福岡市の「カワイイ区」に関する一連の騒動は、篠田麻里子の区長退任で収束したかにみえる。しかし、実際には事業計画の段階からいろんな業者の思惑が渦巻いており、事業発注でも不透明な図式が生まれている。
まず、事業の請負先が篠田の事務所から代理店の電通と指定されたこと。しかも福岡市側が設計した事業見積もりは987万円なのに対し、電通が提出した見積りも同じ987万円。つまり市は電通の“言い値”で契約したことになる。
しかも、昨年8月29日に東京都内で行なわれたカワイイ区の辞令交付式は、すべて電通が作ったシナリオ通りに行われていた。これはどう考えてもおかしなことである。
それだけではない。カワイイ区に絡む市役所1階改装工事、その継続を狙って実施された都市認知度調査の両業者の選定に関わったA氏という市顧問にも疑惑の目が向けられている。
同氏は高島宗一郎市長の友人で、自らも広告代理店業務を主力とする会社の代表を務める。元は地元のフリーペーパー「アイステーション」の編集者で、筆者も面識がある。
同社の取材で本人にインタビューした印象では、 企業ビジネスなど突っ込んだ内容にはあまり詳しく無かったが、なぜか行政に入り込む手腕はありそうな気がした。一介のタウン誌編集者なのに「アジアへの情報発信事業」で、福岡県の仕事をしているとサラリと言ってのけたからだ。
このA氏が関わった都市認知度調査はインターネットを利用したもので、サンプル抽出は首都圏、福岡市、九州圏でそれぞれ500の計1,500に過ぎない。だが、その調査費用は約600万円にも及んでいる。専門業者からはノウハウさえあれば、数十万円で済むとの声が上がるほどだ。
しかも1月31日に行われた九州経済調査協会のセミナーで、同氏は「じつは、仮説を、カワイイ区を作る時に、本当は意外と福岡って、誰もあんまり知らないんじゃないかなと―」と語っていることからして、カワイイ区を進めるために調査結果という結論を用意したのではないかというふしがある。
さらに昨年10月、市が発注した人工島の「アイランドシティのPR業務委託」では、その公募に応じた業者の選定でも、A氏の暗躍ぶりが露呈する。
公募には代理店など8社が参加し、プレゼンテーションの結果は3位以下はバラけているのに、1位と2位には4人の選考委員が同等に高い評価を与え、順位も同じになっている。
アイランドシティ事業の所管は港湾局なのに、上記の業務委託はなぜか市長室直轄の広報戦略室の予算で、業者選定も同広報室が主導権を掌握。選考委員4名のうちの一人がA氏であり、プレゼン選考の点数が書き換えられているのが分かっている。
通常、こうした事業コンペでは代理店などが企画を立案するが、実際に制作する媒体(ポスターやチラシ、Webサイト、イベント等々)のカンプやたたき台は、代理店が下請けのデザイン会社やクリエーターなどに外注する。
もし、A氏のような外部の人間がプレゼン選考に参加するなら、制作事情に精通した上で企画内容やクリエイティブワークを精査して、一番できのいいものを選べる能力が求められる。一介の編集者あがりのA氏にその適格があるとは、とても思えないのである。
見方を変えれば、自分は何も知らないから客観的に選考できるとの言い訳も立つだろう。行政(発注側)と代理店(受注側)の構図だけを見ればそうかもしれないが、どっこいA氏の場合はそうとも言えないのである。
なぜなら、A氏が経営する会社の法人登記には広告代理業や出版編集、マーケティングの他にアパレル製品の企画、販売、イベントの企画・運営も入っている。代理店は自社で制作・実施はしないから、外部の業者に発注するし、アパレルについては企画会社や通販業者、ファッションショーの関連業者と関わりがあるということになる。
筆者がA氏に関わる疑惑が出てすぐメールを送ったところ、A氏は「コンペに参加した代理店はみな初めて知った」と、業者との関係をきっぱり否定した。それは事実としてもその下請けであるデザイン会社やクリエーターとA氏が懇意にしているのは、筆者も十分に知るところだ。
つまり、A氏からこうした下請け業者を通じて代理店との事前接触があったり、そこで評価方法や予算についての情報が漏れ伝わったのではないかとの疑念は、拭えないのである。
福岡市は高島市長が就任してから、ファッションの振興に力を入れている。カワイイ区も当初はファッション事業と位置づけられようとしたくらいだ。
先日、開催された福岡アジアコレクション(FACo)は、福岡県と福岡商工会議所による福岡アジアファッション拠点推進会議の事業で、それを含む一連事業には2年前まで年間2,000万円が拠出されていた。それをトータルプロデューサーのRKB毎日放送が運用していたのである。
しかし、その拠出が終わって以降も、RKBには県はもとより市からもFACo他の事業に資金が流れている。また、3月から実施されている「ファッションウィーク福岡」(F.W.F)にも、県の他、市からも補助金が出されている。これほど公金によるファッション事業が多いのだから、利権に群がる輩がいるのは少しも不思議ではない。
また、F.W.Fにはファッション拠点推進会議の企画運営委員長を務める、大村ファッション専門学校の校長Y氏が関わっており、Y氏がA氏に接近していたのは筆者もよく知るところだ。
A氏の会社がアパレル製品の企画、販売、イベントの企画・運営に携わることを考えると、ファッション専門学校が近づくのは当然のこと。まして市の顧問と推進会議の企画運営委員長との間柄なら、別のファッション事業を画策してもおかしくない。
もっとも、少子化で入学者が減っているファッション専門学校としては、学生確保のためにあの手この手を使うのは想像に難くない。現にこのY氏は企画運営委員長という立場で、推進会議の各事業を学生確保、在校生の学習の場に利用している。まさに私物化である。
これまで市が発注する事業は、それぞれ単独のものと思われていた。しかし、A氏の暗躍により一つの腐敗構図ととらえられなくもない。A氏についてはすでに司直の手が伸びているとの噂がある。とすれば、ファッション関連事業に関わるすべての人間に不正や癒着の疑いがあるわけで、一大疑獄事件に発展しそうな予感すらある。
ファッション事業が地場ファッション業界のためでなく、全く門外漢の利権と化している。それを永年業界で働いてきた人間として見過ごすわけにはいかない。事件化を含めて事の成り行きをじっくり見つめ、真相を究明していくことにする。
長々と問題点を指摘したところで、「読むだけで疲れる」というお方には、当コラムにコメントしたくば、知的体力をつけておくことをお勧めしたい。
まず、事業の請負先が篠田の事務所から代理店の電通と指定されたこと。しかも福岡市側が設計した事業見積もりは987万円なのに対し、電通が提出した見積りも同じ987万円。つまり市は電通の“言い値”で契約したことになる。
しかも、昨年8月29日に東京都内で行なわれたカワイイ区の辞令交付式は、すべて電通が作ったシナリオ通りに行われていた。これはどう考えてもおかしなことである。
それだけではない。カワイイ区に絡む市役所1階改装工事、その継続を狙って実施された都市認知度調査の両業者の選定に関わったA氏という市顧問にも疑惑の目が向けられている。
同氏は高島宗一郎市長の友人で、自らも広告代理店業務を主力とする会社の代表を務める。元は地元のフリーペーパー「アイステーション」の編集者で、筆者も面識がある。
同社の取材で本人にインタビューした印象では、 企業ビジネスなど突っ込んだ内容にはあまり詳しく無かったが、なぜか行政に入り込む手腕はありそうな気がした。一介のタウン誌編集者なのに「アジアへの情報発信事業」で、福岡県の仕事をしているとサラリと言ってのけたからだ。
このA氏が関わった都市認知度調査はインターネットを利用したもので、サンプル抽出は首都圏、福岡市、九州圏でそれぞれ500の計1,500に過ぎない。だが、その調査費用は約600万円にも及んでいる。専門業者からはノウハウさえあれば、数十万円で済むとの声が上がるほどだ。
しかも1月31日に行われた九州経済調査協会のセミナーで、同氏は「じつは、仮説を、カワイイ区を作る時に、本当は意外と福岡って、誰もあんまり知らないんじゃないかなと―」と語っていることからして、カワイイ区を進めるために調査結果という結論を用意したのではないかというふしがある。
さらに昨年10月、市が発注した人工島の「アイランドシティのPR業務委託」では、その公募に応じた業者の選定でも、A氏の暗躍ぶりが露呈する。
公募には代理店など8社が参加し、プレゼンテーションの結果は3位以下はバラけているのに、1位と2位には4人の選考委員が同等に高い評価を与え、順位も同じになっている。
アイランドシティ事業の所管は港湾局なのに、上記の業務委託はなぜか市長室直轄の広報戦略室の予算で、業者選定も同広報室が主導権を掌握。選考委員4名のうちの一人がA氏であり、プレゼン選考の点数が書き換えられているのが分かっている。
通常、こうした事業コンペでは代理店などが企画を立案するが、実際に制作する媒体(ポスターやチラシ、Webサイト、イベント等々)のカンプやたたき台は、代理店が下請けのデザイン会社やクリエーターなどに外注する。
もし、A氏のような外部の人間がプレゼン選考に参加するなら、制作事情に精通した上で企画内容やクリエイティブワークを精査して、一番できのいいものを選べる能力が求められる。一介の編集者あがりのA氏にその適格があるとは、とても思えないのである。
見方を変えれば、自分は何も知らないから客観的に選考できるとの言い訳も立つだろう。行政(発注側)と代理店(受注側)の構図だけを見ればそうかもしれないが、どっこいA氏の場合はそうとも言えないのである。
なぜなら、A氏が経営する会社の法人登記には広告代理業や出版編集、マーケティングの他にアパレル製品の企画、販売、イベントの企画・運営も入っている。代理店は自社で制作・実施はしないから、外部の業者に発注するし、アパレルについては企画会社や通販業者、ファッションショーの関連業者と関わりがあるということになる。
筆者がA氏に関わる疑惑が出てすぐメールを送ったところ、A氏は「コンペに参加した代理店はみな初めて知った」と、業者との関係をきっぱり否定した。それは事実としてもその下請けであるデザイン会社やクリエーターとA氏が懇意にしているのは、筆者も十分に知るところだ。
つまり、A氏からこうした下請け業者を通じて代理店との事前接触があったり、そこで評価方法や予算についての情報が漏れ伝わったのではないかとの疑念は、拭えないのである。
福岡市は高島市長が就任してから、ファッションの振興に力を入れている。カワイイ区も当初はファッション事業と位置づけられようとしたくらいだ。
先日、開催された福岡アジアコレクション(FACo)は、福岡県と福岡商工会議所による福岡アジアファッション拠点推進会議の事業で、それを含む一連事業には2年前まで年間2,000万円が拠出されていた。それをトータルプロデューサーのRKB毎日放送が運用していたのである。
しかし、その拠出が終わって以降も、RKBには県はもとより市からもFACo他の事業に資金が流れている。また、3月から実施されている「ファッションウィーク福岡」(F.W.F)にも、県の他、市からも補助金が出されている。これほど公金によるファッション事業が多いのだから、利権に群がる輩がいるのは少しも不思議ではない。
また、F.W.Fにはファッション拠点推進会議の企画運営委員長を務める、大村ファッション専門学校の校長Y氏が関わっており、Y氏がA氏に接近していたのは筆者もよく知るところだ。
A氏の会社がアパレル製品の企画、販売、イベントの企画・運営に携わることを考えると、ファッション専門学校が近づくのは当然のこと。まして市の顧問と推進会議の企画運営委員長との間柄なら、別のファッション事業を画策してもおかしくない。
もっとも、少子化で入学者が減っているファッション専門学校としては、学生確保のためにあの手この手を使うのは想像に難くない。現にこのY氏は企画運営委員長という立場で、推進会議の各事業を学生確保、在校生の学習の場に利用している。まさに私物化である。
これまで市が発注する事業は、それぞれ単独のものと思われていた。しかし、A氏の暗躍により一つの腐敗構図ととらえられなくもない。A氏についてはすでに司直の手が伸びているとの噂がある。とすれば、ファッション関連事業に関わるすべての人間に不正や癒着の疑いがあるわけで、一大疑獄事件に発展しそうな予感すらある。
ファッション事業が地場ファッション業界のためでなく、全く門外漢の利権と化している。それを永年業界で働いてきた人間として見過ごすわけにはいかない。事件化を含めて事の成り行きをじっくり見つめ、真相を究明していくことにする。
長々と問題点を指摘したところで、「読むだけで疲れる」というお方には、当コラムにコメントしたくば、知的体力をつけておくことをお勧めしたい。