渚にてOn the beach 平成辛卯廿三年卯月廿三日
ちょっと古い映画ですが、映画好きなT氏が“Waltzing Matilda”を歌ってる
映画があるよといって紹介してくれた映画がある。
「On the Beach 渚にて」だ。古いのでツタヤさんが名画復活シリーズで掘り起してくれた。
去年、借りて見みたが、何とも言えない感情になって、記憶の片隅にしまっておいた。
しかし、今般の津波による福島第一原発事故で、どうしても私の頭は核戦争を思い起してしまった。そして、この映画がまさに「核戦争直後」を描いていたから、記憶の片隅から
ブログに載せるまでになった。
3年前、“Waltzing Matilda”を歌いながら、メルボルン市内を歩いていた。
そのメルボルンが舞台で、それは恐ろしい、ぞっとするような映画が作られた。
時は1959年、監督スタンリー・クレイマー 出演グレゴリー・ペック、アバ・ガードナーなど。
核戦争が始められ、アメリカ原子力潜水艦とまだ放射能が致死量まで汚染されていない
メルボルン市だけが生き残って、世界破滅の日doomsdayを迎える。
アメリカ原子力潜水艦はアメリカ西海岸を調査に出かけるも、そこは不気味に静まり返っていた。廃墟だ。人々が忽然と消えた。信号員がモールス音を拾うも、たまたまの事象であった。 メルボルン市のガイガーカウンターの値が上がってきてくる。
胸をつかれるのは、いよいよその日を迎える潜水艦員たちとその彼女らとの別れである。
様々なドラマが展開された。核戦争は終わった。
しかし、首相は述べる。「人間の生き残っている証拠はない。」
街の横断幕は「兄弟よ。まだ時間はある。」と掲げてある。
原子力潜水艦は海底へ潜っていく。そして、映画は終わる。
50年も前の映画でしたが、今の日本の現実に戻っても、放射能は目に見えないから、どのくらいの濃さかどうかが分からない。
事故当初から『直ちに人体に影響を与えるものではない』という将来のリスクに含みをもたせた言い方で、ついに、政府はレベル4からレベル7まで来てしまった。
原子力安全委員たちは、事故発生から1カ月以上も現地入りせず、その事実が報じられてから駆けつけたという。年間1千万円以上の報酬を受けながら怠慢である。
アル・ゴア元アメリカ副大統領が「不都合な真実」で、一気に注目を浴びた原発市場は、花開くかにみえたが、ドイツの「緑の党」の大躍進で、反原発の気運が高まりますね。
三菱重工のアメリカ原発60億円単独受注は中断か?
去年鳩山首相(当時)自らセールし、10月には菅首相がベトナムのズン首相と会談し、日本が建設するという合意した原発は、見直し宣言で白紙になりましたね。
この動きを見ると、民主党も本気で核廃絶を考えてこなかったということになる。
真摯な堤未果氏は、「もうひとつの核なき世界」(小学館)で、被爆国として廃絶を訴え続けてきた<核>と、日常生活の中で使うエネルギーとして依存する<原子力>は、たとえ言葉で切り離しても<核なき世界>を通して未来を見る時、表裏一体の存在だ。
核燃料なんてウランを加工すれば簡単にできてしまう。原子炉内で核弾頭用プルトニウムを造ることがいつでも出来る。核の傘といっているけれど、いざとなれば核装備は出来るのだ。ただ言わないだけで、原発を隠れ蓑で開発してきたといえる。非核3原則は完全にウソでしたと言えない事情といっしょですね。
それよりももっと怖い話がこの本に書いてあった。
劣化ウランである。聞いたことはあったが、これほど深刻な問題だとは知らなかった。
劣化ウランとはウラン235の同位体存在比が天然のものより少ないもののことをいう。
ちょっとnetで調べたら、
天然のウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%という割合で出来ています。
ウラン238は特殊な環境でなければ核分裂は起こりにくいのですが、ウラン235は核分裂を起こしやすいので「燃えるウラン」とも言われます。つまり、天然ウラン程度のウラン235の比率では原子力発電所の燃料としては使えないので、ウラン235の比率を天然のものよりも高める「ウラン濃縮」という作業が必要となります。
この「ウラン濃縮」のあとに出る低レベル放射性廃棄物(ほとんどがウラン238)を劣化ウランといいます。
100万キロワット級原発を1年間動かす場合、燃料として濃縮ウランが30t必要となりますが、そのときに発生する劣化ウランは160tにものぼります。
今話題の原子力発電をする際に出る廃棄物の中に、ウラン238を大量に含んでいるという。放射性物質なので破棄することができず、原発を所有するフランス、アメリカや日本などにとっては長い間悩みの種であった。
友人S君は此度の震災について「原子力を利用するのは、爆弾にしろ、原発にしろ、良いことだとは思えません。原発が順調に運転されても核廃棄物の処理問題が残ります。私が原子力をやっていた頃には最高の処理方法はロケットに載せて太陽に打ち込むことだと言われました。太陽活動は核融合反応ですからそこに核廃棄物を打ち返すのは理想的かもしれませんがコストが引き合いません。」と言ってくれています。
アメリカ政府は、この廃棄物をどうにかして利用できないかと研究に研究を重ね、その結果生れたのが、この劣化ウランを機関砲の弾にするというアイデアである。
劣化ウランから成るこの弾は分厚い戦車の鋼鈑を貫通し、破片も出さずにガス化する。 湾岸戦争ではイラクの戦車が次々に爆発炎上しました。これは、撃ち込まれた劣化ウランが鋼鉄の装甲板に命中した衝撃で高温になって溶け、戦車内部に飛び散り、瞬時に自然発火し、摂氏3000度以上の高熱により戦車の砲弾や燃料に引火したためである。戦車に乗っている兵士は即死し、さらに放射性ガスも出るのだ。
処理できずに持て余されていたこの<核のゴミ>の国内蓄積量は1940年代に原爆を開発した「マンハッタン計画」以来50万トンにものぼり、加工したければエネルギー省がただ同然でいくらでも支給してくれる。こうして<安い、堅い、便利>と三拍子揃った小型破壊兵器「劣化ウラン弾」が誕生した。
この劣化ウラン弾が発する高二酸化ウランや八酸化三ウランなどの酸化物微粒子は、高度3千メートルの範囲で約二カ月かけて微粒子をまきちらし、さらにそれが風で広く拡散される。そしてゆっくりと地面へ舞い降りると、土や水、食べ物を汚染してゆくのだ。湾岸戦争で320トン、イラクで2200トンの劣化ウラン弾が使用されたといわれる。
ここで問題なのが、この劣化ウランとがんや白血病などの因果関係が、はっきりと解明されていないことである。なんの症状もなく、何年も何十年も経ってからがんが発症するが、“そのがんの原因が何年も前の放射能であった”と確定的に証明することが非常に難しいというのである。危険性は湾岸戦争以前より指摘されてきたが、公式研究はされてない。1990年米軍化学兵器司令部が、戦場で劣化ウランの粉塵を吸い込んだ場合、放射能と毒性で重大な問題になる。たとえ被曝量が少なくても長時間繰り返し粉塵に曝されれば、時間が経ったあとでがんに罹患すると警告している。1998年「軍事毒性プロジェクト」のフェーヒーは「湾岸戦争で約40万人の兵士が劣化ウランに曝された可能性あり」と、公表。帰還兵が訴訟に持ち込んではいるが、敗訴か保留中。一番新しいケースはアフガニスタン帰還兵で、洞窟や地下施設を破壊するために使われたバンガーバスター爆弾に劣化ウランが大量に使用されているから、湾岸、イラクからの帰還兵たちと同じ症状がでているという。怖いのは生まれてくる子供に重度障害があることだ。湾岸からの帰還兵に先天性障害児が生まれる確率は一般国民の4倍だったという。
『直ちに人体に影響を与えるものではない』と発表しながら、レベル7という重大な汚染が始まっていたわけで、まだ福島第一原発の温水は90°で蒸気を出しているから、収まったとは言えない状況だ。
オバマ大統領の2009年4月のプラハでの演説における『核なき世界』の『核』には、この劣化ウランは、残念ながらあたらないということだ。
核廃絶を謳いながら、原発推進では本当に核を無くしたいのではない。核兵器を最後まで安全に処理できる技術がない以上、何をもって、削減したといえるのか。
堤氏は子ども達に平和の大切さを伝えてゆくには、まず私たち大人が思考停止に陥らず何がおこっているかを知らないといけないと訴える。
60年間アメリカにおんぶに抱っこで来たうえに、物質的な豊かさを手に入れてしまったことがこの国の不幸だったのだ。万物に神が宿り、時に「荒ぶる神」となる自然をおそれる縄文以来の日本の伝統思想から、日本の美質を発揮して、津波と原発災害から復興を果たさねばならない。自然を力で支配することができると考えてきた西洋思想とは異なる自然と共存できる防災や国づくりの在り方を見出さねばならない。
お読み下され、感謝致します。
堤未果「もうひとつの核なき世界」(小学館)
写真は木瓜です。
ちょっと古い映画ですが、映画好きなT氏が“Waltzing Matilda”を歌ってる
映画があるよといって紹介してくれた映画がある。
「On the Beach 渚にて」だ。古いのでツタヤさんが名画復活シリーズで掘り起してくれた。
去年、借りて見みたが、何とも言えない感情になって、記憶の片隅にしまっておいた。
しかし、今般の津波による福島第一原発事故で、どうしても私の頭は核戦争を思い起してしまった。そして、この映画がまさに「核戦争直後」を描いていたから、記憶の片隅から
ブログに載せるまでになった。
3年前、“Waltzing Matilda”を歌いながら、メルボルン市内を歩いていた。
そのメルボルンが舞台で、それは恐ろしい、ぞっとするような映画が作られた。
時は1959年、監督スタンリー・クレイマー 出演グレゴリー・ペック、アバ・ガードナーなど。
核戦争が始められ、アメリカ原子力潜水艦とまだ放射能が致死量まで汚染されていない
メルボルン市だけが生き残って、世界破滅の日doomsdayを迎える。
アメリカ原子力潜水艦はアメリカ西海岸を調査に出かけるも、そこは不気味に静まり返っていた。廃墟だ。人々が忽然と消えた。信号員がモールス音を拾うも、たまたまの事象であった。 メルボルン市のガイガーカウンターの値が上がってきてくる。
胸をつかれるのは、いよいよその日を迎える潜水艦員たちとその彼女らとの別れである。
様々なドラマが展開された。核戦争は終わった。
しかし、首相は述べる。「人間の生き残っている証拠はない。」
街の横断幕は「兄弟よ。まだ時間はある。」と掲げてある。
原子力潜水艦は海底へ潜っていく。そして、映画は終わる。
50年も前の映画でしたが、今の日本の現実に戻っても、放射能は目に見えないから、どのくらいの濃さかどうかが分からない。
事故当初から『直ちに人体に影響を与えるものではない』という将来のリスクに含みをもたせた言い方で、ついに、政府はレベル4からレベル7まで来てしまった。
原子力安全委員たちは、事故発生から1カ月以上も現地入りせず、その事実が報じられてから駆けつけたという。年間1千万円以上の報酬を受けながら怠慢である。
アル・ゴア元アメリカ副大統領が「不都合な真実」で、一気に注目を浴びた原発市場は、花開くかにみえたが、ドイツの「緑の党」の大躍進で、反原発の気運が高まりますね。
三菱重工のアメリカ原発60億円単独受注は中断か?
去年鳩山首相(当時)自らセールし、10月には菅首相がベトナムのズン首相と会談し、日本が建設するという合意した原発は、見直し宣言で白紙になりましたね。
この動きを見ると、民主党も本気で核廃絶を考えてこなかったということになる。
真摯な堤未果氏は、「もうひとつの核なき世界」(小学館)で、被爆国として廃絶を訴え続けてきた<核>と、日常生活の中で使うエネルギーとして依存する<原子力>は、たとえ言葉で切り離しても<核なき世界>を通して未来を見る時、表裏一体の存在だ。
核燃料なんてウランを加工すれば簡単にできてしまう。原子炉内で核弾頭用プルトニウムを造ることがいつでも出来る。核の傘といっているけれど、いざとなれば核装備は出来るのだ。ただ言わないだけで、原発を隠れ蓑で開発してきたといえる。非核3原則は完全にウソでしたと言えない事情といっしょですね。
それよりももっと怖い話がこの本に書いてあった。
劣化ウランである。聞いたことはあったが、これほど深刻な問題だとは知らなかった。
劣化ウランとはウラン235の同位体存在比が天然のものより少ないもののことをいう。
ちょっとnetで調べたら、
天然のウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%という割合で出来ています。
ウラン238は特殊な環境でなければ核分裂は起こりにくいのですが、ウラン235は核分裂を起こしやすいので「燃えるウラン」とも言われます。つまり、天然ウラン程度のウラン235の比率では原子力発電所の燃料としては使えないので、ウラン235の比率を天然のものよりも高める「ウラン濃縮」という作業が必要となります。
この「ウラン濃縮」のあとに出る低レベル放射性廃棄物(ほとんどがウラン238)を劣化ウランといいます。
100万キロワット級原発を1年間動かす場合、燃料として濃縮ウランが30t必要となりますが、そのときに発生する劣化ウランは160tにものぼります。
今話題の原子力発電をする際に出る廃棄物の中に、ウラン238を大量に含んでいるという。放射性物質なので破棄することができず、原発を所有するフランス、アメリカや日本などにとっては長い間悩みの種であった。
友人S君は此度の震災について「原子力を利用するのは、爆弾にしろ、原発にしろ、良いことだとは思えません。原発が順調に運転されても核廃棄物の処理問題が残ります。私が原子力をやっていた頃には最高の処理方法はロケットに載せて太陽に打ち込むことだと言われました。太陽活動は核融合反応ですからそこに核廃棄物を打ち返すのは理想的かもしれませんがコストが引き合いません。」と言ってくれています。
アメリカ政府は、この廃棄物をどうにかして利用できないかと研究に研究を重ね、その結果生れたのが、この劣化ウランを機関砲の弾にするというアイデアである。
劣化ウランから成るこの弾は分厚い戦車の鋼鈑を貫通し、破片も出さずにガス化する。 湾岸戦争ではイラクの戦車が次々に爆発炎上しました。これは、撃ち込まれた劣化ウランが鋼鉄の装甲板に命中した衝撃で高温になって溶け、戦車内部に飛び散り、瞬時に自然発火し、摂氏3000度以上の高熱により戦車の砲弾や燃料に引火したためである。戦車に乗っている兵士は即死し、さらに放射性ガスも出るのだ。
処理できずに持て余されていたこの<核のゴミ>の国内蓄積量は1940年代に原爆を開発した「マンハッタン計画」以来50万トンにものぼり、加工したければエネルギー省がただ同然でいくらでも支給してくれる。こうして<安い、堅い、便利>と三拍子揃った小型破壊兵器「劣化ウラン弾」が誕生した。
この劣化ウラン弾が発する高二酸化ウランや八酸化三ウランなどの酸化物微粒子は、高度3千メートルの範囲で約二カ月かけて微粒子をまきちらし、さらにそれが風で広く拡散される。そしてゆっくりと地面へ舞い降りると、土や水、食べ物を汚染してゆくのだ。湾岸戦争で320トン、イラクで2200トンの劣化ウラン弾が使用されたといわれる。
ここで問題なのが、この劣化ウランとがんや白血病などの因果関係が、はっきりと解明されていないことである。なんの症状もなく、何年も何十年も経ってからがんが発症するが、“そのがんの原因が何年も前の放射能であった”と確定的に証明することが非常に難しいというのである。危険性は湾岸戦争以前より指摘されてきたが、公式研究はされてない。1990年米軍化学兵器司令部が、戦場で劣化ウランの粉塵を吸い込んだ場合、放射能と毒性で重大な問題になる。たとえ被曝量が少なくても長時間繰り返し粉塵に曝されれば、時間が経ったあとでがんに罹患すると警告している。1998年「軍事毒性プロジェクト」のフェーヒーは「湾岸戦争で約40万人の兵士が劣化ウランに曝された可能性あり」と、公表。帰還兵が訴訟に持ち込んではいるが、敗訴か保留中。一番新しいケースはアフガニスタン帰還兵で、洞窟や地下施設を破壊するために使われたバンガーバスター爆弾に劣化ウランが大量に使用されているから、湾岸、イラクからの帰還兵たちと同じ症状がでているという。怖いのは生まれてくる子供に重度障害があることだ。湾岸からの帰還兵に先天性障害児が生まれる確率は一般国民の4倍だったという。
『直ちに人体に影響を与えるものではない』と発表しながら、レベル7という重大な汚染が始まっていたわけで、まだ福島第一原発の温水は90°で蒸気を出しているから、収まったとは言えない状況だ。
オバマ大統領の2009年4月のプラハでの演説における『核なき世界』の『核』には、この劣化ウランは、残念ながらあたらないということだ。
核廃絶を謳いながら、原発推進では本当に核を無くしたいのではない。核兵器を最後まで安全に処理できる技術がない以上、何をもって、削減したといえるのか。
堤氏は子ども達に平和の大切さを伝えてゆくには、まず私たち大人が思考停止に陥らず何がおこっているかを知らないといけないと訴える。
60年間アメリカにおんぶに抱っこで来たうえに、物質的な豊かさを手に入れてしまったことがこの国の不幸だったのだ。万物に神が宿り、時に「荒ぶる神」となる自然をおそれる縄文以来の日本の伝統思想から、日本の美質を発揮して、津波と原発災害から復興を果たさねばならない。自然を力で支配することができると考えてきた西洋思想とは異なる自然と共存できる防災や国づくりの在り方を見出さねばならない。
お読み下され、感謝致します。
堤未果「もうひとつの核なき世界」(小学館)
写真は木瓜です。