今年も8月2日(火)に「福岡アジアファッションフォーラム」が開催される。2009年の初回から数えて3回目。過去2回は6月開催で、今年は1ヶ月以上遅れている。講演ゲストは山本寛斎氏だが、総会、取り組み発表などはそのまま。この時期までずれ込んだ理由はと聞かれたら、「東日本大震災の影響で」など、何とでも言い訳できる。
思えば、初回は推進会議側がファッション音痴のTVプロデューサーに企画を任せきりにした。そのため、博多大丸とのバーターでJ.フロントリテイリングの窓際課長の講演なんてブッキングしたものだから、フォーラムは中途半端になってしまった。麻生知事や吉田市長(ともに当時)が来賓挨拶するのに、観客はまばら。地元メディアの関心もそれほど高くなかった。
資金を出した県や市のメンツは丸つぶれ、推進会議側は相当ばつが悪かったようだ。その反省から、昨年は講演ゲストをタレントのIKKOにした。母校であるフクビ(福岡美容専門学校)関係者、同学校の創立元で推進会議のメンバーでもあるFUBA(福岡美容生活衛生同業組合)に動員をかければ、一応、ホテルオークラの大広間が埋まるのは想像できる。
ふたを開けると、推進会議側の思惑通り、観客動員は図られた。おまけに図に乗ったIKKOがプロデューサーを名指して次ぎの「営業」依頼までする始末。しかし、推進会議設立の趣旨や目的を知らない組合員は、IKKOの講演が終わるとそそくさと会場を後にした。
行政や推進会議側にとっては一応、動員さえ図られれば数字の面では「成功」という意識だろう。 本来なら公金を使ったファッション事業を行なっているのだから、その取り組み状況や結果にいちばん時間を費やさなければならないのは明白である。 でなければ、地元ファッション業界にとっては、何の意味もない。
翻って今年はどうか。プログラムを見ると、総会、取り組み発表は30分程度、後は寛斎氏の講演、そして懇親会と過去2回と大差無し。火曜日に開催するのは、美容関係者で休日が多いからか。このあたりも昨年と変わらぬ発想だ。
ただ、状況はこれまでとは違う。事業期間終了直前の震災発生もさることながら、博多シティの開業などもあった。自粛ムードの中で、FACo(福岡アジアコレクション)は、「震災を考える機会にしたい」と強行された。「自粛ばかりでは日本が元気にならない」「景気がますます悪くなる」「福岡のイベント会社が倒産した」などの風潮やニュースの中で、推進会議や主催者はFACo開催の「大義」は揃ったとでも思ったのか。だとすると、思い上がりも甚だしいし、「震災を考える機会にしたい」なんてのは、「詭弁」に過ぎない。
公金を使う事業は年度内に執行しないと、中止しなければならない。国からの補助が今年で打ち切られる「東京コレクション」は、大震災をきっかけに中止され、 FACoを企画・運営するイベント会社、アイグリッツによるプロデュースの「神戸コレクション・東京」も開催を取りやめた。
東コレは国の公金を使っているため、年度内に開催されなければならず、中止は当然のこと。しかし、神戸コレは違う。アイグリッツにとって土壇場の中止は、莫大な損出となった。だから、FACoまで中止にすると、イベント企業としての屋台骨をゆるがしかねない状況に陥る。「ぜひとも、やってほしかった」のだ。
FACoをプロデュースするRKBも同じだろう。ただでさえ、スポットCM収入という収益の柱が弱っている。この上、事業収入まで減ってしまえば、ローカル放送局としての存続も危くなる。推進会議に泣きついたのは、火を見るより明らかだ。
スポンサーについた「博多阪急」も開業景気に勢いを付けるには、プロモーションは不可欠だった。それぞれが自社の思惑だけで、FACo実施を主張したのは容易に想像できる。それが詭弁だという所以だ。
本来ならこうした経緯の他にインターシップなどに真剣に取り組む企業や学校、学生などの事業についても詳しく説明すべきだ。また、メディア側も事業のあり方を突っ込んで取材し、批判家精神をもって報道すべきなのだ。
それとも、イオン九州「FACo×ルート80」のプレスリリースにあるように繊研新聞はじめ、地元メディア全社は推進会議に囲い込まれてしまったのか。あわよくばRKBの後に事業をもらおうという魂胆なのか。まさか、松本龍元震災復興大臣いわくのフレーズ、「書いた社は終わりです」を意識したわけでもないだろう。
ともあれ、今年もこうした議論の「場」も「時間」も設けられず、企画運営委員長は「FACoはファッション都市・福岡を目指す『手段』にすぎません」との常套句をあげるつもりか。まして「来年はH&Mやフォーエバー21の参加を検討している」とまで言い出しはしないだろうか。そうならば、すでにファストファッションの時代は終焉を迎えている中で、RKBのプロデューサー以上にファッション音痴の話しである。
他方、高島新市長の挨拶は目新しいかもしれないが、原稿は担当者が用意したものを口述するだけだし、地元ファッション業界の現状なんて把握できているはずもない。まあ、アナウンサー時代も報道記者やアンカーマンの原稿を読んでいたのだから、大差はないだろうが。
ただ、震災義援金については、FACOスポンサーについたHRKなどの大口のみの紹介で良いわけはない。 FACo会場でいくら集まったのかも、恥ずかしがらずに堂々と公開すればいい。義援金は額の多寡ではないはずである。