HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

一発勝負で冴える勘。

2018-12-12 06:55:46 | Weblog
 以前からスマホケースを作ってみようと思っていた。というのは、当方は「脂手」なので、スマートフォンが手から滑りやすい。これまでは破損予防にバンパーを付け、脱落防止でバンパーにフィンガーストラップ、そのリングにはさらにレザーストラップまで付ける過剰防御でショルダーバッグに取り付けている。

 しかし、Amazonで購入したバッグは、タブレットやノートPC向けで「まち」が薄い。というか、最近はショルダーバッグまで薄型になりつつある。筆者は仕事ではあまり荷物を持ちたくないので、ダイアリーとペン、ウォレット、PC関連グッズが入れば十分なのだが、打ち合わせ後に持ち帰る書類まで入れると、どうしても膨れてしまう。スマホがいくら薄くても出し入れがしにくくなるのだ。

 そこで、バッグに入れなくていいスマホケースをレザークラフトで手作りできないかと考えていた。そんな時、海外のレディスブランドで首から吊り下げられる革製のポシェット型スマホケースを見つけた。これなら自分でも作れそうだったので、早速、サムネイルを描いて型紙を作り、素材を調達した。



 形状はスマホのサイズにそって幅9cm、長さ46cm程度の革を縦に重ね合わせて両端を縫い合わせ、スマホを差し込むもの。革を包んでできる空間に革紐を通し、首から下げられるようにした、まさにポシェット感覚のスマホケースだ。



 革は横から見ると三枚重ねになるので、1つの空間をスマホを差し込むポケットに、もう一つは切り込みを入れて名詞やカードを差し込めるようにした。当面はスマホチケットを利用するまでもなく、JRや地下鉄の料金は差し込んだカードでタッチできる。

形状
スマホサイズ:iPhone6Sとバンパーで、幅7.4cm 長さ13.9cm、厚み0.7cm
型紙:革を上下に重ね合わせ、折り返したポケットスペースに差し込む形。反対側には名詞やカードを差し込めるように3カ所の切り込み 幅9.5cm 長さ47cm





 材料は柔らかい革だとケースに「こし」が出ないし、分厚すぎると加工がしづらい。だから、行きつけの革専門店「いづみ恒商店」と相談して、牛ステア1mmの厚手を選択した。これならかなりこしがあるので、スマホの硬さに負けないでケースの形を保持できる。革紐は中央区赤坂にある「ハシモト産業」福岡支店で、本革で丸厚のもの1mを分けていただいた。

 他は紐留めの革、革裏を滑り易くする別珍の端布。革を縫い合わせる糸は、レザークラフト専用の綿糸に縫い易いように蝋を引いた。加工の道具は革に針穴を空ける金属製の「ひし目」「木槌」「打ち台」「針」になる。革を切った「コバ」には劣化防止と化粧のために黒の仕上げ剤を塗った。

材料
革:幅9.5cm、長さ47cm、厚み0.1cmの牛ステア
革紐:本革で中心にスポンジを注入した丸厚のもの 1m
紐留:牛ステアの余り革
布:別珍の端布
糸:レザークラフト専用の綿糸に蝋を引いたもの
コバ処理:仕上げ剤

材料費
革:牛ステア 幅10cm、長さ1m 1312円 いづみ恒商店
紐:長さ1m 330円 ハシモト産業福岡支店
カラピナ:110円 ハンズマン


 制作にあたっていちばん難しいのは、スマホを差し込むポケットサイズの割り出しだ。一応、型紙にそって制作するが、革厚の1mm分をポケットスペースの「まち」に加えておかなければならない。また、スマホにはバンパーをつけているので、これを外してしまうとフィンガーストラップはつけられない。もし、電話を利用する時に落下させてしまうと、ケースを持っても意味がないので、つけたままにしたい。

 つまり、ポケットスペースの幅が狭いとスマホが入らないし、広いとケース自体が幅広になって野暮ったくなる。また、スマホの画面にはキズ防止のシールを貼っているが、革の裏のすべりを良くするために別珍の布を貼る。だから、さらに厚みが増して、スペースサイズの割り出しは容易ではなかった。

 布製なら縫い直すこともできるが、レザークラフトはひし目を木槌で打って針穴を空け、蝋引きの糸を交互に重ねるように縫製する。穴空けは一発勝負で、失敗すれば別の革を用意しなければならない。革は厚みもがあるので、微妙な部分は型紙ではわからない。1点ものは試作を何度も繰り返せないので、制作しながら調整していくしかないのだ。



 ケースの両端は糸で縫い合わせるので、左と右の糸間がポケットスペースの幅とほぼ一緒になる。結局、このサイズがスマホケースの制作で、一番の肝と言ってもいいだろう。これさえきちんと割り出せれば、後は革を切って縫い合わせるだけだから、完成したも同然だ。

 まあ、いちばん楽なのは型紙に頼るのではなく、バンパーを外してそれをひと回り大きめの革に包み、最初にだいたいのポケットスペースを決める方法だ。革の左右両側をダブルクリップで挟んで(表革にキズをつけないためには裏返して作業)、先にスマホがきちんと収まるようにしておく。そして、縫い合わせる部分=ひし目で針穴をあける部分に「アタリ」をつける。つまり、きちんをサイズを割り出すのではなく、現物の形からポケットスペースや縫い合わせの位置を決めるというアバウトなやり方だ。

 ただ、この方法ではどうしても縫い代を広くとることになり、左右の余分な革をカットしなければならない。1点ものだから、量販のように革の用尺を考える必要はないのだが、できれば切り屑になって捨てる革は少なくしたい。以前に手作りのバッグやアクセサリーをセレクトショップに納品しているデザイナーと話した時、「どうしても材料屑が出てしまうので、そのリサイクルも考えていかなければいけない」と語っていた。趣味だろうが、ビジネスだろうが、なるべくゴミを出したくないのは、筆者も同感である。

 結局、この手法ではポケットスペースは簡単に決まるが、革を贅沢に使うので断念した。型紙にそって最初からスマホケースの幅と厚みの寸法を割り出し、その範囲内で革の厚み分(左右2mm程度)をまちに加えて、ポケットスペースのサイズを決めた。

 スマホはケースに入れると落とす可能性は減るが、ジャストサイズで収まった方が首から吊り下げた時にしっくりくる。紐は首から袈裟懸けにして、ちょうど脇腹上くらいにケースが位置する長さにした。紐の両端は糸で縫い合わせ、目立たないようにケースと同じ革でカバーした。

 レザークラフトは長年やっているので、今回はスマホの厚みとまち部分を何とか調整し仕上げることができた。事務所マンションでの「ひし目打ち」は階下の住人に迷惑がかかるので、道具は自宅に置いているのだが、ご近所への配慮も考え、これのみ「ハンズマン大野城店」の工作室を借りて作業を行った。スマホもスッキリ収まったし、見た目もシャープでメンズライク。一発勝負の緊張感から、制作の勘どころも冴えた。



 コール音が鳴ったとき、直ぐに取り出せるようにフィンガーストラップはつけたままだ。また、屋外での落下防止を考えカラピナをつけて紐をスライドさせ、耳元に当てられるようにした。まあ、リールをつけるまではないし。材料費は2000円以下に収まった。

 レザーグッズは使い込む程に手や体に馴染んでいく。だから、スマホの規格が変わらない限り、使い続けていくつもりだ。

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コメント
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