Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

桃花台線、命脈尽きる。

2006-01-12 22:07:00 | 鉄道(地方・専用線など)
経営難の桃花台線を「廃止」する方針が固まった。
それも今年秋に。

「桃花台線 今秋廃止 愛知県方針 バス代替にめど」(読売新聞中部版、1/12)

記事の要旨は次のとおり。
○桃花台線を運営する桃花台新交通への最大の出資者である愛知県が同線を今年秋に廃止する方針を固めた。
○県が廃止方針を固めたのは同線へのこれ以上の公金投入が困難なこと、代替バスのメドが立ったため。
○新交通システムの廃止としては全国初、開業から15年という異例の短期間で廃止されることになるが、これに対して国土交通省は桃花台線建設時の補助金89億円から減価償却費を除いた36~38億円の返還を愛知県に求める方針。
○愛知県は今月14・15日に開催される住民説明会で地元の理解を得た後、桃花台新交通の資金が枯渇する9月をメドに廃止すると見られる。なお、撤去に100億円を要するとされた高架橋については当面残す方針。

経営難の桃花台線を巡る昨今の報道、愛知県が行ったIMTSへの検討結果を見れば、この結末に至るのは当然の帰結だろう。
従って、今回の記事に対して驚きはない、というのが正直な感想だ。

昨年のIMTSへの転換検討結果を見ても、「毎年2.6億円の公金投入か現行250円の運賃を640円に値上げする」という現実離れした想定下でやっと存続可能という結論に至っている。
この数字から「存続」という結論を導き出す事自体が無意味だろうし、存続運動も起こらない路線の末路は見えていると捉えていた。

それにしても、桃花台線が新交通システムの廃止事例としては全国初という事になるが、僅か「15年」で姿を消す旅客路線というのも記憶にない。
記憶にある限りでは1961年開業、1962年に運行休止、2002年に正式に廃止された横浜ドリームランドの運行期間1年(!)、1966年開業、1974年運行休止、1979年に正式に廃止された姫路市営モノレールの運行期間8年に次ぐ短さではなかろうか。
横浜ドリームランドはトラブルで運行休止に至った特殊事例だから脇に置くとしても、輸送需要が低迷して廃止に至った姫路市営モノレールと今回の事例はよく似ている。

そして、横浜ドリームランドも姫路市営モノレールも長きに亘って「廃線跡」としての高架が残った事実から考えると、今回の桃花台線の高架も同じ轍を踏む可能性は高そうだ。
緊急度の高い場所から解体を始め、時間をかけて少しずつ、少しずつ姿を消していくことになるのだろう。

そういった感傷的な話とは別に、多額の費用をかけて建設した路線が僅か15年で「無用の長物」と化す。
このような事態に至らしめた原因は需要予測の杜撰さ、高蔵寺駅まで開通させず桃花台を終点とした路線計画の甘さは勿論のこと、何より度し難いのは計画が遅延した時に計画自体を見直す機会があったにも関わらず、小手先の修正で前に進めてしまった事にある。

その意味で読売新聞の記事中にもあるように、このような計画を漫然と進めてきた県と小牧市の責任は極めて重大と言わざるを得ない。
今回の教訓から何を学んだか今後問われると思うが、あおなみ線でも同じ轍を踏もうとしている所を見ると、何ともため息の出る話ではないか。

結局、「建設ありき」で後の事を考えなかったツケが今回のような結末を招いたということだろう。
そして、バブルが弾け、「失われた10年」を経ても同じ事を繰り返している。
これは愛知県のみならず、この国の至る所で言える事だが。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ちょっと無礼が過ぎる。 (RF-A)
2006-01-13 20:15:01
時折ブログ、拝見させてもらってます。

JIRO氏のコメントに思うところがあるので、お目汚しを。



>たびたび拝見させてもらいながら、異議のある時だけ登場するというのも大変恐縮



あなたがこのブログに何を期待しているのか知らないが、自分の思うような記事を書いてくれないからと言って長文コメントを堂々と書いて「大変恐縮」とは恐れ入る。

一体「何様」のつもりか。



>資金が底を尽きようと、もはや止めることはできない。つまり桃花台線とは同じ道を歩まない。資金は需要予測の見積もりで準備する訳だから、それが大幅に狂った以上、足りなくなるのは改めて驚くことでもないだろう



第三セクターと言えども営利企業。

公金投入に至る事態を招いた事を反省もせずさも当然に税金投入、と言っているがその無神経ぶりに恐れ入る。

普通の会社であれば責任問題に発展する所だが、「電車」が走っていれば満足という人にはその点がまるで見えていないらしい。



>通常の営利会社と同じように収入-支出だけでその会社を見、その公共性や社会的便益には中々着眼せず、かつ鉄道事業には全く無知な記者が書いている新聞報道を、そのまま焼き直し評論家になるのは、バラエティ番組のタレントのコメンテーターと同じレベルである。

 なぜなら、収入-支出で最も多く赤字を出しているのは、株式会社という形態をとっておらず、かつ、新聞報道もされていない、地下鉄事業だからである。そこに新聞はじめマスコミは気づいてなく、第三セクターばかり取上げて鬼の首を取ったような顔しているのは全く不思議だ。



コピペも疲れる。

日本のブログに「ジャーナリズム」を期待するのが間違いだろう。結局は俄かコメンテーターが好きな事を書いているだけだから。

現に管理人氏は「気の向くまま綴る」と言っている。

だからこのスタンスは間違ってないと思う。



管理人氏の姿勢が「間違っている」と思うならあなたがココを立ち去り、見なければ良い。

コメントはあなただけが見るのではない。

その事をわきまえてもらわなければ困る。



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切断失礼 (JIRO)
2006-01-13 15:54:58
というのも大変恐縮だが、昨秋以来で投稿させてもらいます。

 あおなみ線は、計画より大幅下回っているものの、すでに一日20,000人弱が利用している。資金が底を尽きようと、もはや止めることはできない。つまり桃花台線とは同じ道を歩まない。資金は需要予測の見積もりで準備する訳だから、それが大幅に狂った以上、足りなくなるのは改めて驚くことでもないだろう。

 ただ、名古屋高速臨海鉄道が自ら運行することを廃止し、施設の保有だけに特化する、つまり上下分離はあり得るだろう。㈱大阪港トランスポートシステムの大阪港~コスモスクエア間のように。



 愛知高速鉄道東部丘陵線が、批判の対象として登場してこないようだが、まさか、愛知の第3セクター鉄道、あおなみ線・桃花台線が劣等生、愛環・LINIMOが優等生などという単純な構図を描いていないことを望む。

 この4線、旧国鉄の超閑散ローカル線のように、政治力をもって鉄道がいらないところに無理やり敷いたものとは思えない。ただ、その後の周辺環境が大きく違った。片や、旧国鉄の路線敷・学生などの人口増加・好調トヨタの就業者増、片やバブル崩壊での開発遅延・人口の都心回帰。

 その鉄道会社の経営者の経営力と知恵で、結果が大きく変わったとは思えない(小さくは変わった)。愛環が、それほど斬新かつ知恵に長けた集客や、経営をしているとは思えない。そもそも、大株主は、愛環も桃花台線も愛知県。ただ、桃花台線の集客策のセンスのなさには目を見張った。



 上飯田線が開通して取る策は、運賃値下げでなく、当然名鉄との接続改善だった。15分おきと20分おき、で接続効果が半減した。20分おきが改正されていなかった時の驚きが今でも忘れられない。運賃値下げは乗継ぎ割引で対応すべきで、さもないと元々乗継がない乗客からも減収となってしまう。

 沿線商業施設利用による割引サービス(試行策)も渋ちんで、3000円以上の買物、かつ、事前に駅への申出という面倒くささの割に、100円割引という悲しいものだった。

 

 ただ最も問題なのは、指摘されているように路線廃止反対運動がなかったことだ。愛知県もこれには驚いたろう。一日3500人利用というと、廃止という結論もってくるには、紆余曲折があってもいいはずだが、この3500人は何を考えているのだろう。

 別のブログで、桃花台線を廃止すれば税金の無駄遣いが無くなり、桃花台に廃線跡の土地と資金がやってくると勘違いしている方がおられるが、淡い期待だと思う。

 路線廃止で浮く資金があるはずもなく、あったとしても建設費の償還つまり借金の返済に充てられ、それが終われば県の公債償還つまり借金の返済に充てられるだけだ。

 仮に桃花台線に代わる何らかの投資があったとしても、廃止反対の住民運動をおこすぐらいの「人間力」がないと、何を作っても町の活性化はできない。インフラの老朽化と住民の老齢化、街とを繋いでいた鉄道の消失と、「桃花台」の名前さえ忘れられるだろう。

 

 通常の営利会社と同じように収入-支出だけでその会社を見、その公共性や社会的便益には中々着眼せず、かつ鉄道事業には全く無知な記者が書いている新聞報道を、そのまま焼き直し評論家になるのは、バラエティ番組のタレントのコメンテーターと同じレベルである。

 なぜなら、収入-支出で最も多く赤字を出しているのは、株式会社という形態をとっておらず、かつ、新聞報道もされていない、地下鉄事業だからである。そこに新聞はじめマスコミは気づいてなく、第三セクターばかり取上げて鬼の首を取ったような顔しているのは全く不思議だ。
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Unknown (JIRO)
2006-01-13 13:44:47
たびたび拝見させてもらいながら、異議のある時だけ登場する
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トラックバック (kyu3)
2006-01-13 03:15:35
こんにちは。こちらの記事に、トラックバックさせてもらいました。
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