HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

今度は広告代理店の出来レースか。

2012-01-11 13:39:46 | Weblog
 松の内も過ぎ、初売りセールも一段落。ただ、まだまだ梅春ものの動きは鈍い。店頭の状況に反してこれから活発化するのが春夏の「ファッションイベント」である。東京ガールズコレクションは3月3日、神戸コレクションは同10日、福岡アジアコレクションは同25日に、それぞれ開催される。
 ただ、ここで気になるのが次年度の企画内容や、行政が支援する場合の資金拠出先がどこになるか、である。現在、東京ガールズコレクションはTGC実行委員会が主催し、企画制作はF1メディア。神戸コレクションは毎日放送が主催し、企画制作はアイグリッツ。福岡アジアコレクションも同系列のRKB毎日放送が主催で、企画制作は神戸コレクションと同じ業者だ。行政の支援金はともにこれらの業者に流れている。

 神戸コレクションや福岡アジアコレクションは、完全にローカル放送局の事業と化した感があるが、行政が公金を拠出する以上、その利権をいつまでも手中に収められるとは限らない。
 特に福岡アジアコレクションは、08年に福岡アジアファッション拠点推進会議が事業をスタートした時、その中心で福岡県とともに事業資金の大半を出した「福岡商工会議所」は、その資金援助について3年限りという条件をつけていた。つまりこの3月末で切れるのである。当然、平成24年度からの事業は、福岡県や福岡市頼みの事業予算となる可能性があり、業者選定も「ガラガラポン」されることが予測される。

 では、24年度は本当に新たな業者が選定されるのか。昨年くらいから地元ファッション業界でまことしやかに語られているのが、大手広告代理店の「D社」にすでに事業企画が発注されているとの噂である。
 これまで事業を担ってきたRKB毎日放送は、 トータルプロデューサーという条件付きでありながら、実行した企画はルーチンなショーイベントと初年度に制作したテレビ番組、トークショーくらい。
 コンペの要件だったデザイナー発掘のコンテストや情報発信サイトの企画制作はそっち抜けで、大半の資金をショーイベントに投下しただけ。しかもショーの企画制作さえ神戸コレクションと同じ業者に丸投げしていた。「ローカル放送局の企画力なんてその程度」を露呈した3年間だったのである。

 そうした反省からではないだろうが、今度は旧態依然とした「代理店発注」に後戻りするのか。08年6月に事業企画がコンペで募集された時、推進会議の説明会には相当数の業者が詰めかけていたが、プレゼンにこぎ着けたのは数社のみ。ならば、今度も企画コンペ=競争入札にしてもいいのではないか。
 D社とて広告代理店としてメディアを支配する能力には長けているが、ファッション業界に精通しているわけではない。 ショーイベントは続けるとしても、まずは事業告知として15秒のテレビスポットや新聞広告の15段、下請けのグラフィックデザイン会社で制作するチラシやポスターなどは常套企画だろう。 
 ファッション業界とは全く関係ない部分に大半の資金が費やされるのは、想像に難くないのである。

 1月23日には、福岡アジアファッション拠点推進会議の「企画運営委員会」が開催され、その後、記者発表も予定されている。しかし、「毎回、議題は新年度の事業についてだが、企画内容はすでに一部の委員で決められている。その報告と事後承認がされるに過ぎない」と、ある企画運営委員は語る。
 もし、噂どおりにD社に発注されているのなら、企画運営委員会でもその報告がなされるはず。発注理由も東京五輪誘致のように「事業の性格から競争入札になじまない」なんてごまかされるのかもしれない。
 このコラムでは過去、こうしたファッション事業の問題点は多々取り上げてきた。それについてはブログユーザーから数々の賛同をいただく一方で、「批判は弱虫の証拠」なんてコメントされた方もいらっしゃった。ただ、筆者も単なる批判で終わるつもりはこれっぽっちもない。
 奇しくも先日の成人式の挨拶で、高島宗一郎福岡市長は若者に対し「批判するなら、代替案を出せ」と語っていたが、まさに望むところである。こちらもファッション業界で仕事をしている上で、事業アイデアはいくらでもあるし、企画提案は大いに結構なことである。いつでも応じる覚悟はある。
 しかし、実態は推進会議の一部の人間が密室で、「自分たちの利害と思惑だけですべてを決定」し、喧々囂々の議論や企画提案の機会なんて一切設けられていない。これこそ問題ではないのか。
 現時点ではD社への発注は噂の域を出ないが、今年こそ、ファッション業界の産業振興や明日の業界を担う人材の育成という推進会議本来の目的を達成すべく、公正でオープンな事業と公平な業者選定が行なわれることに期待したい。それは地元ファッション業界の切なる願いでもあるのだ。
 
コメント
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