4限目、僕と麻理は、いつものように大講義室の後方の席に座った。前期テストが近いこともあり、普段より席が埋まっている。
「あの、麻理。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「えっ、何?」
「さっき一緒に話してた男の子って誰?私、目が悪いからよく見えなかったんだけど」
「あの人?ああ、美由も知ってると思うけど、同じサークルの加藤君」
「やっぱりそうなんだ」
「私たち、つき合い始めるつもりなんだ」
「えっ」
「いろいろな人と合コンもしたけど、結局、手近なところに収まりそうなの」
「本当に加藤君とつき合うつもりなの?」
「嘘ついたって仕方ないでしょ。美由は応援してくれるよね」
終始、穏やかな表情だった麻理の瞳に、一瞬、不安が浮かんだ。僕の動揺に気付いたのかもしれない。
「勿論だよ。応援する。私は麻理の味方だから」
「ああ、よかった。私が決める事だけど、美由には賛成してもらいたかったから」
「だって、反対する理由なんて見つからないし」
「そうだよね。美由はこれからも変わらず、私の大切な友達でいてよね」
「うん、わかった」
僕は蔭を隠すように、努めて声を張って答えた。浮かび上がる絶望を、とりあえず押さえ付けなければならなかった。女にもなれない。男でもない。もはや、どこにも居場所はなかった。
「あの、麻理。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「えっ、何?」
「さっき一緒に話してた男の子って誰?私、目が悪いからよく見えなかったんだけど」
「あの人?ああ、美由も知ってると思うけど、同じサークルの加藤君」
「やっぱりそうなんだ」
「私たち、つき合い始めるつもりなんだ」
「えっ」
「いろいろな人と合コンもしたけど、結局、手近なところに収まりそうなの」
「本当に加藤君とつき合うつもりなの?」
「嘘ついたって仕方ないでしょ。美由は応援してくれるよね」
終始、穏やかな表情だった麻理の瞳に、一瞬、不安が浮かんだ。僕の動揺に気付いたのかもしれない。
「勿論だよ。応援する。私は麻理の味方だから」
「ああ、よかった。私が決める事だけど、美由には賛成してもらいたかったから」
「だって、反対する理由なんて見つからないし」
「そうだよね。美由はこれからも変わらず、私の大切な友達でいてよね」
「うん、わかった」
僕は蔭を隠すように、努めて声を張って答えた。浮かび上がる絶望を、とりあえず押さえ付けなければならなかった。女にもなれない。男でもない。もはや、どこにも居場所はなかった。