「川柳歳事記

スピード
歳毎に加速がついて来る余生
カルチャーへ駆け込む喜寿の好奇心
速さには劣るが勝る正確度

「川柳歳事記

偲ぶ
あの頃を偲ぶバンドの穴の位置
弦の無いギターに青い日を偲ぶ
今も好き遺影の夫とみつめ合う

「川柳歳事記

盛り場
履歴書のウラに盛り場透けて見え
盛り場の悪魔相手を選ばない
盛り場で皿を洗うている大志

「川柳歳時記

こっそり
連休はプチ整形と男狩り
少年が布団の中でマル秘本
にこにことしながら謀反企てる

「川柳歳事記

現実
理想と現実落差を埋める汗の量
映ってる鏡の中が現実よ
現実にかすみをかけて生きている

「川柳歳事記

気まぐれ
気まぐれの孫で真実突く言葉
気まぐれの趣味に火がつき花も咲き
気まぐれに投げた一言胸を刺す

「川柳歳事記

菓子
下心秘めて菓子折お供する
浮雲も綿菓子になるダイエット
アレルギー土産の菓子へ気を配り

「川柳歳事記

音
総理振るタクトの先にない和音
三月経て音沙汰がない八千余
セシウムに音色消された茶摘み歌

「川柳歳事記

鉛筆
鉛筆で自分史閉じてつむじ風
３Bの鉛筆書きのけんか状
美しく書ける鉛筆見つからぬ

川柳歳事記

腕利き
家計簿の黒妻の鼻高くなる
剃刀の綽名が主流派の要
凄腕の気骨天下を視野に置き