前回に引き続いて、平成16年第1回定例会の議論を見てみる。
名鉄が廃止手続を開始したことで、今後の対応について議会から質問が立て続けに出され、防戦一方の岐阜市。
さて、後半はどうなるのだろうか。
なお、本文中<質問>は議員質問内容、<答弁>は市当局、<市長答弁>は市長の発言内容をそれぞれ示す。
参考:「岐阜市議会議事録」
<質問6>
対策協議会の資料によれば、名古屋鉄道の試算では毎年10億円前後の赤字が出て、平成17年度以降、10年間の累積赤字はおよそ111億円に達すると試算されている。これに対し、上下分離による公設民営方式の場合の運行会社の営業損益は10年間でおよそ22億円、さらに、第三セクター方式による運行ではおよそ53億円に達すると試算をされている。
この資料を見る限りにおいて、上下分離による公設民営方式は赤字額を最小限にとどめるという点では可能性のある運営方法であるように思われる。しかし、これらの収支予測の前提は、平成2年度から11年度までの平均減少率3.8%を今後の需要予測として計算されており、鉄道沿線の社会経済条件は変化しないとの前提で計算をされている。このような試算の前提条件について市長はどのように考えているのか、見解を聞きたい。
路面電車に対する国の補助事業等について、今後、地方財政が逼迫する中で路面電車を維持整備していくのは容易なことではないと思われるが、国ではどのようなバックアップがあるのか調べている内容を聞かせていただきたい。
乗客の増加策について、これまで長年にわたり名古屋鉄道がこれら3線の運行に当たってきたが、平成11年度には美濃町線の新関-美濃間、平成13年度には揖斐線の黒野-本揖斐間、谷汲線全線が廃止された。廃止の背景にあるのは言うまでもなくモータリーゼーションである。今般の3線廃止も同様に今後も進展するモータリゼーションと少子・高齢化の進展の中で乗客増が見込めず、鉄道としての使命を終えたと考えた点にある。このように理解すれば、今後、存続させるに当たって、これまでの減少トレンドで鉄道の存続を考えるのではなく、乗客をふやし収支改善を図る視点が必要であるが、この点について市長はどのように考えているのか、何を存続の前提として存続をさせようとしているのか、考えを聞きたい。
次に路面電車の固定資産の評価に対する考え方について尋ねたい。鉄軌道用地の評価は、当該用地に沿接する土地の価格の3分の1に相当する額によってその評価額を求めることになっているが、線路敷の用に供しなくなった場合の評価はどのようになるのか。
路面電車とまちづくりの関係について、欧米の地方都市では路面電車が公共交通の主役となり、中心市街地の活性化に成功している例が幾つもある。例えば、人口45万人のフランス・ストラスブール市や人口20万人のドイツのフライブルグ市などでは、まちの中心部と郊外を結ぶLRTがまちづくりの中心となって成功している。アメリカでも最近、路面電車やトロリーバスなど、無公害の公共交通を整備する都市が増加しつつある。そこでは高齢者等交通弱者に優しい低騒音の超低床電車、すなわちLRTが導入され環境に優しい都市づくりが実現している。最近、中国でも路面電車の整備が進みつつあると聞いている。
そこで、市長は岐阜市の路面電車を存続させ、どのようなまちづくりを目指そうと考えておられるのか、中・長期にわたる岐阜市のあり方をどのように考えておられるのか、聞かせていただきたい。
乗客の増加対策について、現状では予測にあるように年率3.8%で減少するとするならば、仮に自治体負担によって一時的には存続できても、将来的にはやはり存続が難しくなる可能性が高いと言わざるを得ない。「乗って残そう運動」によっても乗客が増加しなかったのも、現状では利用しにくい現状にあるからにほかならないと考える。従って、今後、路面電車を存続させるには、乗客を増加させる政策的取り組みが必要になると考えるが、市長はどのように考えているのか。
最後に全国の黒字鉄道の経営を岐阜市に生かしてはどうかと思う。
路面電車で黒字経営は、岡山電気軌道、広島電鉄、長崎電気軌道、鹿児島市の4路線と聞いている。黒字経営の要因を分析し、岐阜市に応用することが必要だと考えますが、いかがだろうか。
<市長答弁6>
対策協議会の試算については、揖斐線、美濃町線、市内線等、沿線市町対策協議会が存続した場合として過去10年間の長期的な傾向に基づいて試算している。今後、存続することになった場合には、パーク・アンド・ライドあるいはサイクル・アンド・ライドなどの利用促進施策などによる利用者数の見直し、あるいは人件費など、経費のさらなる削減等について、行政、運行事業者、それぞれが検討し、収支の改善に努める必要があると考えている。
国の補助制度については、路面電車に関する国の補助制度は国土交通省の補助事業として、路面電車の新設、延伸に係る走行路面、停車場などの改築費の2分の1の補助がされる路面電車の走行空間改善事業。次に、路面電車の停留所、架線柱などの整備費の3分の1が補助をされる都市再生交通拠点整備事業がある。さらに、低床車両の導入、運行情報提供システムの導入などにかかる費用に対して補助される公共交通移動円滑化補助がある。4番目に、低床車両あるいは自動列車停止装置の導入などの施設の近代化に要する費用に対して補助をされます鉄道軌道近代化設備補助事業がある。
さらに、国土交通省では補助制度の整備充実に向け現在検討が進められていると聞いている。
乗客の増加策については、路面電車が存続する場合には何よりも経営の安定化が必要である。このため路面電車の走行環境の改善あるいは安全性の向上を図るため、軌道敷内通行不可あるいは電停の安全島設置とともに、主要な駅、電停でのパーク・アンド・ライドやサイクル・アンド・ライドの推進、コミュニティーバスなどとの結節による路面電車の受益範囲の拡大をするといった利用促進を積極的に図る必要があると考えている。
路面電車の固定資産の評価については、路面電車の道路と併用された軌道敷用地は非課税となっている。また、軌道敷以外の専用軌道敷の固定資産税評価額につきましては、隣接する土地の3分の1に相当する額としている。今後、廃線となった場合は実態に合わせ課税地目の変更等を行い、適正に評価をしていく。
路面電車とまちづくりの関係についてで、路面電車は身近な交通手段として、路面から直接乗りおりができること、あるいは視認性にすぐれておること、自動車やバスに比べても二酸化炭素の排出量が少ないなどの利点から、現在見直され、京都市を初め、国内の都市では路面電車の見直しや復活の動きが始まっている。また、車両の低床化や軽量化、騒音、振動の低減、さらには、乗り継ぎ拠点を総合的にグレードアップした、いわゆる次世代型路面電車LRTに発展させることも可能であると考えている。
さらに、多くの高齢者などの交通弱者の移動手段を確保するため、ワンコインバスなどで路面電車の主要な駅、電停を結ぶなど、路面電車を軸とした総合的な交通システムとして構築することも可能であると考えている。
まちづくりとの関係については、中心市街地、とりわけ都市部の活性化を図っていく上で、交通手段として、また、本市が目指している、いわゆるコンパクトシティーにおける主要な移動手段としての活用も考えられる。
いずれにしても、存続することとなれば、本市のまちづくりに積極的に生かしていく必要があると考えている。
また、LRTの将来性については、路面電車が進化した形態をLRT化の一つと考えており、オムニバスタウン計画やバス路線再編計画などの既存計画との整合性などの問題もあり、新たな路線計画や採算性を含め、今後の検討課題として考えていく必要がある。
乗客の政策的増加対策については、路面電車は仮に存続するとしても、このまま利用者の減少傾向が続けば、やはり路面電車の経営はますます厳しい状況になっていく。従って、日常生活における路面電車の位置づけなど、市民の意識改革を求めるとともに、企業や学校などの通勤・通学者の利用促進を呼びかけるなど、ソフト施策をあわせて実施をしていくとともに、先ほど申し上げたような軌道敷内通行不可などの交通施策を実施し、利用者の拡大に努めていくことが必要であると考えている。
最後に、黒字鉄道の経営を生かしてはどうかということについては、指摘のあった広島電鉄株式会社などの路面電車事業者は黒字経営であると聞いている。対策協議会の試算については、経営努力を実施している事業者を参考にして試算されたものであるが、仮に存続することとなれば、どんな形で経営するとしても、これらの黒字経営事業者の事例も参考にして運行事業者の経営努力により収支の改善が図られていくものと考えている。
<質問7>
路面電車の専用軌道敷の固定資産評価額について、適正に評価するということだが、これいつ実行されるのか。例えば、廃線となった場合にどれぐらいの時期で実行されるのか、その時期について聞かせていただきたい。
道路も狭隘であるということも聞いているし、それから、安全島も少ないと色々問題あると思うが、市がやる気になれば県も協力すると漏れ聞いている。
このことについて、市長は知事に相談されたことがあるのかどうか、聞かせていただきたい。
上下分離方式しか選択肢がない。もし仮に存続するとすれば、公設民営、上下分離方式しかないと思うけれども、これ最初、初日に白紙で臨むのか、ある程度方針を固めてスタートするかということの質問に対する答弁漏れがあったと思う。行政の長としての判断と政治家としての政治判断をしなければならないときがあると思うので、もう一度、白紙で臨むのか、ある程度考えを煮詰めてスタートされるのか、聞かせていただきたいと思う。
最後に路面電車の動産については名鉄は(譲渡の)協議に応じると言っている。この41億円。そして、不動産については41億円、簿価でということだが、今年4月から減損会計が発生するので、簿価と実際価格の差を損金として処理しなければいけない。だから41億円で簿価で買ってくれと言っているが、これも果たして市民が聞いて仮に41億で買うとした場合、こんな金額を果たして市民が市民感情として許すかどうか。当然簿価で買えるはずもないし、やっぱり今まで名鉄もこの当地で色々と運行してきている。メセナという言葉がある、社会貢献。これはメセナっていうのは文化的、芸術的な貢献だが、社会的にこういったことに対して少しでも安くして今までの恩返しをしようというのもメセナの一環であると思う。で、この41億円の簿価について(岐阜市は)恐らくまだ交渉されてないと思う。
それはなぜ交渉してないかというと、基本方針が定まってないから交渉もできてないので、やっぱりある程度は煮詰めてから、この部分も簿価でいくのか、ただからスタートしてですねえ、話し合いをしていくのか。これも本当に大事なことなんで、早くやっぱり決めていただく、基本方針を言うことは大事なことだと思うので、この簿価についての見解もやっぱり安くしてもらうなら安くしてもらわなければいけないと。市民感情として許されないから、(簿価について)もっと交渉していくと。そういったその辺の覚悟を聞かせていただきたい。
<市長答弁7>
ちょっと順序が後先になるかもしれないが、この路面電車の存続に向けて知事と話をしたことがあるのかという質問について、本件で知事と話したことはない。
それから、路面電車が廃止になった場合の固定資産税評価額の評価ですね、これをどのタイミングで行うかということについては、平成17年、来年の3月に廃線となると、平成18年1月1日時点の課税地目に対して新たに評価して、平成18年度から課税をしていくということになっている。
それから、首長間の話し合いに臨む際の姿勢について、路面電車を現状のまま残すことは大変厳しい状況であることは繰り返し申し上げており、今後のまちづくり等の関係も十分考慮する必要もあり、また、市民の意見も踏まえて、市としての明確な決意を持つ必要があると思う。
先ほどから申し上げているように、6月までには沿線市町としての結論を出す必要があるので、それに先立つ首長間の間の協議には確固とした信念を持って臨みたいと考えている。
簿価に関する交渉については、(路面電車を)残すということでもし衆議一決したら、交渉することになる。
<第1回定例会のまとめ>
様々な視点から質問する市議会に対し、岐阜市の答弁は「6月までに結論を出す」として結論を明らかにしなかった。
その意味で今回の市側の答弁は「結論先送り」という一点で一貫していた。もっと言えば、環境面、まち作りでの路面電車の優位性は認めつつも、経営継承時の費用負担の大きさから存廃の決断を躊躇っている様子が窺える。
それにしても、市長が岐阜県知事と話をしていないというのには驚いた。複数の自治体を跨いで走る鉄道の存廃について、本来は自治体間の調整を司る県が乗り出していてもいいと思っていた。
しかし、実際にはそういった様子は見えなかった。逆に言えば、路面電車の存廃は岐阜市の意向に左右されていたということになる。そうであれば大所高所に立った判断をすべきだったのではと思うが、最終的に問題の多かった社会実験の結果と採算性に判断が左右されたことは悔やまれる。
市の方ばかり指摘しても難なので、議会側の方に目を向けると、様々な視点から質問がなされていた。存続時の採算性の問題を指摘する声はあっても、「廃止を容認する」雰囲気は見えなかった。
ただ、気になったのは「今まで名鉄もこの当地で色々と運行してきている。(中略)メセナっていうのは文化的、芸術的な貢献だが、社会的にこういったことに対して少しでも安くして今までの恩返しをしようというのもメセナの一環であると思う」という発言があったが、いくら何でも厚顔にも程があると思ってしまった。
名鉄にしてみれば、市議会に廃止決議は出され、安全島の設置不可、軌道内への自動車乗入が容認されるなど、運行面で岐阜市の協力は得られないまま自らの力だけではどうしようもない原因で長年にわたって苦境に立たされた結果、廃止という決断に至った経緯がある。その経緯を踏まえた上での発言であれば、過去の自分たちの行いに対してあまりに無反省と言わざるを得ない。
逆に「安定的な存続」を望む市民感情の表れとして、この発言を捉えれば理解できなくもないのだが、本当に路面電車を支持する人がどれだけいたかを考えると、暗澹とした気持ちになった。
関連記事:「岐阜市は「路面電車」をどう議論してきたか?(その9・前編)」
名鉄が廃止手続を開始したことで、今後の対応について議会から質問が立て続けに出され、防戦一方の岐阜市。
さて、後半はどうなるのだろうか。
なお、本文中<質問>は議員質問内容、<答弁>は市当局、<市長答弁>は市長の発言内容をそれぞれ示す。
参考:「岐阜市議会議事録」
<質問6>
対策協議会の資料によれば、名古屋鉄道の試算では毎年10億円前後の赤字が出て、平成17年度以降、10年間の累積赤字はおよそ111億円に達すると試算されている。これに対し、上下分離による公設民営方式の場合の運行会社の営業損益は10年間でおよそ22億円、さらに、第三セクター方式による運行ではおよそ53億円に達すると試算をされている。
この資料を見る限りにおいて、上下分離による公設民営方式は赤字額を最小限にとどめるという点では可能性のある運営方法であるように思われる。しかし、これらの収支予測の前提は、平成2年度から11年度までの平均減少率3.8%を今後の需要予測として計算されており、鉄道沿線の社会経済条件は変化しないとの前提で計算をされている。このような試算の前提条件について市長はどのように考えているのか、見解を聞きたい。
路面電車に対する国の補助事業等について、今後、地方財政が逼迫する中で路面電車を維持整備していくのは容易なことではないと思われるが、国ではどのようなバックアップがあるのか調べている内容を聞かせていただきたい。
乗客の増加策について、これまで長年にわたり名古屋鉄道がこれら3線の運行に当たってきたが、平成11年度には美濃町線の新関-美濃間、平成13年度には揖斐線の黒野-本揖斐間、谷汲線全線が廃止された。廃止の背景にあるのは言うまでもなくモータリーゼーションである。今般の3線廃止も同様に今後も進展するモータリゼーションと少子・高齢化の進展の中で乗客増が見込めず、鉄道としての使命を終えたと考えた点にある。このように理解すれば、今後、存続させるに当たって、これまでの減少トレンドで鉄道の存続を考えるのではなく、乗客をふやし収支改善を図る視点が必要であるが、この点について市長はどのように考えているのか、何を存続の前提として存続をさせようとしているのか、考えを聞きたい。
次に路面電車の固定資産の評価に対する考え方について尋ねたい。鉄軌道用地の評価は、当該用地に沿接する土地の価格の3分の1に相当する額によってその評価額を求めることになっているが、線路敷の用に供しなくなった場合の評価はどのようになるのか。
路面電車とまちづくりの関係について、欧米の地方都市では路面電車が公共交通の主役となり、中心市街地の活性化に成功している例が幾つもある。例えば、人口45万人のフランス・ストラスブール市や人口20万人のドイツのフライブルグ市などでは、まちの中心部と郊外を結ぶLRTがまちづくりの中心となって成功している。アメリカでも最近、路面電車やトロリーバスなど、無公害の公共交通を整備する都市が増加しつつある。そこでは高齢者等交通弱者に優しい低騒音の超低床電車、すなわちLRTが導入され環境に優しい都市づくりが実現している。最近、中国でも路面電車の整備が進みつつあると聞いている。
そこで、市長は岐阜市の路面電車を存続させ、どのようなまちづくりを目指そうと考えておられるのか、中・長期にわたる岐阜市のあり方をどのように考えておられるのか、聞かせていただきたい。
乗客の増加対策について、現状では予測にあるように年率3.8%で減少するとするならば、仮に自治体負担によって一時的には存続できても、将来的にはやはり存続が難しくなる可能性が高いと言わざるを得ない。「乗って残そう運動」によっても乗客が増加しなかったのも、現状では利用しにくい現状にあるからにほかならないと考える。従って、今後、路面電車を存続させるには、乗客を増加させる政策的取り組みが必要になると考えるが、市長はどのように考えているのか。
最後に全国の黒字鉄道の経営を岐阜市に生かしてはどうかと思う。
路面電車で黒字経営は、岡山電気軌道、広島電鉄、長崎電気軌道、鹿児島市の4路線と聞いている。黒字経営の要因を分析し、岐阜市に応用することが必要だと考えますが、いかがだろうか。
<市長答弁6>
対策協議会の試算については、揖斐線、美濃町線、市内線等、沿線市町対策協議会が存続した場合として過去10年間の長期的な傾向に基づいて試算している。今後、存続することになった場合には、パーク・アンド・ライドあるいはサイクル・アンド・ライドなどの利用促進施策などによる利用者数の見直し、あるいは人件費など、経費のさらなる削減等について、行政、運行事業者、それぞれが検討し、収支の改善に努める必要があると考えている。
国の補助制度については、路面電車に関する国の補助制度は国土交通省の補助事業として、路面電車の新設、延伸に係る走行路面、停車場などの改築費の2分の1の補助がされる路面電車の走行空間改善事業。次に、路面電車の停留所、架線柱などの整備費の3分の1が補助をされる都市再生交通拠点整備事業がある。さらに、低床車両の導入、運行情報提供システムの導入などにかかる費用に対して補助される公共交通移動円滑化補助がある。4番目に、低床車両あるいは自動列車停止装置の導入などの施設の近代化に要する費用に対して補助をされます鉄道軌道近代化設備補助事業がある。
さらに、国土交通省では補助制度の整備充実に向け現在検討が進められていると聞いている。
乗客の増加策については、路面電車が存続する場合には何よりも経営の安定化が必要である。このため路面電車の走行環境の改善あるいは安全性の向上を図るため、軌道敷内通行不可あるいは電停の安全島設置とともに、主要な駅、電停でのパーク・アンド・ライドやサイクル・アンド・ライドの推進、コミュニティーバスなどとの結節による路面電車の受益範囲の拡大をするといった利用促進を積極的に図る必要があると考えている。
路面電車の固定資産の評価については、路面電車の道路と併用された軌道敷用地は非課税となっている。また、軌道敷以外の専用軌道敷の固定資産税評価額につきましては、隣接する土地の3分の1に相当する額としている。今後、廃線となった場合は実態に合わせ課税地目の変更等を行い、適正に評価をしていく。
路面電車とまちづくりの関係についてで、路面電車は身近な交通手段として、路面から直接乗りおりができること、あるいは視認性にすぐれておること、自動車やバスに比べても二酸化炭素の排出量が少ないなどの利点から、現在見直され、京都市を初め、国内の都市では路面電車の見直しや復活の動きが始まっている。また、車両の低床化や軽量化、騒音、振動の低減、さらには、乗り継ぎ拠点を総合的にグレードアップした、いわゆる次世代型路面電車LRTに発展させることも可能であると考えている。
さらに、多くの高齢者などの交通弱者の移動手段を確保するため、ワンコインバスなどで路面電車の主要な駅、電停を結ぶなど、路面電車を軸とした総合的な交通システムとして構築することも可能であると考えている。
まちづくりとの関係については、中心市街地、とりわけ都市部の活性化を図っていく上で、交通手段として、また、本市が目指している、いわゆるコンパクトシティーにおける主要な移動手段としての活用も考えられる。
いずれにしても、存続することとなれば、本市のまちづくりに積極的に生かしていく必要があると考えている。
また、LRTの将来性については、路面電車が進化した形態をLRT化の一つと考えており、オムニバスタウン計画やバス路線再編計画などの既存計画との整合性などの問題もあり、新たな路線計画や採算性を含め、今後の検討課題として考えていく必要がある。
乗客の政策的増加対策については、路面電車は仮に存続するとしても、このまま利用者の減少傾向が続けば、やはり路面電車の経営はますます厳しい状況になっていく。従って、日常生活における路面電車の位置づけなど、市民の意識改革を求めるとともに、企業や学校などの通勤・通学者の利用促進を呼びかけるなど、ソフト施策をあわせて実施をしていくとともに、先ほど申し上げたような軌道敷内通行不可などの交通施策を実施し、利用者の拡大に努めていくことが必要であると考えている。
最後に、黒字鉄道の経営を生かしてはどうかということについては、指摘のあった広島電鉄株式会社などの路面電車事業者は黒字経営であると聞いている。対策協議会の試算については、経営努力を実施している事業者を参考にして試算されたものであるが、仮に存続することとなれば、どんな形で経営するとしても、これらの黒字経営事業者の事例も参考にして運行事業者の経営努力により収支の改善が図られていくものと考えている。
<質問7>
路面電車の専用軌道敷の固定資産評価額について、適正に評価するということだが、これいつ実行されるのか。例えば、廃線となった場合にどれぐらいの時期で実行されるのか、その時期について聞かせていただきたい。
道路も狭隘であるということも聞いているし、それから、安全島も少ないと色々問題あると思うが、市がやる気になれば県も協力すると漏れ聞いている。
このことについて、市長は知事に相談されたことがあるのかどうか、聞かせていただきたい。
上下分離方式しか選択肢がない。もし仮に存続するとすれば、公設民営、上下分離方式しかないと思うけれども、これ最初、初日に白紙で臨むのか、ある程度方針を固めてスタートするかということの質問に対する答弁漏れがあったと思う。行政の長としての判断と政治家としての政治判断をしなければならないときがあると思うので、もう一度、白紙で臨むのか、ある程度考えを煮詰めてスタートされるのか、聞かせていただきたいと思う。
最後に路面電車の動産については名鉄は(譲渡の)協議に応じると言っている。この41億円。そして、不動産については41億円、簿価でということだが、今年4月から減損会計が発生するので、簿価と実際価格の差を損金として処理しなければいけない。だから41億円で簿価で買ってくれと言っているが、これも果たして市民が聞いて仮に41億で買うとした場合、こんな金額を果たして市民が市民感情として許すかどうか。当然簿価で買えるはずもないし、やっぱり今まで名鉄もこの当地で色々と運行してきている。メセナという言葉がある、社会貢献。これはメセナっていうのは文化的、芸術的な貢献だが、社会的にこういったことに対して少しでも安くして今までの恩返しをしようというのもメセナの一環であると思う。で、この41億円の簿価について(岐阜市は)恐らくまだ交渉されてないと思う。
それはなぜ交渉してないかというと、基本方針が定まってないから交渉もできてないので、やっぱりある程度は煮詰めてから、この部分も簿価でいくのか、ただからスタートしてですねえ、話し合いをしていくのか。これも本当に大事なことなんで、早くやっぱり決めていただく、基本方針を言うことは大事なことだと思うので、この簿価についての見解もやっぱり安くしてもらうなら安くしてもらわなければいけないと。市民感情として許されないから、(簿価について)もっと交渉していくと。そういったその辺の覚悟を聞かせていただきたい。
<市長答弁7>
ちょっと順序が後先になるかもしれないが、この路面電車の存続に向けて知事と話をしたことがあるのかという質問について、本件で知事と話したことはない。
それから、路面電車が廃止になった場合の固定資産税評価額の評価ですね、これをどのタイミングで行うかということについては、平成17年、来年の3月に廃線となると、平成18年1月1日時点の課税地目に対して新たに評価して、平成18年度から課税をしていくということになっている。
それから、首長間の話し合いに臨む際の姿勢について、路面電車を現状のまま残すことは大変厳しい状況であることは繰り返し申し上げており、今後のまちづくり等の関係も十分考慮する必要もあり、また、市民の意見も踏まえて、市としての明確な決意を持つ必要があると思う。
先ほどから申し上げているように、6月までには沿線市町としての結論を出す必要があるので、それに先立つ首長間の間の協議には確固とした信念を持って臨みたいと考えている。
簿価に関する交渉については、(路面電車を)残すということでもし衆議一決したら、交渉することになる。
<第1回定例会のまとめ>
様々な視点から質問する市議会に対し、岐阜市の答弁は「6月までに結論を出す」として結論を明らかにしなかった。
その意味で今回の市側の答弁は「結論先送り」という一点で一貫していた。もっと言えば、環境面、まち作りでの路面電車の優位性は認めつつも、経営継承時の費用負担の大きさから存廃の決断を躊躇っている様子が窺える。
それにしても、市長が岐阜県知事と話をしていないというのには驚いた。複数の自治体を跨いで走る鉄道の存廃について、本来は自治体間の調整を司る県が乗り出していてもいいと思っていた。
しかし、実際にはそういった様子は見えなかった。逆に言えば、路面電車の存廃は岐阜市の意向に左右されていたということになる。そうであれば大所高所に立った判断をすべきだったのではと思うが、最終的に問題の多かった社会実験の結果と採算性に判断が左右されたことは悔やまれる。
市の方ばかり指摘しても難なので、議会側の方に目を向けると、様々な視点から質問がなされていた。存続時の採算性の問題を指摘する声はあっても、「廃止を容認する」雰囲気は見えなかった。
ただ、気になったのは「今まで名鉄もこの当地で色々と運行してきている。(中略)メセナっていうのは文化的、芸術的な貢献だが、社会的にこういったことに対して少しでも安くして今までの恩返しをしようというのもメセナの一環であると思う」という発言があったが、いくら何でも厚顔にも程があると思ってしまった。
名鉄にしてみれば、市議会に廃止決議は出され、安全島の設置不可、軌道内への自動車乗入が容認されるなど、運行面で岐阜市の協力は得られないまま自らの力だけではどうしようもない原因で長年にわたって苦境に立たされた結果、廃止という決断に至った経緯がある。その経緯を踏まえた上での発言であれば、過去の自分たちの行いに対してあまりに無反省と言わざるを得ない。
逆に「安定的な存続」を望む市民感情の表れとして、この発言を捉えれば理解できなくもないのだが、本当に路面電車を支持する人がどれだけいたかを考えると、暗澹とした気持ちになった。
関連記事:「岐阜市は「路面電車」をどう議論してきたか?(その9・前編)」