さらば愛しき女よ FAREWELL, MY LOVELY | ||
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読了日 | 2009/04/04 |
著 者 | レイモン ド・チャンドラー Raymond Chandler |
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訳 者 | 清水俊二 | |
出版社 | 早川書房 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 364 | |
発行日 | 1976/04/30 | |
ISBN | 4-15-070452-X |
ステリーが好きだといっても、僕の中では昔からハードボイルドと呼ばれる小説にミステ リーという認識は持っていなかった。何か間違った解釈が僕の頭の中で交錯していたようだ。積極的にハー ドボイルドを読もうとは思っていないにも拘らず、今までに74冊も読んでいるのは、結構興味深いカテゴリ ーということだろう。
本書もそういったことから、古書店で見かけるままに買ってきたものだ。ハードボイルド・ミステリーの先 駆者とも言うべきチャンドラー氏の、映画化もされているあまりにも有名な作品だから、いまさらという感 じで今まで手が出なかったのだろう、などと自己分析をしても無意味なことだが・・・。

1940年に発表されたこの作品は、当時のアメリカの世相、風俗などを背景にして展開される。世界大戦を間 近に控えた年代にも拘らず、そうした緊迫感はなく、都会を舞台にしたストーリーながら、どちらかといえ ばアーリーアメリカンといった風情を思わせる雰囲気で進んでいく。
主人公の私立探偵、フィリップ・マーロウについては、これまでに幾度も映画やドラマになっており、多く のファンを取り込んでいる。僕はこの探偵を知ったのは割と遅くになってからで、1975年に本作をもとに制 作された映画「さらば愛しき女よ」だった。原作よりは大分年上で中年のフィリップ・マーロウを演じたロ バート・ミッチャム氏の醸し出す雰囲気は、原作を読んだ今でも彼のイメージが重なるほど、僕の中に深い 印象を残した。世評に名高いハンフリー・ボガード氏の主演作「三つ数えろ」(原作は「Big Sleep(大いなる 眠り)」)もその後に見てはいるが、僕の中ではフィリップ・マーロウといえばロバート・ミッチャム氏が 思い浮かぶ。

ンドラー氏の長編は本作を含めて7作にとどまっており、いずれもフィリップ・マーロウを 主人公とした名作として知られているが、それゆえに僕と同様映像では見ても原作は読んでいないという人 も多分いるのではないか?(そんなことはないか!)
本書では、大鹿とあだ名され、その名のとおりの巨漢マロイに、人探しを依頼されるところからストーリー が始まる。この発端でマーロウと大鹿(ムース)マロイの出会いの描写が映像を見ているかのような表現力 で表されていて、その後の展開を予感させる重要な場面だ。
銀行強盗の罪で収監されていたマロイは出所したばかりで、刑務所に入る8年前に「フロリアン」という酒 場で歌手として働いていたヴェルマという女を捜していたのだ。だが、8年という歳月は街も店もすっかり と様相を変化させており、「フロリアン」は黒人の店となっていた。マーロウを連れて店に入ったマロイは 店の経営者モンゴメリーとの話し合いの最中に、モンゴメリーが銃を出したために、殺してしまう。

ところで 、本書を読んでドラマや映画と少しニュアンスが異なっているところがちょっと気になった。映像化された ものを見ると、どれもがフィリップ・マーロウと警察官との軋轢のようなものが誇張されすぎているような 感じがするのだ。この中でも一部にそういった表現箇所はあるものの、彼が事務所を構えるロスの警察とは 、それほどの摩擦はなく、ある意味では協力的だと思えるところもあり、認識を少し改めた。
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