Simplex's Memo

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茨城交通湊線の公的負担額は・・・?

2007-12-08 07:02:18 | 鉄道(地方・専用線など)
既に第三セクター方式による存続が決まっている、茨城交通湊線。
国土交通省へ再生計画を提出した後となっては、再生計画に基づく公費負担額がいくらになるかという点に個人的な関心があった。
その答えが12月7日のasahi.comに掲載されていた。

「湊線に税12億円/来年度から10年間」(asahi.com、12/7)

記事の要旨を整理してみる。
○茨城交通湊線に国、茨城県、ひたちなか市が拠出する金額は10年間で12億円。
負担内訳は国が2.7億円、茨城県が3.6億円、ひたちなか市が第三セクター鉄道への出資金を含めて6.2億円。
○新会社は茨城交通から分社化して出来るが、市は、茨城交通が持つ新会社の株式の半数を0.9億円で取得し、茨城交通と50%ずつ持ち合う。市の出資分は県の補助金約0.3億円と県からの借入金でまかなう。
 市の出資金0.9億円は、光ケーブル事業の今後10年の予測収益1.8億円を鉄道資産の価値と算定。その半額を市が茨城交通に支払い、残りの半額は、茨城交通が鉄道資産の現物で出資する形態をとる。
 茨城交通は株売却で得た0.9億円を鉄道資産に設定された根抵当権の解消に充て、借金を整理する。新会社に手持ち資金はないため、市は新会社の当面の運転資金として0.4億円を無利子で貸し付け、2008年度中に返済を受ける予定。
○新会社の設備投資としては、国・県・市三者からの10年間の経営支援総額の80%にあたる9.3億円を設備投資費補助として受ける。2008年度は中古車両3両を購入。2009年度以降は行き違い設備の新設や、踏切、軌道を改修する。

今回の記事で茨城交通湊線の第三セクター化に向けた枠組み、タイムスケジュール等がよく理解できた。
「10年間で12億円」という公金投入額だが、一年単位で見れば1.2億円。
市街地に新規に道路を作ったり拡幅に要する単年度当たりの費用を考えると、安いという見方ができる。
反面、税金投入額に見合う利用者増が見込めなければ全く逆の意味を持つため、その辺りは4月以降に発足する第三セクターの利用状況を見守るしかないだろう。
また、第三セクター化に際しては光ファイバーケーブルが一つの鍵になったことが窺える。
これを第三セクター鉄道の収入源と位置づけることに成功したことが、今回の結果に結びついたように思う。

設備投資面に目を向けると、やはり気になるのは「中古車両3両」の出所。
既に三木鉄道のミキ300形には複数の鉄道事業者が購入に名乗りを挙げている所に持ってきて、一両は三木市で保存する意向を当の三木市が示している。
入札方式での購入先決定ということになるのだが、仮に茨城交通が競争に競り勝ったとしても三両全てが移籍という訳にはいかないのが悩みどころ。
ひょっとしたら、何処か当てがあるのだろうか。
2008年度の新会社の動向で一番目が離せないのはこの点かもしれない。

新会社の収支面を見ると、10年間で2.4億円となる見通しという。
この面でも、ひたちなか市は優遇策を設けており、固定資産税や都市計画税の事実上の免除措置が取られる。それでもなお埋まらない赤字についても修繕費として県と市が10年間で0.4億円を支援するというから驚きだ。
逆に言えば、ここまでしなければ茨城交通の同意を得ることは難しかったということも言えるが、最近の鉄道事業の再生で公的セクターがここまで手厚い「保護」を行う事例は記憶にない。

そして、トップには一般公募の社長を据えて民間感覚を前面に押し出して再生に挑む。
舞台装置としては一通りの物は出揃った。
あとは社長以下の経営施策が注目点になってくるのだろう。

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