ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

羨ましき人生

2013-05-18 16:14:37 | Weblog
人は心が折れる日に向かって生きている
それは順風満帆な人生ほど丁寧に

夢や希望や幻想は年を重ねていくたび、小さくなるものだ
子供のうちはスポーツ選手や政治家、大企業の社長
描く未来はどこまでも膨らむ

二十歳になって夢物語を諦めない人間がどれだけいるだろう?
大概は大企業に入ることに目的がシフトしているのだ

30歳で結婚もして、子供もいて、ローンを組んで一戸建て
傍から見れば羨ましい限りだろうな
40で課長、50で部長、こんな大きな会社で俺も大したものだ

早いもので子供も独立し、孫もいる
惜しまれつつ定年退職し
それなりの退職金も受け取った
子供たちのローンの頭金を払ってやり
年金も生活するには十分すぎるくらい貰っている

孫の成長に目を細め
年に数回、夫婦で旅行する
この年になれば、体に多少はガタがくる
毎日、薬は飲んでいるが、年相応だろう

孫も大きくなり、顔を見せなくなった
年寄り二人の生活は心もとないが、子供たちに迷惑はかけたくない
そろそろ夫婦揃って、設備の整った老人ホームにでも入るとするか

施設に入ると、何でも人任せになり
足腰は弱くなるし、物忘れも激しくなる
子供たちはたまに顔を見せてくれるが、忙しいようですぐに帰ってしまう

気がつけば、車椅子なしでは移動できなくなった
傍らには同じく車椅子の老婆
このばあさんが俺の奥さんだったっけ?

大企業の部長で立派な仕事もしてきた
それなのに誰にも感謝されていないような気がするのは何故なんだ?
一体、俺の人生は何だったのか?
社会に貢献してきたはずなのだが、その中身を思い出せない
誰か教えてくれよ、誰か

「畜生」

80過ぎの老人の頬に一筋の涙がつたった

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コメント
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