HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

売場づくりはマイナスの+J。

2011-09-06 12:45:25 | Weblog
 ユニクロとジル・サンダーとのコラボによる「+J」のラスト商品が、9月9日から世界同時で販売される。ファッションベーシックを売りにするユニクロと、ギリギリまで虚飾を削いだミニマルなジル・サンダー。デザイン契約した当初は、大量発注を前提にした素材品質のキープ、提携工場の縫製態勢を生かした効率アップなど生産メリットは高く、小売り段階でもシンプルなデザイン性がモード好きのお客受けし、トータルコーディネートで客単価アップも期待できると考えられた。

 しかし、わずか2年で契約解消にいたった背景には、ショップ、いわゆる売場レベルでの「VMDの粗雑さ」を克服できなかったことがあると思う。
 +JのVMDはユニクロ都市型店の売場を利用し、同ブランド仕様にアレンジした棚やハンガーによるカセットMDと、ギャップを真似たインディヴィジュアル広告のパネルを配した程度。
 ただ、ビジネスシステムはユニクロと変わらず、ロングスパン、大ロット、ローコスト調達によって「低価格・高機能・高品質」の商品を、シーズン初めから売場に計画的に並べ、売り減らしていくものだ。
 この手法ではシーズン初めこそ、商品は整然と並ぶが、ショートスパンによる第3、第4といった商品追加がないため、期初で売れ残れば期中もそのまま。マークダウン時期ともなれば、サイズ、色、型がバラバラに陳列されてVMDは一気に崩れ、モードイメージはガタ落ちとなる。
 いくら、ジル・サンダーが自身のコレクションは年2回しか行なわないと言っても、モードファッションである限りブランドショップでは、ショートスパン、小ロットの品種投入で商品を展開している。この辺の溝が両社で埋められるはずもなく、結果的に商品展開における感性の落差を生む形となった。
 
 ファッションジャーナリスト・南充浩さんの繊維産業ブログ(blog.livedoor.jp/minamimitsu00/)の「ユニクロに足りない初秋晩夏企画」では、「ユニクロは冬物を先行して並べているため、9月も苦しい展開になるのではないか。かろうじてヒートテックの先物買いが期待できると思うのだが、ダウンジャケットやメリノウールセーター、ネルシャツが本格的に動くのは10月以降であろう。 ユニクロに足りないのは初秋晩夏企画である。」とある。
 +Jにしても同じではないか。9月9日にとてもメルトンのピーコートやツィードのジャケットを買う気にはなれない。特に残暑が厳しい九州ではなおさらだ。一部のマニアは衝動買いするかもしれないが、それゆえ期中には売場がどんどん歯抜け状態になってVMDが崩れてしまうのである。モードファッションを扱うにしても、ロットや品種はさておきショートスパンによる計画投入が必要だろう。

 ジル・サンダーとの契約解消後、ジョニオこと高橋盾氏デザインによるアンダーカバーとのコラボ契約が明らかになった。来春オープンする東京・銀座店でお披露目すべく、企画が着々と進められている。
 高橋氏自身はこれまでに「アンチファストファッション」を明確に宣言していたらしく、「なんで組んだ」とか、「なにを行なう」とかファンは、その動向にやきもきしているようだ。
 ただ、正確に言えばユニクロはファストファッションではない。だから、柳井正社長、高橋氏のどちらともなく、コラボ契約の正当性を主張できないことはないだろう。
 もっとも、ファーストリテイリングが5兆円規模のグローバル企業を目指すのなら、そろそろユニクロと対極にあるモードファッションを自社でプロデュースしてもいいのではないか。その主人公となるべきデザイナーを探すのなら、いろんなコラボやデザインプロジェクトも大いに結構なことであるが。
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