HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

春色冬素材の採用は難しいのか。

2015-01-21 06:16:35 | Weblog
 2015年に入って20日が過ぎた。初売りは例年になく好評だったようだ。伊勢丹が後ろ倒しにしたセールも、他店との棲み分けが定着しつつあり、前半・後半戦の様相を呈している。間延びする在庫処分期間にメリハリがつき始めた点では、評価できる。

 ただ、問題は中身だ。店頭には8月下旬から秋物が並び、10月中旬には冬物が投入される。だから、秋物は11月中旬、冬物は12月上旬までにプロパー消化しないと、マークダウンやセール待ちの状態になってしまう。

 専門店チェーンなどは、少しでも在庫処分、現金化を狙って、期中に値下げするのはザラだ。だから、というわけでもないだろうが、商品は当たり外れがないように年間を通じで引っ張れるものに偏っている。特に色、素材でそれは顕著だと感じる。

 もともと、色のバリエーションが少ないメンズでは、売れ筋は紺、グレー、ベージュ、黒が主流。だが、某有名通販サイトで色をチェックすると、色合いがブランド、デザインの違いだけで、かなり被っているのには驚く。

 撮影スタッフがあえてライティングで色のトーンを合わせているわけでもないだろう。また、WebデザイナーがPhotoshopで加工しているとも思えない。相当のアイテム数をアップしているはずだから、それほどの余裕はないはずだ。

 とすれば、元々かなりの色は被っているということ。生地の染めや色出しの段階で、それほどバリエーションはないと言えるわけだ。となれば、素材もコットンギャバなどは、メーカーにとっては春、秋、冬で共通する素材となっているのではないだろうか。

 年が明けると、日差しは日に日に春めいてくる。本来なら、秋冬物のダークな色合いをセールにかける。そして、明るめの色合いで冬素材の商品をプロパーで売るべきだが、そうはなっていない。年中、引っ張れるベージュのような季節共通素材もセール対象だ。

 年が明けても、北海道や東北、北陸はまだまだ寒いので、冬素材は重宝するだろう。ただ、万国共通のファッション感度を考えると、プロパー販売には全国共通で「春色冬素材」も必要ではないか。いわゆるブライトカラー、ペールトーンである。

 特に色や素材のバリエーションがないメンズファッションこそ、色や素材でもう少しシーズンアイテムにメリハリを付けてもいいのではないかと思う。

 ユニクロのようなグローバルSPAでは、1アイテムあたりの調達量がハンパじゃないから、こと色のバリエーションは広い。ウルトラライトダウンが典型的だ。

 ただ、トップスなら明るい色目のニットにレザーなどを重ね着すればいいが、1枚もののボトムは素材がどうしても狭まっているから、春色がないと着こなしは難しい。

 カラーバリエーションが広いユニクロでさえ、タウンに穿けるボトムでは冬でもデニム、 チノ、コーデュロイ、ウール(混紡含む)、そして裏側に異素材をボンディングした暖パンぐらいしかない。冬物はダークカラーが主流である。

 数年前、ちょい悪オヤジ向けにクラシコイタリアが浸透した。この時は、ピンクやオレンジ、赤などのパンツを穿くオヤジたちが目立った。でも、それはギャバやデニムをカラーで染めたもので、夏場向けの素材感だった。

 温暖なローマやナポリのイメージで、寒い日本の冬向けには提案するブライトカラーは、白くらいで雑誌を見ても中々提案できていないように感じた。イタリアオヤジを訴えても、日本の雑誌である以上、国内で手に入るアイテムでは限界があるからだろう。

 確かに素材は気候や気温に左右されるし、クリーニングとの関係もある。だから、広げるのは限界があるのかもしれない。

 でも、初売り、冬のセールでさえ、秋から引っ張っるダーク系はもちろん、ベージュ系も在庫がかなり残っているのを考えると、1月に売るボトムでは新素材、新色を投入しない限り、プロパーではかなり売りづらいのではないだろうか。

 そこで具体的にどんな色や素材が理想か。薄手のウールではどうしてもビジネスライクになってしまう。フラノや縮絨も、せいぜいライトグレーがいいところで、春のトーンとは言い難い。

 定番素材のコーデュロイは、百貨店の平場などでベージュや生成りを見かけなくはない。でも、高価なもので数年穿くとなると、膝や尻のテカリが気になるし、汚れ目やケアの問題もある。

 プレーンな組織でオン、オフ兼用で、しかもケアし易いボトム向けの春色冬素材。色はオフホワイト、生成り、ライトなベージュ、グリーン、ブルーといったブライト、ペールトーン。それらにスミ10%程度のグレイッシュトーンなら汚れ目もつかない。

 ベージュと言っても、秋冬から市場に出回っているのは、ほとんど「キャメル」で定番・量販の域を抜け出せていないカラーだ。セールで大量に在庫を残しているのは、新春に穿きこなす新しさは感じ得ないからだと思う。

 欧州のアパレルではニットでもウール55%、コットン45%程度のカシミアタッチで肌触りがいい素材がある。こうした混紡率でボトム向けの素材はどうだろうか。

 また、コットン98%の程度なら肉厚のピーチスキン、モール、スエードなど起毛素材が防寒にも効果的だし、柔らかくて肌触りもいい。南国九州では3月上旬まで、雪国の北海道や東北、北陸なら4月いっぱいは、引っ張れるかもしれない。

 厚手の起毛コットンなら自宅で洗濯もできるからケアも楽だし、そこそこの耐用年数もある。価格がSPAより高めでもコストパフォーマンス良いはずだ。

 明るい日差しが差す1月に季節感やファッション感度を無視したアイテムは、 いくらセールで安くなったからと言っても、そうそう手を出すお客がいるとは思えない。

 極論すれば、春色冬素材でお客を掘り起こすことが1月、2月のプロパー販売のカギを握ると思う。メンズ=ベーシックカラー、定番素材という固定観念から脱却することがそろそろ必要だと思う。

 また、アダルトなればなるほど、着回しを考えて質感が高い天然の素材感を求める。ノームコアまで落としてしまうとファッションに無頓着なおじさんに見られてしまう。だから、生地感でコンテンポラリーくらいのテイストや感度は維持したい。

 セレクトショップのような業態で、もし高額品を投入できるなら、ブライトカラーの春レザーやペールトーンのスプリングコートなどを加えると、粋なメンズスタイリングが提案できるし、客単価も上げられるはずである。マッキントッシュ頼みでは少し寂しい。

 今年はプレーンなデザインで、いかに色と素材でトレンドや質感を出すか。これに付いて考え、形にしていこうと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする