HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

客寄せ興行であるがゆえの買収リスク。

2012-09-05 15:28:28 | Weblog
 いくら週刊誌のスクープとは言え、前々からファッションイベントとしては、問題点を感じていただけに今回は論じておきたい。週刊文春9月6日号に掲載された「東京ガールズコレクションを朝鮮総連系企業が買収」について、である。

 記事によると、東京ガールズコレクション(TGC)の運営会社「F1メディア」を昨年、朝鮮総連系企業を経営するY氏の不動産会社が株式を100%取得することで買収。そして、同氏がTGCの実行委員長に就任したというから、その目的はいったい何のだろうか。
 あくまで推測の域は出ないが、だいたいところは以下のようなことではないか。一つはTGCが先のイベントでもわかるように完全な「客寄せ興行」である点だ。買収者としては、4万人ものお客を集客できる「興行権」を手中に収めたかったのだろう。芝居にしても相撲にしても、興行ものに得体の知れない勢力が介在するのは、昔も今も変わらない構図なのだ。
 もう一つは、イベントに出演するのが旬のタレントであるがゆえ、芸能界への人脈、パイプづくりがあると思われる。記事に書かれたY氏の足跡を見ても、芸能界の谷町になるのは非常にわかりやすい行動と言える。

 TGCは興行的には成功していたが、もう一つの柱である「ショーを見ながら携帯サイトでタレントが着る服をその場で買える仕組み」は、意外にもコンバージョンレートが低く、販売手数料が伸び悩みイベント収支は赤字に陥っていたのだ。
 もともと当イベントは、アパレルや雑貨、コスメのネット販売とイベントによる情報発信で広告や協賛を募るメディア企業の「ゼイヴェル」が始めた。モバイルサイトのガールズウォーカーはそのルーツで、プログラム開発やサイト制作の初期投資、メンテナンスといった管理など相当のインフラコストがかかっている。イベントを連動させても手数料が伸びなければ、コスト回収はままならないというわけだ。
 その後、ゼイヴェルはブランディングに社名を変え、イベントも継続されていた。だが、記事によると「株式の一部が流出し総会屋が保有する等」の問題を露呈。11年1月には創業者の退任に至っている。ベンチャービジネスを興し、株式を公開するまでは順調でも、その途端に得体の知れない勢力に乗っ取られるということを、図らずも今回のケースが裏付けたことになる。

 実際、TGCの主催権、通販事業権、商標権は切り売りされており、通販事業は赤字ということを考えればY氏の不動産会社が保有してもメリットは少なそうである。だが、興行主催権、商標権からは莫大な利益が生まれる。TGCは海外や地方でも開催されており、興行主催権や商標権は各地の主催者に販売できるからだ。
 単なる客寄せ興行だから、興行主は誰でもいいのではって考え方もあるだろう。しかし、事はそう簡単には行かない。まずイベントに商品を提供するアパレルメーカー、ブランドへの影響である。メーンの客は素材や縫製には興味がなくノリで買っていく層だから関係ない、とは言えないはずだ。
 朝鮮総連のバックには「かの国」がある。将軍さまの三男が権力者の座に就こうとする中、日朝交渉の再開では総連が暗躍しているとも言われる。しかも、拉致問題が一向に進展しない一方で、平然と総連関連企業に資金が流れるのを、大多数の日本国民が許すはずはない。まして自分たちには関係ないとファッション業界が静観するなら、その見識が疑われるということである。

 また、イベントは国が推進するクールジャパンの一つとして、 外務省、観光庁、東京都などが後援し、税金が投入されている。経産省が後援していた東京コレクションは、国の事業仕分けで税金投入がカットされる一方、TGCは支援を受けられるのは縦割り構造の問題であるが、資金の行きつく先が総連関連会社なのだから、東コレ関係者は異議を唱えても良いだろう。
 それだけではない。このコラムでも取り上げたが、昨年12月には宮崎県でも観光事業の一環としてTGCは開催されている。もし、買収がイベント開催が決定した時点より先だったら、これは大いに問題である。少なくとも議会は自治体の担当者を追及すべきだろう。行政は事業入札では得体の知れない輩を排除するルールを作っているわけだから、知らなかったでは済まされない。

 でも、どうしてこうした問題が起きるのか。それは日本のファッションがメディアからあまりに軽んじて見られているからである。その場限りで人気があがれば御の字という考えがあるため、客寄せ興行というプロモーションに甘んじてしまう。そして集客するには手っ取り早く芸能人を使えばいいという考え方にたどり着く。イベントに関わるメディアの企画力などその程度だから、ファッションなんて二の次に置かれるのである。
 こうならないためには日本のアパレルが大同団結し、高感度で上質なクリエーションの発信舞台こそ、「コレクション」であると、叫ぶべきだ。また、ファッションイベントを主催する団体は、非営利で非上場であるのが条件だろう。コレクションはあくまでファッション文化の醸成であり、プロモーションの場。投機やマネーロンダリングの対象になってはならないのである。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« メンズの梅春プロパーは強化... | トップ | 器買って、中身あらずになら... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事