悪魔のささやきA whisper of the Devil 平成丁亥年如月二十一日
先月、性癖から国の行動を見ようとした。S君から去年より読むと面白いと薦められていた本に「悪魔のささやき」加賀乙彦 集英社新書がある。
加賀乙彦氏は、犯罪者を観察するうち、「魔がさしたというような現象が人間には確かに起こりうる。 近年ますます悪魔のささやきが強まってきていると感じている。最近の日本人の意識は悪魔がささやくという現象が起こりやすい状況だ」としている。
最近、納豆の捏造事件があった。事実を確かめもせず、データを捏造して、発表してしまう。視聴率かせぎの結果ではあるが、恐ろしいことだ。大本営発表である。しかし、それを又、国民の一部ではあったが、パーと大騒ぎで殺到してしまった。
重大な事では、イラクの大量破壊兵器の存在の問題である。侵攻してしまってから、無かったことになり、引っ込みがつかなくなってしまっている。犠牲者は堪らない。「大いなる過ち」と言っている人もいる。
加賀氏は、日本という国の未来そして非常に大きなテーマは、「いかに悪魔のささやきを避けるか」であるとして分析をしている。
氏の根底には、「時代の風で思想が変わってしまうことが恐ろしい」としているのではないかと思われます。彼には青春を戦争で明け暮れた体験があったと思います。私は戦争を知らない世代です。氏は言う、「国民の自発的協力心をかきたて、国のため、天皇のために命を落とすことに疑いを抱かせないよう政府が作り上げたマインド・コントロール・システムの精緻さはすさまじいものがあった。たとえば『挙国一致、尽忠報国、堅忍持久』の3つの目標を揚げた国民精神総動員運動。思想統制や憲兵やビンタや非国民という非難があった」という。ところが、敗戦と同時に「鬼畜米英、撃ちてしやまん。一億総玉砕!と声をからしていた大人たちの変わりように愕然とした」という。玉音放送の2週間後には「これからの日本は民主主義の国だ。自由だ。人権だ」と話し出した。その変わり身の速さ!一億国民があっという間に軍国主義者から平和主義者に変わった。人間の思想や国家のイディオロギーというのは、なんて脆いものなのかという驚きは今もずっと続いてると言う。
本質は変わっていない。かつて日本人のなかに軍国主義という思想がパーツと入り込んだように、今度はアメリカ型民主主義というものが入っただけ。
60年前に加賀氏は感じて、時代の風になびいて今度はどのようなものが入り込むのか心配だとしている。 その心配が当たった事例に私はいた。
民主主義のなかで生まれ育った団塊の世代による学園闘争の嵐である。
当時、赤い「毛沢東語録」を手にしていた仲間もいた。あれよ、あれよという間に、一握りの民青、社青同、革マルなどの活動家がクラスの代表となり、自治会の投票で、ストが成立した。教授を大学の管理体制の一環として、学生との団体交渉がなされたが、決裂したのを記憶している。クラスの代表は活動家ではなかったが、ストの疑問を発表してぶつける事ができなかったようだ。他の代表は自殺したのを聞いた。機動隊導入で幹部の大半が逮捕され弱体化した。
そこで、総長代行が収拾に乗り出した途端、潮が引くように平静になってしまった。何なんだったのだろう。今から思うと、学費値上げは後輩のため、学生会館の管理運営をどうするかも、鍵の管理ということだけで考えれば済んだと思うが、もっと自由にまかせろとなっていたように思うが、当時はムードとして「ストありき」という悪魔のささやきが先行していた。もう30数年も前だ。その後、浅間山荘事件、三島由紀夫市谷突入事件とあったが、あっという間に学園が平静になり、企業戦士として、エネルギーを高度経済成長の歯車に向けたことは間違いない。
NHKのプロジェクトXの縁の下を支えたと思います。
日本人は極端から極端に走り易いということはこの体験でもいえる。
では今はどうだろう?
私達団塊の世代が経済成長の戦士として欧米に追いつけ、追い越せでやってきて、オウム事件を経た。そしてここ2,3年拝金主義のIT企業がのびて、一部崩壊した。 働く方向性や目的も見失ってぼんやりする時代がここ続いてる。
今、団塊や60歳以上の方の子供たち(3,40代)が頑張る時代だ。
彼らに「いかに悪魔のささやきから避けてもらうか」である。
加賀氏はいくつか方法を挙げておられるが、
『自分の頭で考える習慣をつけること』を挙げておられる。
大事なのはなんとなく流されて行動するのをやめて、自分の頭で考え、自分で選択して行動することなのだ。考える主体は常に「私」でなければならない。そして、哲学者鶴見俊輔氏の言葉「状況にのまれず、自分を引き離して自覚的に自分の生き方を選択する。大切なのはイディオロギーでなく、人生への『態度』だ。」と引用されている。
悪魔にささやかれても、動じない自分を作り、生きていきたく思った次第です。
お読み下され、感謝致します。
先月、性癖から国の行動を見ようとした。S君から去年より読むと面白いと薦められていた本に「悪魔のささやき」加賀乙彦 集英社新書がある。
加賀乙彦氏は、犯罪者を観察するうち、「魔がさしたというような現象が人間には確かに起こりうる。 近年ますます悪魔のささやきが強まってきていると感じている。最近の日本人の意識は悪魔がささやくという現象が起こりやすい状況だ」としている。
最近、納豆の捏造事件があった。事実を確かめもせず、データを捏造して、発表してしまう。視聴率かせぎの結果ではあるが、恐ろしいことだ。大本営発表である。しかし、それを又、国民の一部ではあったが、パーと大騒ぎで殺到してしまった。
重大な事では、イラクの大量破壊兵器の存在の問題である。侵攻してしまってから、無かったことになり、引っ込みがつかなくなってしまっている。犠牲者は堪らない。「大いなる過ち」と言っている人もいる。
加賀氏は、日本という国の未来そして非常に大きなテーマは、「いかに悪魔のささやきを避けるか」であるとして分析をしている。
氏の根底には、「時代の風で思想が変わってしまうことが恐ろしい」としているのではないかと思われます。彼には青春を戦争で明け暮れた体験があったと思います。私は戦争を知らない世代です。氏は言う、「国民の自発的協力心をかきたて、国のため、天皇のために命を落とすことに疑いを抱かせないよう政府が作り上げたマインド・コントロール・システムの精緻さはすさまじいものがあった。たとえば『挙国一致、尽忠報国、堅忍持久』の3つの目標を揚げた国民精神総動員運動。思想統制や憲兵やビンタや非国民という非難があった」という。ところが、敗戦と同時に「鬼畜米英、撃ちてしやまん。一億総玉砕!と声をからしていた大人たちの変わりように愕然とした」という。玉音放送の2週間後には「これからの日本は民主主義の国だ。自由だ。人権だ」と話し出した。その変わり身の速さ!一億国民があっという間に軍国主義者から平和主義者に変わった。人間の思想や国家のイディオロギーというのは、なんて脆いものなのかという驚きは今もずっと続いてると言う。
本質は変わっていない。かつて日本人のなかに軍国主義という思想がパーツと入り込んだように、今度はアメリカ型民主主義というものが入っただけ。
60年前に加賀氏は感じて、時代の風になびいて今度はどのようなものが入り込むのか心配だとしている。 その心配が当たった事例に私はいた。
民主主義のなかで生まれ育った団塊の世代による学園闘争の嵐である。
当時、赤い「毛沢東語録」を手にしていた仲間もいた。あれよ、あれよという間に、一握りの民青、社青同、革マルなどの活動家がクラスの代表となり、自治会の投票で、ストが成立した。教授を大学の管理体制の一環として、学生との団体交渉がなされたが、決裂したのを記憶している。クラスの代表は活動家ではなかったが、ストの疑問を発表してぶつける事ができなかったようだ。他の代表は自殺したのを聞いた。機動隊導入で幹部の大半が逮捕され弱体化した。
そこで、総長代行が収拾に乗り出した途端、潮が引くように平静になってしまった。何なんだったのだろう。今から思うと、学費値上げは後輩のため、学生会館の管理運営をどうするかも、鍵の管理ということだけで考えれば済んだと思うが、もっと自由にまかせろとなっていたように思うが、当時はムードとして「ストありき」という悪魔のささやきが先行していた。もう30数年も前だ。その後、浅間山荘事件、三島由紀夫市谷突入事件とあったが、あっという間に学園が平静になり、企業戦士として、エネルギーを高度経済成長の歯車に向けたことは間違いない。
NHKのプロジェクトXの縁の下を支えたと思います。
日本人は極端から極端に走り易いということはこの体験でもいえる。
では今はどうだろう?
私達団塊の世代が経済成長の戦士として欧米に追いつけ、追い越せでやってきて、オウム事件を経た。そしてここ2,3年拝金主義のIT企業がのびて、一部崩壊した。 働く方向性や目的も見失ってぼんやりする時代がここ続いてる。
今、団塊や60歳以上の方の子供たち(3,40代)が頑張る時代だ。
彼らに「いかに悪魔のささやきから避けてもらうか」である。
加賀氏はいくつか方法を挙げておられるが、
『自分の頭で考える習慣をつけること』を挙げておられる。
大事なのはなんとなく流されて行動するのをやめて、自分の頭で考え、自分で選択して行動することなのだ。考える主体は常に「私」でなければならない。そして、哲学者鶴見俊輔氏の言葉「状況にのまれず、自分を引き離して自覚的に自分の生き方を選択する。大切なのはイディオロギーでなく、人生への『態度』だ。」と引用されている。
悪魔にささやかれても、動じない自分を作り、生きていきたく思った次第です。
お読み下され、感謝致します。