシリーズの狙いなのだが、樋口氏の作品にもシリーズ物はあるのだが、彼の作品には全部の作品を通じて、流れているものに共通のちょっと違うかもしれないが、ニヒリズムというのか青春ミステリーにおいてさえ、ハードボイルドの匂いを感じさせる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0766.枯葉色グッドバイ

2006年08月25日 | ハードボイルド
枯葉色グッドバイ
読了日 yyyy/mm/dd
著 者 樋口有介
出版社 文藝春秋
形 態 単行本
ページ数 464
発行日 2003/10/10
ISBN 4-16-322260-X

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

者の最高傑作とも言われている本書は、結構前に買っておいたのだが、楽しみは後にという気持ちで、とっておいた。
元刑事のホームレスを主人公としたストーリーで、彼に絡む二人の女と共に物語りは進む。冒頭に本羽田のマンションで一家三人を殺害するという残酷な事件の場面が登場する。殺されたのは主人の坂下吉成と妻の雅代、そして次女のいづみ。その夜、たまたま外出していた高校生の長女、美亜は難を逃れた。主人公・椎葉明郎に絡むのは、捜査本部の置かれた警視庁多摩川署で事件を担当する女刑事・吹石夕子巡査部長と、もう一人が生き残った美亜である。
僕は、登場人物たちの台詞回しや、時折挟み込まれるユーモアが好きである。最初に読んだサントリーミステリー大賞受賞作の「ぼくとぼくらの夏」(539.参照)以来、著者の描く若者たちの言動に青春を感じるとともにそこに作者の明るさ、暖かさを見る思いがするのだ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0733.冷えきった街

2006年06月27日 | ハードボイルド
冷えきった街
読了日 2006/06/27
著 者 仁木悦子
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 240
発行日 1981/11/16
ISBN 4-06-136173-2

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

立探偵・三影潤シリーズの長編。 文庫の解説や、インタビュー記事などで、著者の仁木悦子氏のミステリーに対する好みが、クイーンや、クリスティなどといった本格物より、ハードボイルドの方だということを知って、なるほどという感じがする。
デビュー作から本格推理を書き続けた著者だが、この三影探偵のシリーズを読むと、彼の語りで進められるストーリーや、文体がハードボイルドそのものという感触を受けるからだ。
主人公の確たる信念というか、自分の考え方を貫く、クールで物怖じしない態度なども、いかにもそれらしい語り口で描かれていく。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0706.刑事弁護士・南郷法律事務所

2006年03月09日 | ハードボイルド
刑事弁護士 南郷法律事務所
読了日 2006/3/9
著 者 島田一男
出版社 天山出版
形 態 文庫
ページ数 238
発行日 1989/6/5
ISBN 4-8033-1785-2

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

しばらく振りの南郷弁護士シリーズだ。
もう、何度も書いてきたがこの短編シリーズは昭和30年代の初めに「週刊東京」誌に連載されていた。
当時高校生だった僕は、毎週この週刊誌の発売を楽しみに待ったものだ。 掲載された作品はすべて読んだつもりだが、何しろ40年以上も前のことだから覚えているはずも無い。 今また読み返してみると、当時夢中で読み、何処に惹かれていたかも少しずつ思い出して、懐かしい。
事件を追うストーリーそのものも勿論面白いのだが、弁護士と若く美しく聡明なその助手との関係も花を添えている。 多少、女にだらしの無い弁護士がこの助手にだけは手を出せないでいるところが、かの国の弁護士とそのパートナーの間柄を思い起こさせる。

 


0656.愚か者死すべし

2005年09月25日 | ハードボイルド
愚か者死すべし
読 了 日 2005/09/25
著  者 原
出 版 社 早川書房
形  態 単行本
ページ数 355
発 行&nbsp:日 2004/11/30
ISBN 4-15-208606-8

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

ットの古書店で購入。
BOOKOFFでたまたま安いのを見つけて買った「私が殺した少女」(474.参照)を読んで、ファンになり、7月で全作読み終わったと思っていたら、昨年11月に出た新作の紹介がネット古書店であり、買い込んだ。
今回の発端は、沢崎がその年の最後に事務所のドアを開けた時だ。ドアに挟まれていたらしいメモが舞い落ちるが、今は亡き前の所長渡辺に宛てた伝言メモだった。死者に宛てたものなので棄てようかとしているところへ、メモを書いた当人が現われる。伊吹啓子と名乗る若い女性だった。

探偵・沢崎の新シリーズ第1弾ということで、前作の「さらば長き眠り」から10年が過ぎている。僕は、遅くなってファンになったから、読み始めてそれほど期間をおかずに全作読むことが出来たが、当初から著者の作品を読み始めた人にとっては、寡作な著者の作品をいつも待ちに待って読むことになったであろう。
寡作家の作品は秀作だといわれるが、総てがそうだとは言えないだろうけれど、この著者には正にあてはまる。著者のあとがきによれば、新シリーズも2作、3作と続くようなので、大いに期待したいものである。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0655.雨の匂い

2005年09月24日 | ハードボイルド
雨の匂い
読了日 2005/09/24
著 者 樋口有介
出版社 中央公論社
形 態 単行本
ページ数 217
発行日 2003/07/25
ISBN 4-12-003420-8

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

ットでは、ついつい単行本を買ってしまう。だが、家で読むには断然単行本のほうが良い。最近は、眼鏡が合わなくなってきたようで、文庫を読むのがきつくなってきた。しかし、週に何回か外で読むこともあるので、そういうときには文庫の方が携帯に便利なのだが。。。。

 

 

さて、今回のストーリーは樋口有介の世界であることに違いないのだが、それでも少しばかり違うような?今まで何度となく書いたことではあるが、著者の作品を読んでいると、なんとなく安心感のようなものが芽生えてくる。今回の主人公は21歳の大学生・村尾柊一。
塗装職人だった寝たきりの祖父・寛治との二人暮しで、父親・友員は末期癌で入院中。ある日、近所の親戚付き合いをしている小母さん・小林ハツが、知り合いから頼まれたという、緒川家の黒板塀の塗装の話を持ってくる。寛治は下半身不随で仕事は出来ず、柊一も小学生の頃祖父を手伝ってはいたが、職人ではない。柊一は、その緒川家に直接自分で断りに行く。
いつものように初っ端で事件が発生する話ではなく、至極平凡で、穏やかな、平和な日常生活が展開されていく。読んでいて、居心地の良い物語に入り込んで、このまま静かな日常で進んで欲しい、と変な期待を寄せてしまう。
大学は、専攻した環境生物学に熱が入らず、レンタルビデオ店店員のアルバイトに励む柊一には、小学生の頃離婚して父と自分を置いて家を出た母親・久子がいる。その母・久子が寛治の死亡保険金を目当てに借金の申し出をしてくる。
少しずつ、ほんの少しずつではあるが、事件の芽が蒔かれていくのだが・・・・。

人の心の奥底にある、いろんな感情が、それぞれの人たちの生き方に影響していく様が、自然な日常の推移の中で描写されており、読後ちょっと切なく、悲しくなる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0619.さらば長き眠り

2005年07月09日 | ハードボイルド

 

さらば長き眠り
読 了 日 2005/07/09
著  者 原
出 版 社 早川書房
形  態 文庫
ページ数 588
発 行&nbsp:日 2000/12/15
ISBN 4-15-030654-0

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

評家の評価や、世間一般の評判の割に寡作なのはテーマの取材や下調べに時間がかかるのだろう、と思わせるような作品がこの著者の特徴か?本書は今迄で一番の長編(文庫で576ページ)だ。
1年余り留守にしていた東京に帰った沢崎を待っていたのは、ホームレスの男だった。男は依頼人からの伝言を持っていた。曰く有りげな中年のホームレスと、姿の見えない謎めいた依頼人との関係も分からないまま、沢崎は依頼人を探しに・・・・。
11年前の高校野球の八百長疑惑事件や、その当事者・魚住の姉の自殺事件が今回の事件の内容だが、次々と関連する登場人物の連鎖が複雑に絡み合い、最後までその全容が見えてこない。
スーパーヒーローでない探偵沢崎の地道な捜査が絡み合った糸をほぐすように、次第に事件の細部が見えてくる過程が、胸を躍らせる。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0617.苦い雨

2005年07月05日 | ハードボイルド
苦い雨
読了日 2005/07/05
著 者 樋口有介
出版社 日本経済新聞社
形 態 単行本
ページ数 272
発行日 1996/09/17
ISBN 4-532-17048-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

口有介氏がどのような基準で作品を書いているのかは知らないが、一般的に言われている青春ミステリー(の旗手といわれている)と、いわゆるハードボイルドが交互に現われているような感じがする。ファンの僕としては、氏の作品はどちらも好きなので、ストーリーの源泉が枯渇しない程度にどんどん書いて欲しいとは思う。

 

 

本書は、林業関係の業界誌「アースレポート」の発行を生業としている”高梨”が主人公のハードボイルド。
高梨の前身は、化粧クリーム「バイオル」を主力商品とした化粧品メーカー「バイオル化学」の管理職だったが、あるスキャンダルがもとで会社を追われた。ある日、バイオル化学の総務部長・富塚からの呼び出しがかかる。亡くなった先代社長の愛人だった「長倉圭子を探して欲しい」というのが用件だった。そして茶封筒に入った百万円を渡した。
が、簡単に考えていた女探(ひとさが)しは、思わぬ方向に発展する。

この作者の作品を読んでいていつも感心するのは、合間々々に描写される植物の庭木や花についてだ。僕は植物にあまり関心がないので、自分ちの庭木の名前さえ判らないから、花の名前や、その匂いまでが物語られることが、なんとなく面白い。しかし、本作ではタイトルが示すテーマと、植物とが絡み合うことに読み終わって納得させられる。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0585.初恋よ、さよならのキスをしよう

2005年04月22日 | ハードボイルド
初恋よ、さよならのキスをしよう
読了日 2005/4/22
著 者 樋口有介
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 324
発行日 1995/1/15
ISBN 4-06-185866-1

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

刑事のルポライター・柚木草平シリーズの第2弾。この世に気の強くない女はいない、そう諦観しているのか、あるいは達観しているのか?だが、そんな柚木草平の傍にはなぜか美女が関わってくるのが不思議だ。そして、まだ小学生の娘の加奈子までもが別居している女房の和子に似て、気の強さを見せるようになった。
そんな娘を連れてのスキー場で、高校時代の初恋の相手永井実可子と遭遇する。だが二十年前の高校生の姿は実可子であるはずがない。ゲレンデの奥のテーブルに向かう実可子に似た娘を追うと、なんとそこには実可子本人が・・・・。若い娘は梨早といって実可子の娘だった。

そんなことがあってから1カ月ほどの後、ケイと名乗る女から電話があった。実可子の姪だといい「死んだ実可子について話をしたい」と言う。どうやら実可子は殺されたようだ。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


0559.十三度目の女

2005年03月01日 | ハードボイルド
十三度目の女
読了日 2005/3/1
著 者 島田一男
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 334
発行日 2001/10/10
ISBN 4-334-71187-1

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

南郷次郎弁護士シリーズの短編集。このシリーズは長・短を問わずすべて読んでいるはずなのだが、一向に記憶にないのは情けない。 特に短編は、殆ど大半が、廃刊になってしまった「週刊東京」に連載されたもので、もうかなり昔のこととなるが、僕は次号が待ちきれないほど、楽しみに週刊誌を買い続けたものだ。 というのも、当時、島田氏の他に横溝正史氏の金田一シリーズと、高木彬光氏の大前田栄策シリーズの3シリーズが、交互に2週連続で掲載されていたのである。
島田氏の作品は、この南郷シリーズに限らず、スピード感溢れるストーリー展開、テンポの良い、ユーモアのあるセリフなどが持ち味だが、 中の「ガラスの矢」では、珍しくほろりとさせる結末になっている。 作品群は、表題作を含めて10篇。主人公の職業柄、遺産相続に絡んだ事件が多く、一癖も二癖もある登場人物をかみ合わせた物語を展開している。 また、助手の金丸京子とは、ペリー・メイスンとデラ・ストリートの如く心地よい関係を保っているのはいつもの通りだ。

 

収録作
# タイトル
1 十三度目の女
2 銀色の恐怖
3 電話でどうぞ
4 黒い誕生日
5 拳銃何を語る
6 赤と青の死
7 ガラスの矢
8 無邪気な妖婦
9 大凶
10 悲運の夜


 


0550.誰も私を愛さない

2005年02月08日 | ハードボイルド
誰もわたしを愛さない
読了日 2005/2/8
著 者 樋口有介
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 426
発行日 2001/10/15
ISBN 4-06-273286-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

刑事のルポライター・柚木草平シリーズの長編第3作だ。例によって手に入ったものから読むので、順不同になる。

 

~~~・~~~・~~~・~~~・~~~

 

一人娘の加奈子との会話が楽しい。寄稿先の編集者・石田からシティーホテルで絞殺された女についての調査とルポを依頼される。殺されたのは女子高生だという。そして柚木の担当が小高直海と言う新入社員に替わった。ちょっと小生意気なと思った新人は、思いのほか優秀で、柚木とのコンビは、仕事をスムーズに進めることが出来るか?

 

~~~・~~~・~~~・~~~・~~~

犯罪の動機という点では兎も角として、中ほどで犯人が推定できてしまう筋運びがちょっといただけないような気がするのと、柚木が気を引かれる相棒に余り魅力を感じないのは、僕の偏見か?それとも年をとったせい?
ちょっと前までには考えられないハードボイルドを続けて読むような読み方をしているが、藤原伊織氏の乱歩賞受賞作「テロリストのパラソル」から始まり、石田衣良氏のIWGPシリーズ、原氏の沢崎シリーズ等々に触発されて、ハードボイルドの魅力に目覚めたのか?
結局、登場人物や、文章に魅力があれば、ジャンルを問わず読む気を起こさせるという単純な問題か!

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村