菜根譚前集 ４０項

ヒヤシンス

欲路上事、毋楽其便而姑為染指。
一染指便深入万仭。
理路上事、毋憚其難而稍為退歩。
一退歩便遠隔千山。

欲路上の事は、其の便を楽しみて姑くも染指を為すこと母れ。
一たび染指せば、便ち深く万仭に入らん。
理路上の事は、其の難を憚りて、稍かも退歩を為すこと母れ。
一たび退歩せば、便ち遠く千山を隔てん。

「欲望に流されず、道理を守って」
欲望上のことは、そのことが手軽に楽しいからと云って
仮初めにもそれに食指を動かしては行けない。
一度食指を動かしたなら、その味を覚えてしまってそれに溺れ、
遂には深く底知れない欲望の谷に落ち込んでしまうだろう。
これに対して、道理上のことは、そのことが難しいからと云って躊躇い、
ほんの少しでも後（しり）ごみなどをしては行けない。
一度後ごみしてしまうと、遂に道理はたくさんの山々をも隔てる様な遠くに行き、
手が届かなくなってしまうであろう。

◆第２章 織田信長と天下布武 柴田勝家 何故、秀吉に決戦で敗れたの？

【新説】

戦場では「鬼」ながら、政争は大の苦手だった

織田信長は能力主義。

使えない、用済みと判断した人間は目立った落ち度がなくても容赦なく切り捨てるが、
使える人材は背いても１度は許す。
松永久秀がそうであったように、柴田勝家も尾張時代に信長の弟・信勝支持派に属し、
信長に刃を向けたが許され、それからは最後まで忠義を貫いた。
政治的な駆け引きはからきし苦手だが、戦場では遮二無二に突撃をさせたならば、
織田軍団で勝家の右に出る者はなく、「かかれ柴田」の異名を取った。
迷いのない姿勢と行動こそ勝家の真骨頂。そう言っても過言ではなかったはずが、
信長という絶対者がいなくなった途端、勝家は何事によらずブレ始め、
お市の方を妻としてからは、持ち味の切れと厳しさまで影を潜めるようになった。

天正１１（１５８３）年４月、遂に羽柴秀吉との直接対決を迎えるが、
ここで勝家は往年であれば決してすることのない失策を犯す。
甥にして片腕とも頼む佐久間盛政を制御し切れなかったのである。
盛政は秀吉軍の前衛にあたる大岩山砦に奇襲を仕掛け、守将の中川清秀を討ち取った後、
勝家からの撤退命令に従わず、同砦に居座り続けた。
それまで勝家が敷いていた布陣は、戦上手の秀吉をしても隙が見出せなかったが、
佐久間隊が突出したことで大きな綻びが生じた。
こうなっては勝負ありで、勝家は越前北庄（きたのしょう）城まで敗走して、
お市の方と共に自刃するが、女人が夫と最期を共にするのは、戦国時代では極めて異例なことだった。

　　　　　

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「さぬだらに 打ちぬるも 夏の夜の別れを誘ふ ほととぎすかな」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　- お市の方 辞世の句 -

勝家は当時６０歳での初婚だったらしく、年齢の離れた（２６歳差）お市の方をとても大事にし、
三人の娘たちもよく可愛がりました。特に、実の父の記憶がなかったお江が勝家に一番懐いていたそうです。

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★柴田勝家が一人負けとなった清州会議　会議によって明暗を分けた４人の家臣

　信長の死後、天正１０（１５８２）年６月２７日に織田家の継嗣問題及び領地再分配に関する会議が清州城（尾張国）で開かれた。参加したのは柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、池田恒興の織田家の家臣４人。
しかし、光秀の首をとった秀吉に主導権を奪われ、秀吉に有利な決定がなされた。

（暗） 柴田勝家

重臣筆頭として最大の発言権を持っていたが、信長の弔い合戦を主導できず発言力が低下。家臣筆頭の地位も秀吉に奪われた。会議後、秀吉陣営に危機感を覚えた織田信孝・滝川一益と組み、反秀吉陣営を構築。その後、賤ヶ岳（しずがたけ）の戦いで秀吉に敗れる。

（明）羽柴秀吉

秀吉が推した信長の嫡孫で、まだ３歳の三法師が家督を継ぐことに。会議後に秀吉は三法師の傳役の掘秀（もりやく）政と組み、秀吉陣営を形成した。

（明）丹羽長秀

秀吉と勝家が天下を争った賤ヶ岳の戦いでも秀吉に加担。戦いの後、柴田勝家の遺領の越前と若狭及び加賀２郡を与えられた。

（明）池田恒興

賤ヶ岳の戦いには参戦していないが、美濃国内にて１３万石を拝領し大垣城城主。徳川家康・織田信雄との小牧・長久手の戦いでも秀吉方として参戦。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　眠れなくなるほど面白い 戦国武将の話