今年の1月の記事で採り上げさせて頂いた『「嫌消費」世代の研究』の著者、
ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役 松田久一氏の近著。
消費者心理学、精神分析、マーケティング、経済学は言うに及ばず、
自然・社会・人文諸科学を総動員し、
欲望の解釈を試み、「本当のこと」を追求した (本書「終わりにより」)。
「方法論的多元主義、あるいは方法論的価値相対主義にもとづく科学実在論」 (本書251ページ) の立場で書かれた本書だが、決して難解ではなく、すんなりと読めた。
それでも、前著 『「嫌消費」世代の研究』 より、はるかに読み応えがある。
「方法論的多元主義」とは、
1.合理的人間
2.学習人間
3.欲望人間
という3つの人間観・角度から消費する人間を捉えていくこと。
勿論、3つともそれぞれ異なる認識パラダイムを持っている。
その中でも、「3.欲望人間」が最も重要であることが、
「1.合理的人間」「2.学習人間」の考察を通して明らかになってくる。
現代日本消費社会の「壁」を乗り越えるキーワード、
それは「退潮する欲望」。
「欲望」の退潮の背景には、
市民社会制度の歴史的な衰退があり、
それはその歴史環境で生まれた世代の欲望に示される。
「模倣欲望」の衰退だ。
しかし、市民社会制度の「衰退」とは、
長年、我々を支配した旧制度の「衰退」であり、
新たな社会のパラダイムの「生成」あるいは「過渡期」でもあろう。
著者もそのことは重々承知だろう。
そこにチャンスが生まれることも。
僕が個人的に本書を購入した最大の理由は、
岸田秀理論が援用されていること。
「『欲望とは他者の模倣欲望である』という捉え方は、岸田秀、R・ジラール、J・ラカンの共通項である。自我の不安が他者の自我を取り込み安定させたいというのが模倣欲望であり、模倣欲望の欲望対象を欲望する、というのが我々の理論的立場である。したがって、欲望を読むとは、分析対象の模倣欲望を探すことから始まることになる。」(本書236ページより)
20代の頃、岸田理論を熱読した僕だが、
当時は、「マーケティング」になんぞ大した興味はなく、
ただ、(純粋な?)人間解釈への興味から惹き込まれた。
それが、今、こうして松田氏によって、
新たな意味を賦与されることとなった。
そして、今改めて岸田理論を考えてみると、
実にリアリティがあることが実感できる。
あくまで、幼児期からの僕個人の人生史を自己洞察してのことだが。
「依存欲望」と「自己拡大欲望」に関わる“物語”。
本書では、ビールの消費分析を通じ、とても明解な解釈が試みられている。
余談だが、当時(僕が20代の頃)、やはり熱読していた、
竹田青嗣と岸田秀の共通項と立場の違いも整理できた。
竹田青嗣は現象学の人だけど、
今でも僕にとって、ポップ(POP)の定義は、
竹田青嗣の定義を援用している。
広く深い人間洞察の知識・知見をお持ちの著者だが、
それでも最後にこう述べている。
「見えない顧客を見えるようにするには、多元的な人間観と独自の歴史観が必要になる。そして、人間観と歴史観を養うことが『教養』である。企業のなかで専門家が増え、教養が減っていることも重要な問題である。」 (本書244ページより)
「自戒を込めて提案したいのが、売りの最先端の現場で必要とされているのは、あまり役に立たないと思われている教養なのである。人間観と歴史観に裏打ちされた教養のある経営がないと現代の顧客は見えない。」 (同)
至極同感!
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お読み頂き有難うございます。
(↓)クリックの程、宜しくお願い申し上げます。
ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役 松田久一氏の近著。
消費者心理学、精神分析、マーケティング、経済学は言うに及ばず、
自然・社会・人文諸科学を総動員し、
欲望の解釈を試み、「本当のこと」を追求した (本書「終わりにより」)。
「方法論的多元主義、あるいは方法論的価値相対主義にもとづく科学実在論」 (本書251ページ) の立場で書かれた本書だが、決して難解ではなく、すんなりと読めた。
それでも、前著 『「嫌消費」世代の研究』 より、はるかに読み応えがある。
「方法論的多元主義」とは、
1.合理的人間
2.学習人間
3.欲望人間
という3つの人間観・角度から消費する人間を捉えていくこと。
勿論、3つともそれぞれ異なる認識パラダイムを持っている。
その中でも、「3.欲望人間」が最も重要であることが、
「1.合理的人間」「2.学習人間」の考察を通して明らかになってくる。
現代日本消費社会の「壁」を乗り越えるキーワード、
それは「退潮する欲望」。
「欲望」の退潮の背景には、
市民社会制度の歴史的な衰退があり、
それはその歴史環境で生まれた世代の欲望に示される。
「模倣欲望」の衰退だ。
しかし、市民社会制度の「衰退」とは、
長年、我々を支配した旧制度の「衰退」であり、
新たな社会のパラダイムの「生成」あるいは「過渡期」でもあろう。
著者もそのことは重々承知だろう。
そこにチャンスが生まれることも。
僕が個人的に本書を購入した最大の理由は、
岸田秀理論が援用されていること。
「『欲望とは他者の模倣欲望である』という捉え方は、岸田秀、R・ジラール、J・ラカンの共通項である。自我の不安が他者の自我を取り込み安定させたいというのが模倣欲望であり、模倣欲望の欲望対象を欲望する、というのが我々の理論的立場である。したがって、欲望を読むとは、分析対象の模倣欲望を探すことから始まることになる。」(本書236ページより)
20代の頃、岸田理論を熱読した僕だが、
当時は、「マーケティング」になんぞ大した興味はなく、
ただ、(純粋な?)人間解釈への興味から惹き込まれた。
それが、今、こうして松田氏によって、
新たな意味を賦与されることとなった。
そして、今改めて岸田理論を考えてみると、
実にリアリティがあることが実感できる。
あくまで、幼児期からの僕個人の人生史を自己洞察してのことだが。
「依存欲望」と「自己拡大欲望」に関わる“物語”。
本書では、ビールの消費分析を通じ、とても明解な解釈が試みられている。
余談だが、当時(僕が20代の頃)、やはり熱読していた、
竹田青嗣と岸田秀の共通項と立場の違いも整理できた。
竹田青嗣は現象学の人だけど、
今でも僕にとって、ポップ(POP)の定義は、
竹田青嗣の定義を援用している。
広く深い人間洞察の知識・知見をお持ちの著者だが、
それでも最後にこう述べている。
「見えない顧客を見えるようにするには、多元的な人間観と独自の歴史観が必要になる。そして、人間観と歴史観を養うことが『教養』である。企業のなかで専門家が増え、教養が減っていることも重要な問題である。」 (本書244ページより)
「自戒を込めて提案したいのが、売りの最先端の現場で必要とされているのは、あまり役に立たないと思われている教養なのである。人間観と歴史観に裏打ちされた教養のある経営がないと現代の顧客は見えない。」 (同)
至極同感!
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