江戸時代、大ヒットした芝居に、佐賀三十五万石の領主、鍋島家を舞台にした化け猫騒動の話がある。
そのあらすじは、鍋島の家臣、龍造寺又一郎が領主の鍋島丹後守光茂と碁を打った。
形成不利になった時、光茂は、又一郎が便所に立った隙に石を置き替えたが、そんなことに誤魔化される又一郎ではなかった。
言い争いになり、ムキになった光茂は、又一郎の首を刎ねてしまい、死体を井戸に隠した。
又一郎の母は、夜になっても帰って来ない息子を心配したが、何の手掛かりもない。
すると、又一郎が可愛がっていた猫が、又一郎の首をくわえて帰って来る。
すべての事情を察した母親は、その猫に鍋島家への無念の想いをぶつけた後、小刀で喉を突いて自害してしまう。
すると、猫は流れる血をなめているうちに、体が牛の様に大きくなり、又一郎の首をくわえたまま、姿を消したと謂う。
その直後から、光茂のもとでは、奇怪な出来事が相次いだ。光茂が夜桜見物を楽しんでいると、牛ほどもある猫の妖怪に襲われたり、側室のお豊が、池に飛び込んで魚を食べると云う奇行を繰り返す様になった。
やがて、お豊は化け猫の正体を現し、暴れ始める。
そこで、家臣の小森半左衛門が、決死の覚悟で立ち向かって仕とめると、光茂の病気は全快。
不気味な出来事もピタリと止んだと謂う。
それから、光茂は、又一郎の霊を慰め、龍造寺一家に対して目をかける様になったーーーと云うものである。
このストーリーには、基になった史実がある。
元々佐賀の領主だった龍造寺一族は、親戚の鍋島直茂に一旦実権を預け、龍造寺家の跡取り、高房が十五歳になれば、実権を返してもらう約束になっていた。ところが、高房が十五歳になっても政権は戻されない。このままでは実権は返って来ないと焦った高房が、江戸桜田の屋敷で鍋島直茂の子、勝茂に斬りかかったが、失敗。
割腹自殺をする。鍋島の化け猫騒動は、このお家騒動をベースに創作されたものである。
呪い あなたの知らない不気味な世界
悪魔と心霊の大疑問③