映画「ビルド・ア・ガール」の原作小説の著者キャトリン・モランの別の本「女になる方法」が北村紗衣訳で何かで聞いたことがあったのでそちらも読んでみました。
映画とこの本はどちらも自伝的なのでかぶる内容もあり、先にビジュアルで見たので本も読みやすくなり助かりました。
乱暴に一言で言うとフェミニストのガイド本で、タイトル「女になる方法」もボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない。女になるのだ。」の言い換えでこの言葉も出てきます。
13歳の誕生日の思い出から始まるのですが、13歳とは、つまりティーンの始まり。日本語だと10代と訳される英語のteenagerには、11歳と12歳は含まれてないのです。eleven, twelveでthirteenとかforeteenとかteenが付いてないし、まだ子供なのです。
で、ティーンになった途端に女の子はセックスの対象としての視線にさらされ魅力的であることを期待される、ということに違和感と反逆を唱えるところから始まります。
この作者の特徴でかつ売れてる(ジャーナリストで作家でテレビ司会者で『タイムズ』のコラムニストという輝かしいキャリア)ポイントは、他の人には言い難いオープンな下ネタをあの手この手で表現し、その中には自分にも思い当たることもあり、それに音楽ジャーナリストならではのミュージシャンとかセレブネタが溢れてることだと思われます。
フェミニズムというテーマからして性の話題は避けては通れないとはいえ、途中あまりにもしつこく長く下ネタが登場するので閉口し掛かりました。しかし、著者がアンダークラス、訳者あとがきによると労働者階級より下の福祉で生きてるクラス出身(例えば、自分で働いてお金を得るまで家が貧乏すぎてパンツはママのお下がりデカパンだったという!)ということがある時ストンと腑に落ちました。
そして読んでて、イギリス(西洋)と日本(アジア)の文化の差を最初はより感じたのは、女の子のカースト上位タイプがセクシー系なイギリスに対し、一世代前の日本では未だ優等生タイプでセクシー系はヤンキー姉ちゃんしかいなかったので、不良グループにでも入らない限り13歳とか14歳とか15歳とか16歳でいつもセックスする時の心配なんてしなくて良かったから思考も違うと思いました。
とはいえ、納得できるところも随所にあり、笑えて、うなずけました。
例えば、「男性フェミニストは進化の最も素晴らしい最終形態」とか!
ボヘミアン・ラプソディーも録音された「ロック・フィールドでフレディになったつもりではしゃぐ」とか!
「女は結婚式の日1日だけ主役として生涯最良の日を過ごす。しかし全ての結婚式は、奇行の絶頂期だったマイケル・ジャクソンみたいに振舞うことに行き着きます。」!
そして最も共感できた部分は、あとがきの「わたしはプリンセスになりたくなかった。アーティスト(ミュージシャン)のミューズになりたかった。」でした。
・・・わたしもそう思ってた!!!なれなかったけど!それを読んで、わたしがティーンだった頃自分でも気づいてなかった願望に今気づいてしまいました。ミュージシャンと付き合いたかった。
ティーンをちょっと過ぎて22〜23歳の頃、音楽系の男子も含めて数人でクラブに遊びに行き仲良しグループができて、その中に密かに好きな男子ができました。私は彼の注意を引きたくて、UKインディーズに凝ってた当時の持てる知識をペラペラしゃべりまくって得意になり彼に尊敬されたかもしれないと思っていたら、女子だけの時はよくしゃべるけどその時寡黙だった女子といつの間にか付き合っていたのです。
私は密かにUKロックの知識では女子にしてはなかなかなんじゃと思っていたのに、猫をかぶっていたあの人と〜?!その後も、音楽系のイケてる男子と付き合ってる女の子って決して派手ではなくても小綺麗でスッキリしてて、そして喋らない!という共通項を発見してしまい、いったい彼女たちはなぜ私が得られないものを得ているのか?!どんなマジックがあるのかと落ち込みました。
この本は「じゃあ自分も喋らないでおとなしい女子になろう」なんて間違った方向に行かないためにも読んでおくといいんじゃないかと思いました。