■記事【スポーツナビ】
ＵＥＦＡ（欧州サッカー連盟）は２８日、２０１６年のユーロ（欧州選手権）の開催国をフランスに決定した。１９９８年にワールドカップを開催したフランスは、ユーロに関しては、開催国優勝を果たした１９８４年大会以来、３２年ぶりの自国開催となる。なお、試合会場には、ボルドー、ランス、リール、リヨン、マルセイユ、ナンシー、ニース、パリ、サン＝ドニ、サンテティエンヌ、ストラスブール、トゥールーズの１２都市が選ばれている。
同じく開催を立候補していたトルコとイタリアを含めた３カ国を対象に行われた１回目の投票では、フランスが４３票、トルコが３８票を獲得した一方、わずか２３票にとどまったイタリアはこの時点で落選。その後、フランスとトルコの間で行われた最終投票の結果、フランスが７対６の１票差でトルコを退け、正式に開催国として選ばれるに至った。
フランス人であるため、今回の投票には参加しなかったミッシェル・プラティニ会長は、今回の結果について「投票結果がきん差であった事実こそ、ＵＥＦＡが民主主義にのっとった組織であるこという何よりの証しだ。会長は独裁者ではない」と述べ、暗に自国の勝利を支持していたとのうわさに対し苦言を呈した。
なお、トルコ人であるシェネス・エルジク副会長、役員の１人でイタリア人のジャンカルロ・アベーテ氏も、プラティニ会長と同様の理由で投票には参加していない。
プラティニ会長は一方で、今回の決定には個人的に頭を悩まされたことを告白した。
「きん差であった投票結果からも、立候補した国々の組織レベルが非常に高いことが良く分かる。わたしはトルコに対して非常に深い親しみを感じている。その一方で、プラティニという名前からも分かる通り、わたしの起源はイタリアにある。そして、わたしがプロとしてのキャリアを積み重ねた場所がフランスだ。そんな状況からも、今回の決定はわたしにとって最初から非常に難しいものだった」
さらに、フランスサッカー協会（ＦＦＦ）のジャン＝ピエール・エスカレット会長をはじめ、フランスのニコラ・サルコジ大統領とともに投票に同席した元フランス代表ＭＦジネディーヌ・ジダン氏は「フランス国民にとって忘れらない日となった」と語り、今回の決定に大きな喜びを表した。
ボルドー、リール、リヨン、ニースなどのスタジアムは老朽化が進んでいるものの、開催前に行われる改装工事に必要な費用の６０％が民間企業から出資されることも、投票においては好材料になったと見られる。
プラティニ会長も「スタジアムが老朽化している点ではイタリアも同様だ。最新技術を取り入れたスタジアムを所有している他国に追いつくためにも、ユーロはスタジアムの改装に着手する最高の機会だ」と述べ、スタジアムの整備について問題がないことを指摘した。
それ以外にも、フランスは自国開催によって、２００８年のスイス・オーストリア大会の約２倍の収入が見込めることを公約として掲げている点も、今回の決定に少なからず影響を与えたと考えられている。ユーロ開催におけるＵＥＦＡの収入は、大会を重ねるごとに増加の一途をたどっており、９２年のスウェーデン大会では６１００万ユーロ（約６８億３２００万円）程度だった数字も、０８年のスイス・オーストリア大会では、１７億ユーロ（約１９００億円）にまで増えている。