2月に入り、日差しは日に日に春めいている。筆者は非常に暑がりのため、厚着で動くとすぐに汗ばんでくる。だから、厚手ニットは、2月の声と共に衣替えしている。
厄介なのがクリーニングだ。ドライだと汗汚れが落ちない気がするので、この時季にはウール用洗剤で丁寧に手洗いしている。クリーニング屋さんには申し訳ないが、この方法で縮みもせず長持ちしているニットがある。
一つは11~12年前に買った「ヨウジヤマモト」のニットだ。テレコ編みでヨウジらしいロング丈。袖丈も手が半分くらい隠れるのだが、毎年着て洗濯しても縮みも無く着続けられる。リブ編みだとこうはいかないと思いきや、そちらも変わりない。
今も取っているタグには「Fabrique au Japon 100% Laine wool」の表記。上代は3万円以上だったので、当然のクオリティなのかもしれないが、ここまで長く着られると好きなブランドの次元を超えて、愛着すら涌いている。
「コムデギャルソン」のアンゴラニットも日本製。12年ほど前に買ったのだが、少しの劣化もない。購入当時、ニットは中国製が増えていただけに、まさにMade in japan恐るべしだ。
ところが、それ以上に長持ちしているものがある。97年にくらいに仕事で訪れたニューヨークで買った「アルマーニA|X」のニットだ。こちらもすでに17年も着ているが、襟ぐりや袖のほつれもなく、少しの伸びもない。
価格は80ドルくらいだったと思うが、ウール78%にナイロンが22%の混紡率が長持ちする理由なのだろう。合繊が入ると、虫にとっても美味しくなさそうだし。
それにしてもアルマーニA|Xは、ラグジュアリーブランド「ジョルジオ・アルマーニ」のローエストライン、アルマーニジーンズのディフュージョンラインだ。1991年に「100ドル以下で買えるアルマーニ」として、ニューヨークでデビューした。
つまり、ジョルジオからすれば、バジェットと言ってもいい価格帯だ。アルマーニ氏本人はデザインには携わっていないだろうし、ブランドの位置づけもビジネス戦略上、下層マーケットの開拓に活用しているに過ぎない。
アイテムは単品のカジュアルアイテムが主体。生産工場はアジア地域が中心で、マーチャンダイザーは1シーズン持てば十分との思惑での素材や仕様にしたはずである。
ところが、このニットに限って言えば、17年も持ちこたえている。だから、コストパフォーマンスが良い程度のものではない。ビジネス的には当てが外れたどころか、笑えない誤算となったと言える。
ただ、デザインは当時流行っていた「デルカジ」を彷彿させるプレーンなもの。Vネックの襟は、下にTシャツを着てほんの少し見える程度だ。ジャケットの下に着てネクタイが見えるような野暮ったさは微塵もない。
身幅はジャストフィットで、着丈も長からず短からず。袖はイタリア規格を採用して長め、一般の日本人より腕が長い筆者にはちょうど良い。このあたりのデザイン感性はバジェットと言えど、さすがアルマーニと言ったところである。
生産サイドにとってこうした堅牢さ、コストパフォーマンスの良さが、翌年の売上げにつながらないとなるだろうから、以降のアルマーニA|Xではこれほどのアイテムは生産されていないと思う。
というか、テイストが次第にストリート寄りやクラブ系を意識したものに変わってしまい、筆者の感性には全く響かなくなってしまった。それがお好きなお方もいるだろうが。
おそらく素資材のクオリティも、それほど高くないだろうから、1シーズン限りのアイテムが主流だと思う。
今やユニクロや無印良品などといったSPA、外資系のファストファッションの上陸で、マス市場では彼らが完全にプライスリーダーとなっている。しかも、ユニクロはクオリティもそこそこ高いから、なおさら競争力をもつことになる。
百貨店の担当者がユニクロのメリノウールを評価しているところを見ると、各社はそこに照準を当てて企画を進めているのではとさえ思える。
マスのニット企画は1シーズン着るという価値観で、どれだけコストパフォーマンスのいいアイテムを作るかに勝負の軸は移っているようだ。
だから、17年も着られるニットを作ったことは、メーカーにとっては大損なのかもしれない。買う側にとっては丈夫なアイテムはお買得なのだが、17年も着るとなるともはや損得の次元では語れない。
3000円のニットを1年着るのと、3万円のニットを10年着るのでは、結果的にコストパフォーマンスは同じだ。でも、単に価格が10倍以上だったから、10年以上着続けたわけではない。そのニットを選んだ理由は他にある。
価格やブランドのプレステージでもない。心を揺さぶられるような何かがあったからだ。それほど高くないアルマーニA|Xのニットがそれを如実に語っている。
ファッションとしての感動があったからこそ、飽きずに着続けられるのだと思う。
もうそんな商品はほとんど市場に出回らないだろう。でも、探しに探しまわって見つけ出し、大事に着ていきたいと思う。
厄介なのがクリーニングだ。ドライだと汗汚れが落ちない気がするので、この時季にはウール用洗剤で丁寧に手洗いしている。クリーニング屋さんには申し訳ないが、この方法で縮みもせず長持ちしているニットがある。
一つは11~12年前に買った「ヨウジヤマモト」のニットだ。テレコ編みでヨウジらしいロング丈。袖丈も手が半分くらい隠れるのだが、毎年着て洗濯しても縮みも無く着続けられる。リブ編みだとこうはいかないと思いきや、そちらも変わりない。
今も取っているタグには「Fabrique au Japon 100% Laine wool」の表記。上代は3万円以上だったので、当然のクオリティなのかもしれないが、ここまで長く着られると好きなブランドの次元を超えて、愛着すら涌いている。
「コムデギャルソン」のアンゴラニットも日本製。12年ほど前に買ったのだが、少しの劣化もない。購入当時、ニットは中国製が増えていただけに、まさにMade in japan恐るべしだ。
ところが、それ以上に長持ちしているものがある。97年にくらいに仕事で訪れたニューヨークで買った「アルマーニA|X」のニットだ。こちらもすでに17年も着ているが、襟ぐりや袖のほつれもなく、少しの伸びもない。
価格は80ドルくらいだったと思うが、ウール78%にナイロンが22%の混紡率が長持ちする理由なのだろう。合繊が入ると、虫にとっても美味しくなさそうだし。
それにしてもアルマーニA|Xは、ラグジュアリーブランド「ジョルジオ・アルマーニ」のローエストライン、アルマーニジーンズのディフュージョンラインだ。1991年に「100ドル以下で買えるアルマーニ」として、ニューヨークでデビューした。
つまり、ジョルジオからすれば、バジェットと言ってもいい価格帯だ。アルマーニ氏本人はデザインには携わっていないだろうし、ブランドの位置づけもビジネス戦略上、下層マーケットの開拓に活用しているに過ぎない。
アイテムは単品のカジュアルアイテムが主体。生産工場はアジア地域が中心で、マーチャンダイザーは1シーズン持てば十分との思惑での素材や仕様にしたはずである。
ところが、このニットに限って言えば、17年も持ちこたえている。だから、コストパフォーマンスが良い程度のものではない。ビジネス的には当てが外れたどころか、笑えない誤算となったと言える。
ただ、デザインは当時流行っていた「デルカジ」を彷彿させるプレーンなもの。Vネックの襟は、下にTシャツを着てほんの少し見える程度だ。ジャケットの下に着てネクタイが見えるような野暮ったさは微塵もない。
身幅はジャストフィットで、着丈も長からず短からず。袖はイタリア規格を採用して長め、一般の日本人より腕が長い筆者にはちょうど良い。このあたりのデザイン感性はバジェットと言えど、さすがアルマーニと言ったところである。
生産サイドにとってこうした堅牢さ、コストパフォーマンスの良さが、翌年の売上げにつながらないとなるだろうから、以降のアルマーニA|Xではこれほどのアイテムは生産されていないと思う。
というか、テイストが次第にストリート寄りやクラブ系を意識したものに変わってしまい、筆者の感性には全く響かなくなってしまった。それがお好きなお方もいるだろうが。
おそらく素資材のクオリティも、それほど高くないだろうから、1シーズン限りのアイテムが主流だと思う。
今やユニクロや無印良品などといったSPA、外資系のファストファッションの上陸で、マス市場では彼らが完全にプライスリーダーとなっている。しかも、ユニクロはクオリティもそこそこ高いから、なおさら競争力をもつことになる。
百貨店の担当者がユニクロのメリノウールを評価しているところを見ると、各社はそこに照準を当てて企画を進めているのではとさえ思える。
マスのニット企画は1シーズン着るという価値観で、どれだけコストパフォーマンスのいいアイテムを作るかに勝負の軸は移っているようだ。
だから、17年も着られるニットを作ったことは、メーカーにとっては大損なのかもしれない。買う側にとっては丈夫なアイテムはお買得なのだが、17年も着るとなるともはや損得の次元では語れない。
3000円のニットを1年着るのと、3万円のニットを10年着るのでは、結果的にコストパフォーマンスは同じだ。でも、単に価格が10倍以上だったから、10年以上着続けたわけではない。そのニットを選んだ理由は他にある。
価格やブランドのプレステージでもない。心を揺さぶられるような何かがあったからだ。それほど高くないアルマーニA|Xのニットがそれを如実に語っている。
ファッションとしての感動があったからこそ、飽きずに着続けられるのだと思う。
もうそんな商品はほとんど市場に出回らないだろう。でも、探しに探しまわって見つけ出し、大事に着ていきたいと思う。