書くのがだいぶ遅くなってしまった。2月中旬にオープンしたネット通販モール「ストライプデパートメント」https://stripe-department.com/についてだ。
トップページを開くと、イメージ画像とOPENING CAMPAIGN、PERSONAL STYLINGの紹介が交互にモーションする。帯でレイアウトされたヘッダーやトップメニュー、バナー画像に配置された文字、写真、ロゴマークは全て一般の通販サイトより大きめだ。これも自らのサイトをデパートと呼ぶだけに、端からターゲットにする中高年の視力低下を意識したWebデザインと言うと、言い過ぎだろうか。
このモールに大手アパレルの出店が相次いでいる。背景にはゾゾタウンの一人勝ちがあるのは間違い。あれだけの売上げ、成長を目の当たりにすれば、実店舗重視、自社サイトオンリーを貫いてきた百貨店系アパレルとて背に腹は替えられない。企業によって多少の温度差はあるにせよ、大量集客や新規顧客へのアプローチ、タッチポイントの拡大という点からも、自社サイトよりモール出店に舵を切るのは当然の選択だと思う。
一方、ソフトバンクとコラボしてモールをスタートさせたストライプスインターナショナルは、1994年の創業で裏原ブームに乗って急成長した企業だ。アースミュージック&エコロジーをはじめ、グリーンパークス、セブンデイズ=サンデーと次々にブランドを開発してきたが、基本はヤング向けで販路もSC主体になる。
百貨店が主力ターゲットにするキャリアやアダルト、マチュアという市場には踏み込んで来なかった。創業から24年目に入ったのだから、初期の頃のお客は40代になるが、加齢に商品を合わせることで感度やMDがブレるのを嫌ってきたのだ。結果的にはヤングターゲット戦略が奏功したということになる。あくまでこれまではであるが。
マクロ的に見ると、今のヤングもいずれは歳をとっていく。年齢動態における少子高齢は避けられないわけで、ヤングマーケットの縮小はすでに始まっている。ストライプスインターナショナルにとって、それがすぐさまアダルトやマチュア向けの商品開発を進める理由にならなくても、百貨店系アパレルと組むことは中長期の企業戦略を考える上で「有り」との経営判断だったわけだ。
SC主体に大量出店はしていても、通販というプラットフォームを持っておけば、いろんな角度で商品開発や販売戦略を立てることができるからである。
では、出店ブランドを見てみよう。「エンスィート」「シンプルライフ」「レステラ」等々を手がけるのは、百貨店系アパレルの代表格レナウンだ。系列の専門店「レリアン」も追随している。三陽商会は「エヴェックス バイ クリツィア」「マッキントッシュ・フィロソフィー」「サンヨーコート」などを出店させた。
「クリスチャン・オジャール」「ジョルジュ・レッシュ」「ミッシェル・クラン」「ホコモモラ デ シビラ」などは専門店系アパレルイトキンのブランドだが、百貨店販売の苦戦を考えると出店に動かざるを得なかったとみられる。
他にはインターナショナルクリエイティブ系の「アキコオガワ」や「パドカレ」、ミセス系のモードライン「プレインピープル」、百貨店系では定番の「ニューヨーカー」「オールドイングランド」なども名を連ねる。
変わったところでは、長崎県大村市のローカル時計店から宝飾業態やオリジナルブランドの開発で軌道に乗り、現在は国内80店、海外6店を構えるジュエリーのサダマツ。この3月には持ち株会社のフェスタリアHDに移行したが、こちらも社名の由来となった「フェスタリア・ビジュ・ソフィア」で出店している。ジュエリーと言っても、モールでは手頃な1万円以下の商品展開となっている。
百貨店展開ではレナウンと双璧をなしてきたオンワードHD、イトキンと同じく専門店系のワールドは、出店していない。自社でサイトを運営しているし、ネット専用のブランドも開発していることから、今のところはモールに頼らない戦略のようだ。
まあ、本当に販売力をもつブランドでは、顧客は単独のサイトにダイレクトにアクセスして購入している。だから、実店舗で苦戦気味の百貨店系ブランドがモールだろうと自社サイトだろうとネット販路を確立したからと言って、今以上に売れるという保証はない。
特にこれらが対象とする30代以上の客層は、現物を試着して購入したいとの思いはヤングより強いはず。販売スタッフのアドバイスやコーディネート術が購入の判断材料になるケースも多い。それ以上に服を着こなしてきた人間なら、ブランド横断で自由に組み合わせるセンスをもつ。だから、サイトによるブランド軸での単品編集では、実際の売場と比べると商品を着た自分をイメージしにくいのだ。
一応、 ストライプデパートメントでも、百貨店の接客風景をイメージさせるようなページもあるにはあるが、実店舗はもとより、ファッション雑誌なんかと比べても内容は薄っぺらで、まだまだ購入に踏み込ませる条件とまではいかない。これから改善して充実させてはいくであろうが。
地方百貨店がどんどん閉店していく中、地方に住むお客はブランド難民と化している。そうした客層からすれば、ダイレクトに百貨店系ブランドがチェックでき、購入できるモールはありがたい。しかし、ある程度の高額品に大枚をはたく以上は、仮想売場のモールではどうしても買い物に慎重にならざるを得ない。まだまだ課題は少ないないと思う。
今回のモールスタートは、大手の百貨店系アパレルと新参のヤング系SPAがその事業領域を超えて提携したところに注目が集まっている。だが、市場を拡大させたり、売上げアップを狙うには、やはりモールと一体した別の仕掛けが不可欠だと思う。
まずはモールをタッチポイントにして、実店舗、売場に集客しなければならない。お気に入りが見つかれば、やはり試着してみたい、他の商品も見てみたいとの気持ちにさせることが重要なのだ。また、地方、遠隔地のお客ではヤマトHDが都内の駅ビルで実証実験を始めた「お試し拠点&受取所」などと連動しなければ、顧客サービスとしても片手落ちである。というか、大人のお客ほど試着購入を望んでいるのではないだろうか。
出店するブランドは、まだまだ店舗販売との親和性が強いものが少なくないだけに、モールに出店しただけで売上げが伸ばせるかは懐疑的である。三陽商会はお試し拠点&受取所に参加を表明しているので、ストライプデパートメントでは実験データをもとに検証していくと思う。この結果が他社に与える影響は少なくないはずである。
また、アパレルメーカーはゾゾタウンや楽天では独り占めされている顧客の商品購入データをストライプデパートメントではしっかり入手してマーケティングなり、商品開発なり、顧客サービスなりに生かさなければ意味はない。
百貨店系アパレルが凋落したのは、紛れもなく商品の劣化であり、ブランドとしての陳腐化である。ネットで購入する顧客が商品に対しどういう不満を思っているか、それを真摯に受け止め、分析してその先に活用しなければならないのである。
大人のお客がブランドに期待することは、単に商品が買えれば良いというゾゾタウン利用のヤングとは違う。素資材やカラーのレベル、企画やデザインのクリエイティビティや完成度、シーズンMDの構成力など、要望のレベルは非常に高いと思う。だから、お客の声を知ることは重要なのである。
インターネット販売が実店舗より優れている点の一つに時空を超えたインタラクティブなコミュ二ケーションがある。そこから得られるお客の要望をどう拾い上げ、どう商品づくりに生かすか。「ストライプデパートメントに出店して、商品が良くなったね」。そう言われるようになってこそ、アパレルの勢力図は変わるのである。
トップページを開くと、イメージ画像とOPENING CAMPAIGN、PERSONAL STYLINGの紹介が交互にモーションする。帯でレイアウトされたヘッダーやトップメニュー、バナー画像に配置された文字、写真、ロゴマークは全て一般の通販サイトより大きめだ。これも自らのサイトをデパートと呼ぶだけに、端からターゲットにする中高年の視力低下を意識したWebデザインと言うと、言い過ぎだろうか。
このモールに大手アパレルの出店が相次いでいる。背景にはゾゾタウンの一人勝ちがあるのは間違い。あれだけの売上げ、成長を目の当たりにすれば、実店舗重視、自社サイトオンリーを貫いてきた百貨店系アパレルとて背に腹は替えられない。企業によって多少の温度差はあるにせよ、大量集客や新規顧客へのアプローチ、タッチポイントの拡大という点からも、自社サイトよりモール出店に舵を切るのは当然の選択だと思う。
一方、ソフトバンクとコラボしてモールをスタートさせたストライプスインターナショナルは、1994年の創業で裏原ブームに乗って急成長した企業だ。アースミュージック&エコロジーをはじめ、グリーンパークス、セブンデイズ=サンデーと次々にブランドを開発してきたが、基本はヤング向けで販路もSC主体になる。
百貨店が主力ターゲットにするキャリアやアダルト、マチュアという市場には踏み込んで来なかった。創業から24年目に入ったのだから、初期の頃のお客は40代になるが、加齢に商品を合わせることで感度やMDがブレるのを嫌ってきたのだ。結果的にはヤングターゲット戦略が奏功したということになる。あくまでこれまではであるが。
マクロ的に見ると、今のヤングもいずれは歳をとっていく。年齢動態における少子高齢は避けられないわけで、ヤングマーケットの縮小はすでに始まっている。ストライプスインターナショナルにとって、それがすぐさまアダルトやマチュア向けの商品開発を進める理由にならなくても、百貨店系アパレルと組むことは中長期の企業戦略を考える上で「有り」との経営判断だったわけだ。
SC主体に大量出店はしていても、通販というプラットフォームを持っておけば、いろんな角度で商品開発や販売戦略を立てることができるからである。
では、出店ブランドを見てみよう。「エンスィート」「シンプルライフ」「レステラ」等々を手がけるのは、百貨店系アパレルの代表格レナウンだ。系列の専門店「レリアン」も追随している。三陽商会は「エヴェックス バイ クリツィア」「マッキントッシュ・フィロソフィー」「サンヨーコート」などを出店させた。
「クリスチャン・オジャール」「ジョルジュ・レッシュ」「ミッシェル・クラン」「ホコモモラ デ シビラ」などは専門店系アパレルイトキンのブランドだが、百貨店販売の苦戦を考えると出店に動かざるを得なかったとみられる。
他にはインターナショナルクリエイティブ系の「アキコオガワ」や「パドカレ」、ミセス系のモードライン「プレインピープル」、百貨店系では定番の「ニューヨーカー」「オールドイングランド」なども名を連ねる。
変わったところでは、長崎県大村市のローカル時計店から宝飾業態やオリジナルブランドの開発で軌道に乗り、現在は国内80店、海外6店を構えるジュエリーのサダマツ。この3月には持ち株会社のフェスタリアHDに移行したが、こちらも社名の由来となった「フェスタリア・ビジュ・ソフィア」で出店している。ジュエリーと言っても、モールでは手頃な1万円以下の商品展開となっている。
百貨店展開ではレナウンと双璧をなしてきたオンワードHD、イトキンと同じく専門店系のワールドは、出店していない。自社でサイトを運営しているし、ネット専用のブランドも開発していることから、今のところはモールに頼らない戦略のようだ。
まあ、本当に販売力をもつブランドでは、顧客は単独のサイトにダイレクトにアクセスして購入している。だから、実店舗で苦戦気味の百貨店系ブランドがモールだろうと自社サイトだろうとネット販路を確立したからと言って、今以上に売れるという保証はない。
特にこれらが対象とする30代以上の客層は、現物を試着して購入したいとの思いはヤングより強いはず。販売スタッフのアドバイスやコーディネート術が購入の判断材料になるケースも多い。それ以上に服を着こなしてきた人間なら、ブランド横断で自由に組み合わせるセンスをもつ。だから、サイトによるブランド軸での単品編集では、実際の売場と比べると商品を着た自分をイメージしにくいのだ。
一応、 ストライプデパートメントでも、百貨店の接客風景をイメージさせるようなページもあるにはあるが、実店舗はもとより、ファッション雑誌なんかと比べても内容は薄っぺらで、まだまだ購入に踏み込ませる条件とまではいかない。これから改善して充実させてはいくであろうが。
地方百貨店がどんどん閉店していく中、地方に住むお客はブランド難民と化している。そうした客層からすれば、ダイレクトに百貨店系ブランドがチェックでき、購入できるモールはありがたい。しかし、ある程度の高額品に大枚をはたく以上は、仮想売場のモールではどうしても買い物に慎重にならざるを得ない。まだまだ課題は少ないないと思う。
今回のモールスタートは、大手の百貨店系アパレルと新参のヤング系SPAがその事業領域を超えて提携したところに注目が集まっている。だが、市場を拡大させたり、売上げアップを狙うには、やはりモールと一体した別の仕掛けが不可欠だと思う。
まずはモールをタッチポイントにして、実店舗、売場に集客しなければならない。お気に入りが見つかれば、やはり試着してみたい、他の商品も見てみたいとの気持ちにさせることが重要なのだ。また、地方、遠隔地のお客ではヤマトHDが都内の駅ビルで実証実験を始めた「お試し拠点&受取所」などと連動しなければ、顧客サービスとしても片手落ちである。というか、大人のお客ほど試着購入を望んでいるのではないだろうか。
出店するブランドは、まだまだ店舗販売との親和性が強いものが少なくないだけに、モールに出店しただけで売上げが伸ばせるかは懐疑的である。三陽商会はお試し拠点&受取所に参加を表明しているので、ストライプデパートメントでは実験データをもとに検証していくと思う。この結果が他社に与える影響は少なくないはずである。
また、アパレルメーカーはゾゾタウンや楽天では独り占めされている顧客の商品購入データをストライプデパートメントではしっかり入手してマーケティングなり、商品開発なり、顧客サービスなりに生かさなければ意味はない。
百貨店系アパレルが凋落したのは、紛れもなく商品の劣化であり、ブランドとしての陳腐化である。ネットで購入する顧客が商品に対しどういう不満を思っているか、それを真摯に受け止め、分析してその先に活用しなければならないのである。
大人のお客がブランドに期待することは、単に商品が買えれば良いというゾゾタウン利用のヤングとは違う。素資材やカラーのレベル、企画やデザインのクリエイティビティや完成度、シーズンMDの構成力など、要望のレベルは非常に高いと思う。だから、お客の声を知ることは重要なのである。
インターネット販売が実店舗より優れている点の一つに時空を超えたインタラクティブなコミュ二ケーションがある。そこから得られるお客の要望をどう拾い上げ、どう商品づくりに生かすか。「ストライプデパートメントに出店して、商品が良くなったね」。そう言われるようになってこそ、アパレルの勢力図は変わるのである。