森岡 周のブログ

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矛盾を解くプロセス

2013年06月04日 19時14分51秒 | 脳講座
帰国早々、様々な(といっても3つですが)問題に対処しています。この場合、謙虚に対応する訳でるが、すべての問題は「間主観性」によって発生しているような気がします。

どちらかが「した(つもり)」であっても、もう一方がそう捉えていない場合は大いにあります。これは人間関係のすれ違いなのですが、人間の脳は予測器官であるからこそ産まれる問題です。一方が、従来であれば「この程度で大丈夫だろう」と予測し、それに基づき行動したとしても、もう一方が、例えば担当者が変わることなどで、もっと上を予測し(期待し)ている(あるいはその逆)ことで、結果として、それに事実(結果)の整合がとれていなければ、それは矛盾になります。要するに予測と結果の食い違いが生じると、その矛盾に対して心の痛みに関与する脳領域のACCが働かざるをえず、負の感情のまま行動を起こすと攻撃的になったり、懐疑的になったりします。一方、時間が経過したり、ぞれが対話によって解決したりするプロセスを通じて、PFCからの抑制機構が働くと、人間の行動は攻撃性を解除していきます。

矛盾をとくプロセスは、どちらか一方が階段を下りるのではなく「両者とも主張を下げる(協調する)」ことが大切です。

いずれにしても、基本的に脳は恣意的であり、それは主観的体験・行動によって成り立つ非メタ行動でもありますが、一度立ち止まることで、TPJを働かせ、向こうからはどのようにこっちが見えているだろうと、メタをきかせることで、ぬいた刀を鞘におさめることができます。

メタ認知ときくと、むしろ論理的で白黒つけるような堅いイメージがありますが、そうではなく、それは人間関係性を曖昧にすることも可能な機能でもあります。ボーダーをつくることが問題な場合は大いにあります。領土権を主張し合う国と国との境界もそうだし、臨床と基礎・研究(現場の療法士と研究者)、様々な手技の間、そして教育と現場(教員と現場の療法士)、男女の間、機能的にいえば知覚と運動や運動予測(意図)と運動結果の解離もそうです。

その境界を意識すれば意識するほど、自ら側の主張のみを繰り返し、結果として思い通りにならなければ、そのボータ外にいる者・国(相手)の行動を批判してしまいます。その攻撃の背景が、先ほどの「食い違い」です。

私はこの「食い違いを解決すること」、これが人間の幸福感をつくるものだと思っています。疼痛患者のDr.ショッピングの例もそうだし、片麻痺の問題もそうです。どのように、○○法や○○刺激で見かけの機能が向上しても、その食い違い・矛盾が存在している以上、幸福感は感じることができません。人間の脳はそのようにできています。この矛盾を解決するもの。それがノンバーバルを大いに含めた双方向性コミュニケーションなのです。片方からだけの一方向性の刺激(意見や主張も含む)を入れるといったものは、逆に矛盾(不一致)を大きくしてしまうことは、日常的によくあることです。



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