星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

コビトカバに乗って

2007-07-16 | ネコが出てこない本
芦屋市立図書館から、「あなたの番ですよ」という電話をもらった。
小川洋子著「ミーナの行進」(中央公論新社・2006年刊)
の貸し出し予約をした時、32人の順番待ちで、3ヶ月待ったことになる。
この本はどうしても、芦屋市立図書館打出分室で借りたかったのだ。

                   

そう、この小説の語り手である朋子さんが、白いとっくりセーターの司書さんに出会って、淡い恋心を抱く図書館は、私の生活圏に実在する古い建物である。



震災の後、財政難に陥った芦屋市は、美術博物館と共に、この図書館打出分室も閉鎖する方針を出した。
村上春樹さんの「風の歌を聴け」でも登場するこの図書館の存続運動が起きて、現在ではボランティアにより水木金土のみ、かろうじて開館している。市内在住の小川洋子さんは、もしかしたらその辺りの事情を知った上で、この本の中に、この図書館を登場させたのかも知れないなぁ。ここは、将来村上春樹記念館とか小川洋子記念館として、残る可能性がある。

私も中学1年生の夏休み、建て替えたばかりの田舎の町役場の2階の隅っこにあった小さな図書室に通い続けた。とっくりさんがいたわけではない。司書もいない文書室のようなところで、蔵書数は僅かなもの(おそらく誰かの寄贈品)だったが、私の求める本がそこにあった。
巻頭に映画写真が載ってる世界文学全集…「風と共に去りぬ」「誰がために鐘は鳴る」「嵐が丘」「戦争と平和」などに、初めて出会ったのである。不思議なことに、その夏、私はそこで自分以外の利用者に出会わなかった。役場の隅っこで本達は、私が読むのをじっと順番に待っているような気がした。

今から思えば、私にとっても、図書館は、何かが始まった場所である。

さて、「ミーナの行進」の主人公は、コビトカバのポチ子である。(といっても過言ではない。)

  

問1「コビトカバに乗って登校できるのか?」

…道路交通法では、許されている。
道路交通法第2条第1項第11号の軽車両=「自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの」に該当する。

問2「芦屋の邸宅の庭でなら1939年~1973年の間コビトカバは、存在できたのだろうか?」

…これは疑わしい。

まず、「コビトカバ」は、ジャイアントパンダやオカピと共に世界三大珍獣の一つで、現在世界で2000~3000頭。日本では、上野動物園・東山動物園・白浜アドベンチャーワールドにしかいない。生きた化石と呼ばれる希少動物だったのだ。(おとなでも、体長170㎝、体重は160~270㎏で普通のカバさんの1/15、目が飛び出ていないのでカバさんほど水中に滞在しない。)

そして、戦争があった。戦争中の動物の立場を考えると、まず有り得ない話と思う。

それでも、小川洋子さんは、コビトカバを腹心の友とし、それに乗る少女を書いた。
コビトカバの背中から降りて、自分の足で歩き出す少女を書いた。
少女はやがて大人になるけど、少女がマッチ箱に記した星のかけらのような物語は、そのまま光を放つ。

コビトカバは、小川洋子さんのマッチ箱の中から飛び出した動物である。           

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2 コメント

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森さんへ (ラミーチョコ)
2007-07-18 02:46:57
マッチは、寺田順三さんによる、この本P.309の挿画です。ルール違反かしら?他にも素適なマッチ箱の絵がたくさん出てきます。
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Unknown ()
2007-07-17 19:28:24
タイムリーな写真がよく手元にあるものですね。
さすがです。

マッチの写真を見て、そういえばこんな感じのマッチが有ったような気がしました。

ミーなの行進にまつわる話、興味深いものを感じます。
色々なジャンルに興味がおありですね。


今回の台風やら、地震などでペットはどうしているのか心配ですね。
私はいつもニュースを見るたびに考えています。
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