HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

EC右へ倣えはどうなのか。

2016-01-13 09:00:23 | Weblog
 今年は業界でどんなキーワードがビジネスのカギになるか。いろんなところから、アンケートが来ている。

 お題としてもっとも多いのが、「EC」だ。スタートトゥデイがアプリ「WEAR」を提供し、「メルカリ」や「フリル」はスマートフォンで個人が気軽に売り買いを行えるようにした。

 今度はスタートトゥデイが満を持して「ZOZOフリマ」を登場させ、お客がZOZOタウンで購買した商品のユーズド売買に乗り出した。

 その他、AI(人工知能)を搭載し、バーチャル試着を可能にした「デジタルミラー」など、ICTを活用した試みが次々と登場。低迷するファッションビジネスを活性化するのは、情報通信技術を除いてはないようである。

 恒例の年頭所感でも、企業経営者は判を押したように「デジタル化への一層の取り組み」を強調している。

 「お客とのコミュニケーション強化にデジタルツールを生かす」「ECをさらに整備し、顧客の利便性を向上させたい」「投資が少なくて済むインターネット販売に注力する」「ネット販売を主力とする新ブランドの立ち上げたい」等々。

 ただ、業界としてはEC市場が広がってはいるものの、反面、競争が激化し始めているのも気になるところである。技術やメカの発達は結構なことだが、それらが買う側の全てに受け入れられ、売る側が継続し続けられるとは限らない。

 当初はネット商店街も、出店料の安さを謳っていたが、いつの間にかリアル店舗と同等のコストがかかるようになったとの指摘もある。

 一説によると、某通販サイトにおけるブランド運営事業者のコストは、関連経費も含めて35%までに迫り、駅ビルやファッションビルのそれと変わらなくなっており、ECがコスト上では優位とは言い切れない。

 だから、コストのかからないスマートアプリ利用の個人売買に注目をズラし、プロパーサイトへの風当たりを抑えようしていると言えば、考え過ぎだろうか。

 はたして今年のECはどうなるのか。この先、どう動いていくのか。業界にとって本当にベターな状況なのか。SNSメディアとしてもいろんな意見を聞きたいようである。

 ネガティブな言い方かもしれないが、 筆者は猫も杓子も右へ倣えという考えには、諸手を上げて賛同はしかねる。

 確かにECに人気が集中するようになると、そこにはビジネスチャンスがあるのかもしれないし、全体の売上げを押し上げていくのは間違いない。

 でも、マーケットにシェア100%はあり得ないし、ICTビジネスほど変化が激しいものはない。次から次に新しいシステムが登場していくし、先発企業は後発の研究対象となり、優位性は次第に薄れていく。

 すでに参入企業がひしめき合っている。飽和状態とは言わないまでも、何らかの新しい価値提案でないと、珍しくも何ともない。

 そもそも論として「まずサイトに集客できなければ、何の意味もない」「大手ショッピングモールに出店しても4万店に埋没してしまう」「60万円程度の年間出店料を支払うと、あとに利益を残すことはできない」といった意見もある。

 ネットショッピング礼賛の中で、黙殺されてきたことだが、全くその通りである。冷静に考えてリアルな店舗ですらお客が来ないのに、ネット上にサイトを開設したくらいで、簡単にお客が集められるかということである。

 サイトには同じ商品が山ほど並んでいる中で、価格や送料無料による差別化も、既に陳腐化している。

 個人の小売り事業者が、ある程度のネームバリュウをもつブランドを仕入れて販売する場合、仕入れ価格はどの事業者でもほぼ変わらないだろう。

 つまり、売価を下げたり、送料を無料にすれば、その分荒利益は下がるわけで、儲かるはずはないのである。商品を仕入れている限り、競争激化のECで利益を出していくのは難しいと考えるべきだろう。

 マーケットはECを捨てたところにも出現する。お客さんにとって、服を通じて人肌で感じるものとは何か、一歩先を行くことを考える契機にもなってほしい。

 ECを100%否定するのではなく、ECをテコに進化させたビジネスモデルの構築が必要なのである。

 例えば、「ECから逆にリアル店舗へ誘導する手法」とか、「店舗でできる品揃えが限られるからこそ、型、色・サイズ違いバリエーションはネットで購入してもらう」とか、サイト購入一辺倒ではないビジネスが考えられるのではないか。

 一方、お客にとっては、店舗で売っている商品と同じなら、ネットで購入する理由は生活圏に店がないか、ポイントなどのメリットがあるか、くらいだ。

 それが行きつくところまで行っているわけである。だから、売る側が商品そのものを違え、ターゲット設定から変えて、別のマーケットの掘り起こしに進まなければならないのではないか。

 ECに活路を見出そうとするなら、自社サイトで運営管理コストをできるだけ抑えながら、その分のコストをかけた商品を扱って、差別化を謳い文句にしてサイトに誘導するような「工夫」も必要だろう。

 商品を差別化し、そのセールスポイントをキーワードにする。ターゲットはネットをみる不特定多数のお客ではなく、ネットで欲しいモノを探している「特定少数」を対象にするということである。

 ここでの少数はネットマーケットという莫大な規模の中での少数である。ある程度のキャパは想定できるというもの。要は既存のボリューム市場には飽き飽きしている層を想定し、掘り起こしていくのである。

 リアル店舗は足下商圏を攻略しなければならない。だが、ECは商圏がボーダーレスになるわけだから、「商品を絞り込むこと」で広域商圏の中で「それを欲しがるお客」をピンポイントで確実に攻略する方が競争優位ではないかと思う。

 検索エンジンにかかるキーワードは何か。写真や動画はどの程度まで表現すればいいのか。「上質」「センス」「仕立てが良い」「日本製」等々、在り来たりの言葉ではお客はなびかない。

 写真や動画を使って、質感やディテールを詳しく見せる。手軽に簡単がEC普及の原動力だった。しかし、競争激化になると、イージーなことをやっていたのでは勝てないということだ。

 ブランドの新品を購入し、ユーズドになるとフリマで売り捌ばけばいいと考えるのなら、そこまでしないと差別化はできないのかもしれない。これはプロパー商品を販売する場合も同じことだ。

 極論すれば、生地のこし、伸びから着心地、伸び縮みまで、動画で公開してもらえば、試着できないデメリットを少しは解消できる。

 大手アパレルメーカーのトップは、口々に「ネット販売を主力とする新ブランドを検討したい」と言っている。

 それが店舗や販売スタッフのコストがかかならい分、商品に投資するのであればいい。

 でも、どこを切っても同じようなブランドSPAがダメになった中で、ローコストを追求するような商品をつくるためのネット販売では本末転倒ではないかと思う。

 また、百貨店も、EC挑戦を堂々と言い始めている。しかし、商品を買い取らず、委託販売や消化仕入れを残しておいて、タイムリーに商品をお客に発送できるのだろうか。Amazonは注文から1時間以内の発送に取り組み始めているのに。

 洋服を作って、売る。店が仕入れ、人が販売する。

 ビジネスそのものは、有史以来行われてきたいたって原始的なもの。21世紀ではいい加減陳腐化しているのかもしない。仕組みや手法を変えるなど、新たなビジネスに踏み込まなければ立ち行かないということだ。

 それを変えて行くのはICTに他ならず、効率を重視する企業なら皆、同じ選択を踏まざるを得ないのはわからないでもない。

 ただ、猫も杓子もECに参入して勝ち目があるとは思えない。

 今回のテーマ、「ZOZOフリマはフリルを超える?」のは、どれだけプロパーで人気のブランド買った人がユーズドに出品するかが勝敗を分けると思う。

 人気の新車が売れないことには、中古車市場も振るわないのと同じことだ。 

 ただ、産地はもちろん、質感や着心地を抜きにブランド名だけで飛びつくのは、大多数は30代以下の若者だろう。

 商品を見る目が肥え、成熟した大人は、ECに対しても高い次元で見極めていくと思われる。

 そうしたニーズやウォンツにいかに応える商品を提供できるか。活性化策が必要な先行企業、百貨店などの後発組には求められる課題だと思う。
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