檍村
よく熟れた稲穂が刈りとられてうづたかく積んである
そしてそれが夜なかまで体温を保つてあたたかく匂ふ
「檍村」は宮崎県の地名。「あおきむら」と読む。
秋の田園の風景だが、嵯峨が実際に「夜なかまで」そこにいて、刈りとられた稲穂の匂いを嗅いでいるわけではない。日のあるうちに、その匂いをかいだ。そして匂いがあまりにも印象的だから、きっと夜も匂っているだろうと想像している。
「保つ」という動詞が使われているが、その匂いを保つのは稲穂ではなく、嵯峨である。だからこそ「体温」ということばもつかわれる。嵯峨は、それをまるで自分の肉体であるかのように感じている。
「実り」はいつでも「あたたかい」。「匂い」はいつでも「豊か」だ。
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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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