先日、夏休み恒例の「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」の案内が届いた。期日は7月29日水曜日、午後2時から1時間半で開催されるようだ。
例年通り、二部構成で、第1部は活動報告と今後の取り組みなど、第2部が「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」と題した講演になっている。
今年は会場がホテルの大広間から貸しホールに変更された。バーニーズが入るリソラ天神階上の多目的ホールである。
変わった一番の理由は経費面だろう。またフォーラム後に企画されていた懇親会に参加者がほとんどなかったせいもある。それに推進会議としては「他社にも仕事を出さないと」という配慮もあるから、当然である。
活動内容の報告については、昨年度末の3月に開催した「ファッションウィーク福岡2015/FWF」とそのしんがりを務めた「福岡アジアコレクション/FACo」を除けば、大したものはない。
ほとんどの事業予算が年度末に行われるFWFとFACoと費やされているわけだし、後は民間の活動を推進会議が広報しているに過ぎないからである。
ただ、ファッションウィークと言っても、ミュージシャンやタレントによる「客寄せイベント」で、ファッションとは何ら関係ないものに大半の事業費を費やしている。
昨年から企画を代理店のHに丸投げし、本来のファッション事業とは大きくかけ離れ、いわゆる糸へんビジネスへの経済効果を図るものでない。
そんな事業内容を業界からの批判を避けるため、メディアを使ってことさらにファッション事業っぽく広報したに過ぎないのである。
高島市長が申請にした特区の利用も、福岡県からの予算に限りがあるから、抱き合わせて利用しただけだ。来年からは「かわいい区」の事業費はない。まあ、水面下ではあれこれ別の事業をでっち上げ、予算を獲得しようという魂胆は渦巻いているだろうが。
唯一、注目すべきは「期間中に参加店舗から、総額1000万円のボーナスがもらえる」というポイント還元も盛り込まれたことだ。これにどれほどの実績があったのかが、一番興味深いところである。
しかし、売上げに関わる数字は参加店舗の秘匿情報だ。また、利害関係者にすれば、店舗から「大した効果はなかった」と言われる方が失笑ものである。
企画運営委員長にとっては、「自らに不利な情報は出さない」方が好都合だから、信憑性のある報告がなされるとは思えない。
それは福岡アジアコレクション/FACoについても然り。RKB毎日放送がプロデュースしているとは言え、関西コレクションの劣化コピーと化しているからだ。
ファッションウィークにおけるメディアの取扱いでは、FBS福岡放送が夕方の「情報番組」、めんたいワイドで、行われたイベントの模様、商工会議所担当者のインタビュー、専門学校生やスタイリストを事前取材のVTRが目を引いたくらいだ。
ただ、10分程度の内容だったところを見ると、おそらく有償のタイアップと思われる。テレビ局にとって「電波」は商品だ。ニュースならともかく、自社制作のドル箱情報番組で、10分もの枠をタダ売りすることは考えにくい。
これを見ても、ファッション事業と言いながら、RKB同様にメディアに資金が流れるという構造がますますエスカレートしている。地元ファッション事業者が直接的な恩恵を受けることなど、ほとんどないと言っていい。
とすれば、結果的に「総額1000万円ボーナス」は、少しは効果を発揮したのだろうか。報告の信憑性は毎度のことながら疑わしいが、「プレミア商品券」が各地で大人気を呼んでいることは多少なりと効果はあっただろう。
地域によっては早朝から長蛇の列ができたり、代行購入で数百万円も買っていくお客がいるなど、混乱も生じている。
購入できる商品はファッションアイテムとは限らないが、福岡市も参加店のカテゴリー調整に苦労した末にようやく腰を上げ、今年は「NEXTプレミア商品券」を売り出す。
ただ、これにしても募集対象店舗は小売り全般、飲食、宿泊施設などと広範囲になっている。12,000円分の買い物が1万円でできるが、換金手数料に1~2%が徴収される。 予約販売、事前登録が必要で、すでに6月21日で締め切られている。
お客にとっては予約しないと買えないし、店舗側は登録をしないと対象店にならない。市側が地元事業者にどこまで広報し、周知されているのか。ファッション事業者がどこまで参加するのか。お客がお目当てのショップで使えるのか。課題は少なくない。
まあ、利用できる店舗はファッション関係の店舗に限定されるわけではないが、これまでの陳腐なイベント企画に比べると、少しは地場業界に貢献すると思われる。おそらくフォーラムの「今後の取り組み」で、企画運営委員長の御仁が何らかを語るだろう。
今回のフォーラムで注目すべきは講演会だ。テーマは「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」となっている。
講師は2名で、1人が地元でスタイリング雑誌を発行する編集者と、もう1人が「GANSTA CREATIVE DESIGN CO.,LTD」という企業で、ストリートファッションをデザインする台湾人のデザイナーである。
案内にあった社名は、GANSTAは間違いで、GANGSTAの方が正しい。講演というより、編集者とデザイナーによるファッションエリアをテーマにしたパネルディスカッションに近いのではないか。
フォーラムの開催日は平日の午後。業界関係者が参加できるような時間帯ではない。だから、集客には姑息な手段が取れられきた。ここ数年は確信的に専門学校生を惹き付けるようなテーマ、講演者をブッキングして、動員をかけている。
そのため、企画運営委員長やFACoプロデューサーの利害でしか考えていない人選には、多くのファッション関係者が閉口しているのも事実だ。大した効果も無く、使える経費にも限界があるから、今回はこの両名に落ち着いたというならなおさらである。
講師を務める編集者が発行するスタイリング雑誌にしても、地元の業界関係者なら多くが知るところ。だが、地元では全く知名度のない台湾人デザイナーより、プロフィールが詳しいところに違和感を拭えない。
Windows版のwordで制作した案内状がMacと互換性がないため、レイアウトがグチャグチャになるとはいえ、日本で無名の台湾人の横顔を詳細に紹介すべきじゃないのか。この辺も主催者のいい加減さが窺い知れるということだ。
穿った言い方をすれば、すでに休刊しているとは言え、マガジンハウスの「Hanako」での編集経験を取り上げるあたりは、いかにもミーハー学生が飛びつきそうなこと。この辺にも企画運営委員長の思惑が透けて見えるのである。
それにしても、テーマが今のファッションビジネスにおいて的を射ていればいいのだ。しかし、それにも?がつく。これも、大名地区に憧れるミーハー専門学校生に振ったものであるのは想像に難くないからだ。
この編集者はかつての大名小学校裏手の古ぼけたマンションの一室に編集部を構えていた。日々、ストリートファッションを着飾る若者に目を向けられるので、スナップ撮影には好都合だからだろう。
ならば、大名地区に事務所を構えて20年の筆者と同様に、街の栄枯盛衰はわかっているはずだ。
大名地区では、一昨年秋にコムデギャルソン福岡店が移転し、今年春先にはビームス福岡店もパルコ新館に移った。他にも退店するファッション業態は後を絶たない。また新規出店のペースは年毎に鈍っている。
コムデギャルソンの店舗あとは、約1年半の空き家状態を経て、コスチュームナショナルの日本法人CNジャパンが土地ごと買収したと言われ、5月に福岡店がオープンした。そして、この夏には2階にバーがオープンするようで、内装業者が出入りしている。
ラグジュアリーとまではいかないまでも、小ぶりなショップの出店もあるにはある。だが、顧客でもつコムデギャルソンはともかく、ビームスがリロケートすることを見ても、大名はすでにかつてのような若者を集める力は、なくなっているということだ。
さらにコムデギャルソンより立地条件が良いビームス後に、未だに出店がないところを見ても、地盤沈下の割に家賃は下がらないということ。つまり、若者を対象としたファッションエリアとしてポテンシャルは、すでになくなっていると言っていいだろう。
専門学校のファッション部長を務める企画運営委員長にしてみると、自校のミーハー学生にビジネスインキュベーションの機会を与えなければならない。となると、大資本が中心の天神や博多駅、郊外SCでは無理である。
この御仁はこれまで大名の花形館、RKB跡地のヴィヴィ福岡、イオントップバリュコレクション(ルート80)のFACoコラボと、学生にビジネス機会の提供をしてきているが、ことごとく軌道に乗せられず尻すぼみに終わっているからだ。
一方、ビジネス感度が低い専門学校生は、ローコストでショップ展開ができるような知名度のないエリアなど眼中にない。となると、天神の隣町で、多くの若者が知る「大名になってしまう」ということである。
もっとも、ファッションビジネスの実務として基礎知識を勉強していない専門学校生が、講演を聞いたくらいで大名に新たなビジネスの可能性を見いだせるはずがない。
まず大名のようなストリートエリアでショップを展開するための収益やコストといった会計の基本を学んでいない。スタッフなどの採用や管理、マネジメントの進捗と乖離に伴う修正、コミットメントなんてほど遠い話だろう。
大名というエリアで今後どんなファッションを発信すれば、マーケットを開拓できるか。マーケティングとして地盤沈下が激しい市場を捉えるポイント、お客さんというターゲットの分析などの知見があるとも思えない。
さらに天神や博多駅、郊外、そしてネットなどのコンペティターがいる現在の競争環境において、それに対する理路整然とした自店の戦い方とは何かなど、微塵も考えていないのではないか。
ファッションリテラシーのない若者を対象に「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」というテーマで、一介のスタイリング誌の編集者や台湾人デザイナーが何を語りきれるというのか。
そんなレベルで地元ファッションビジネスの到達点なんか見えてこない。単なる安っぽい、中身のない内容にしか終始しないだろう。つまり、フォーラム事業自体が企画運営委員長とRKBのFACoプロデューサーのやっつけ仕事に過ぎないということである。
いかにもミーハー学生を惹き付ければいいだけの講演会で、本当に若者がビジネスを展開するためのリソースではないことがよくわかる。
台湾人デザイナーにしても、大名の現状など細かく分析しているわけではないだろう。アジア諸国との交流の中で、イメージ先行で福岡大名というエリアに目を向けたところで、ビジネスが成功することなどありえないのである。
作っている商品を見ても、すでに日本のでは見向きもされないテイストだ。正直、ダサい。この程度のレベルが大名、いや日本のショップで売れると思っているのなら、あまりに日本のファッションマーケットをバカにしていると言わざるを得ない。
講演のテーマはもちろんのことだが、商品そのものでさえ、業界人が飛びつくようなものではない。まず、バイヤーはつけるのに二の足を踏むだろう。
仮に仕入れたにしても、日本では若者自体が減っていて、買い物にも慎重になる中で、かつての裏原ブームのようにバカ売れすることはありない。
まあ、スタイリング誌の編集者が台湾版を発行したことで、今回のダブルキャストが実現したのはわかる。しかし、雑誌メディアが一介の台湾人デザイナーと交流したところで、大名にファッションエリアとしてのポテンシャルが復活することなどありない。
企画委員長を中心に無理やりこじつけたチンケなテーマなんて、福岡大名のをフォーカスするもの、つまりはファッションムーブメント足り得ないのである。
現大名雙葉小学校の裏手、編集者のかつての事務所の階下隣が衣料品ではなく食品業態であること。週末には、料理音痴の女子たちが俄人気のスウィーツ目当てに長蛇の列を作ることetc.
それもドーナツ、フレンチトーストと次々に代わるところを見れば、わかりそうなものである。いや、事務所を薬院に移した時点で、わかっているはずである。
そもそも、利害関係者がただ自分たちの身入りになればと考える程度の事業において、秀逸で卓越した企画力が発揮されるとは思えない。高島福岡市長以上に、企画運営委員長の脳みそも限界値に達したようである。おっと、それは最初からだろうが。
例年通り、二部構成で、第1部は活動報告と今後の取り組みなど、第2部が「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」と題した講演になっている。
今年は会場がホテルの大広間から貸しホールに変更された。バーニーズが入るリソラ天神階上の多目的ホールである。
変わった一番の理由は経費面だろう。またフォーラム後に企画されていた懇親会に参加者がほとんどなかったせいもある。それに推進会議としては「他社にも仕事を出さないと」という配慮もあるから、当然である。
活動内容の報告については、昨年度末の3月に開催した「ファッションウィーク福岡2015/FWF」とそのしんがりを務めた「福岡アジアコレクション/FACo」を除けば、大したものはない。
ほとんどの事業予算が年度末に行われるFWFとFACoと費やされているわけだし、後は民間の活動を推進会議が広報しているに過ぎないからである。
ただ、ファッションウィークと言っても、ミュージシャンやタレントによる「客寄せイベント」で、ファッションとは何ら関係ないものに大半の事業費を費やしている。
昨年から企画を代理店のHに丸投げし、本来のファッション事業とは大きくかけ離れ、いわゆる糸へんビジネスへの経済効果を図るものでない。
そんな事業内容を業界からの批判を避けるため、メディアを使ってことさらにファッション事業っぽく広報したに過ぎないのである。
高島市長が申請にした特区の利用も、福岡県からの予算に限りがあるから、抱き合わせて利用しただけだ。来年からは「かわいい区」の事業費はない。まあ、水面下ではあれこれ別の事業をでっち上げ、予算を獲得しようという魂胆は渦巻いているだろうが。
唯一、注目すべきは「期間中に参加店舗から、総額1000万円のボーナスがもらえる」というポイント還元も盛り込まれたことだ。これにどれほどの実績があったのかが、一番興味深いところである。
しかし、売上げに関わる数字は参加店舗の秘匿情報だ。また、利害関係者にすれば、店舗から「大した効果はなかった」と言われる方が失笑ものである。
企画運営委員長にとっては、「自らに不利な情報は出さない」方が好都合だから、信憑性のある報告がなされるとは思えない。
それは福岡アジアコレクション/FACoについても然り。RKB毎日放送がプロデュースしているとは言え、関西コレクションの劣化コピーと化しているからだ。
ファッションウィークにおけるメディアの取扱いでは、FBS福岡放送が夕方の「情報番組」、めんたいワイドで、行われたイベントの模様、商工会議所担当者のインタビュー、専門学校生やスタイリストを事前取材のVTRが目を引いたくらいだ。
ただ、10分程度の内容だったところを見ると、おそらく有償のタイアップと思われる。テレビ局にとって「電波」は商品だ。ニュースならともかく、自社制作のドル箱情報番組で、10分もの枠をタダ売りすることは考えにくい。
これを見ても、ファッション事業と言いながら、RKB同様にメディアに資金が流れるという構造がますますエスカレートしている。地元ファッション事業者が直接的な恩恵を受けることなど、ほとんどないと言っていい。
とすれば、結果的に「総額1000万円ボーナス」は、少しは効果を発揮したのだろうか。報告の信憑性は毎度のことながら疑わしいが、「プレミア商品券」が各地で大人気を呼んでいることは多少なりと効果はあっただろう。
地域によっては早朝から長蛇の列ができたり、代行購入で数百万円も買っていくお客がいるなど、混乱も生じている。
購入できる商品はファッションアイテムとは限らないが、福岡市も参加店のカテゴリー調整に苦労した末にようやく腰を上げ、今年は「NEXTプレミア商品券」を売り出す。
ただ、これにしても募集対象店舗は小売り全般、飲食、宿泊施設などと広範囲になっている。12,000円分の買い物が1万円でできるが、換金手数料に1~2%が徴収される。 予約販売、事前登録が必要で、すでに6月21日で締め切られている。
お客にとっては予約しないと買えないし、店舗側は登録をしないと対象店にならない。市側が地元事業者にどこまで広報し、周知されているのか。ファッション事業者がどこまで参加するのか。お客がお目当てのショップで使えるのか。課題は少なくない。
まあ、利用できる店舗はファッション関係の店舗に限定されるわけではないが、これまでの陳腐なイベント企画に比べると、少しは地場業界に貢献すると思われる。おそらくフォーラムの「今後の取り組み」で、企画運営委員長の御仁が何らかを語るだろう。
今回のフォーラムで注目すべきは講演会だ。テーマは「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」となっている。
講師は2名で、1人が地元でスタイリング雑誌を発行する編集者と、もう1人が「GANSTA CREATIVE DESIGN CO.,LTD」という企業で、ストリートファッションをデザインする台湾人のデザイナーである。
案内にあった社名は、GANSTAは間違いで、GANGSTAの方が正しい。講演というより、編集者とデザイナーによるファッションエリアをテーマにしたパネルディスカッションに近いのではないか。
フォーラムの開催日は平日の午後。業界関係者が参加できるような時間帯ではない。だから、集客には姑息な手段が取れられきた。ここ数年は確信的に専門学校生を惹き付けるようなテーマ、講演者をブッキングして、動員をかけている。
そのため、企画運営委員長やFACoプロデューサーの利害でしか考えていない人選には、多くのファッション関係者が閉口しているのも事実だ。大した効果も無く、使える経費にも限界があるから、今回はこの両名に落ち着いたというならなおさらである。
講師を務める編集者が発行するスタイリング雑誌にしても、地元の業界関係者なら多くが知るところ。だが、地元では全く知名度のない台湾人デザイナーより、プロフィールが詳しいところに違和感を拭えない。
Windows版のwordで制作した案内状がMacと互換性がないため、レイアウトがグチャグチャになるとはいえ、日本で無名の台湾人の横顔を詳細に紹介すべきじゃないのか。この辺も主催者のいい加減さが窺い知れるということだ。
穿った言い方をすれば、すでに休刊しているとは言え、マガジンハウスの「Hanako」での編集経験を取り上げるあたりは、いかにもミーハー学生が飛びつきそうなこと。この辺にも企画運営委員長の思惑が透けて見えるのである。
それにしても、テーマが今のファッションビジネスにおいて的を射ていればいいのだ。しかし、それにも?がつく。これも、大名地区に憧れるミーハー専門学校生に振ったものであるのは想像に難くないからだ。
この編集者はかつての大名小学校裏手の古ぼけたマンションの一室に編集部を構えていた。日々、ストリートファッションを着飾る若者に目を向けられるので、スナップ撮影には好都合だからだろう。
ならば、大名地区に事務所を構えて20年の筆者と同様に、街の栄枯盛衰はわかっているはずだ。
大名地区では、一昨年秋にコムデギャルソン福岡店が移転し、今年春先にはビームス福岡店もパルコ新館に移った。他にも退店するファッション業態は後を絶たない。また新規出店のペースは年毎に鈍っている。
コムデギャルソンの店舗あとは、約1年半の空き家状態を経て、コスチュームナショナルの日本法人CNジャパンが土地ごと買収したと言われ、5月に福岡店がオープンした。そして、この夏には2階にバーがオープンするようで、内装業者が出入りしている。
ラグジュアリーとまではいかないまでも、小ぶりなショップの出店もあるにはある。だが、顧客でもつコムデギャルソンはともかく、ビームスがリロケートすることを見ても、大名はすでにかつてのような若者を集める力は、なくなっているということだ。
さらにコムデギャルソンより立地条件が良いビームス後に、未だに出店がないところを見ても、地盤沈下の割に家賃は下がらないということ。つまり、若者を対象としたファッションエリアとしてポテンシャルは、すでになくなっていると言っていいだろう。
専門学校のファッション部長を務める企画運営委員長にしてみると、自校のミーハー学生にビジネスインキュベーションの機会を与えなければならない。となると、大資本が中心の天神や博多駅、郊外SCでは無理である。
この御仁はこれまで大名の花形館、RKB跡地のヴィヴィ福岡、イオントップバリュコレクション(ルート80)のFACoコラボと、学生にビジネス機会の提供をしてきているが、ことごとく軌道に乗せられず尻すぼみに終わっているからだ。
一方、ビジネス感度が低い専門学校生は、ローコストでショップ展開ができるような知名度のないエリアなど眼中にない。となると、天神の隣町で、多くの若者が知る「大名になってしまう」ということである。
もっとも、ファッションビジネスの実務として基礎知識を勉強していない専門学校生が、講演を聞いたくらいで大名に新たなビジネスの可能性を見いだせるはずがない。
まず大名のようなストリートエリアでショップを展開するための収益やコストといった会計の基本を学んでいない。スタッフなどの採用や管理、マネジメントの進捗と乖離に伴う修正、コミットメントなんてほど遠い話だろう。
大名というエリアで今後どんなファッションを発信すれば、マーケットを開拓できるか。マーケティングとして地盤沈下が激しい市場を捉えるポイント、お客さんというターゲットの分析などの知見があるとも思えない。
さらに天神や博多駅、郊外、そしてネットなどのコンペティターがいる現在の競争環境において、それに対する理路整然とした自店の戦い方とは何かなど、微塵も考えていないのではないか。
ファッションリテラシーのない若者を対象に「民間から始まる、福岡大名と台北東區地区のエリア交流」というテーマで、一介のスタイリング誌の編集者や台湾人デザイナーが何を語りきれるというのか。
そんなレベルで地元ファッションビジネスの到達点なんか見えてこない。単なる安っぽい、中身のない内容にしか終始しないだろう。つまり、フォーラム事業自体が企画運営委員長とRKBのFACoプロデューサーのやっつけ仕事に過ぎないということである。
いかにもミーハー学生を惹き付ければいいだけの講演会で、本当に若者がビジネスを展開するためのリソースではないことがよくわかる。
台湾人デザイナーにしても、大名の現状など細かく分析しているわけではないだろう。アジア諸国との交流の中で、イメージ先行で福岡大名というエリアに目を向けたところで、ビジネスが成功することなどありえないのである。
作っている商品を見ても、すでに日本のでは見向きもされないテイストだ。正直、ダサい。この程度のレベルが大名、いや日本のショップで売れると思っているのなら、あまりに日本のファッションマーケットをバカにしていると言わざるを得ない。
講演のテーマはもちろんのことだが、商品そのものでさえ、業界人が飛びつくようなものではない。まず、バイヤーはつけるのに二の足を踏むだろう。
仮に仕入れたにしても、日本では若者自体が減っていて、買い物にも慎重になる中で、かつての裏原ブームのようにバカ売れすることはありない。
まあ、スタイリング誌の編集者が台湾版を発行したことで、今回のダブルキャストが実現したのはわかる。しかし、雑誌メディアが一介の台湾人デザイナーと交流したところで、大名にファッションエリアとしてのポテンシャルが復活することなどありない。
企画委員長を中心に無理やりこじつけたチンケなテーマなんて、福岡大名のをフォーカスするもの、つまりはファッションムーブメント足り得ないのである。
現大名雙葉小学校の裏手、編集者のかつての事務所の階下隣が衣料品ではなく食品業態であること。週末には、料理音痴の女子たちが俄人気のスウィーツ目当てに長蛇の列を作ることetc.
それもドーナツ、フレンチトーストと次々に代わるところを見れば、わかりそうなものである。いや、事務所を薬院に移した時点で、わかっているはずである。
そもそも、利害関係者がただ自分たちの身入りになればと考える程度の事業において、秀逸で卓越した企画力が発揮されるとは思えない。高島福岡市長以上に、企画運営委員長の脳みそも限界値に達したようである。おっと、それは最初からだろうが。