「川柳歳事記」

聞く

人間に聞こえぬ音が一つある

聞く耳なし先ず倒閣を狙ってる

聞いてないように聞いてる反抗期

「川柳歳事記」

気兼ね

三世代けんかも少し控え目に

同室の人に退院伏せておく

鼻歌も路地に入れば止む夜明け

「川柳歳事記」

関

難関を乗り越え根っ子深くなる

父という関所はいつも愛だった

関わって生きよう人の字のように

Web句会

Web句　会時事川柳

大臣になりはぐらかすこと覚え　　　　佳作　

                               美和　山吹

「川柳歳事記」

乾く

空も地も人も乾いた八月忌

山頂に来て水筒の回し飲み

ヒロシマの乾きにやっと世界の眼

「川柳歳事記」

川

呆然とガンジス川に立ち尽くす

まなうらに流れつづける里の川

人間の街を流れて川濁る

「川柳歳事記」

がらくた

ガラクタと言われ芽生える自立心

我楽多とならないように笑おうよ

すてないで我楽多人生訳があり

「老いて新鮮」松ひさし

褒められる老衰

私がこのほど夢の中でいただいた表彰です

あなたは第○回老衰度評価コンクール足の部において

老衰が進み相当の程度に達したと評価されました

ここに老いる身が衰弱する見事な早さを急速老衰賞

として表彰し　あわせてメダルを授与します

前年との比較と年齢老慮による実績

歩く歩幅が著しく狭くなった

歩く速さが著しく遅くなった

階段を上る時間が著しく長くなった

ひざの屈伸の回数が著しく少なくなった

片足で立っている時間が著しく短くなった

 

私は古希を過ぎ身体が急に弱くなった

思うように動けなくてつらい

元気そうで仲間を目にすると寂しくなる

老いぼれていくばかりの私が誉められるなんて

表彰されるとは思ってもみなかったこと

これまで生きてきて初めてのこと

最初にして最後のことでしょう

私の生涯の記念です

悲しんでも身が衰える　嘆いても身が弱る

老い衰えていくことへのいたわりと励ましの表彰

有り難いこと　素直に喜びましょう

 

「寝言」（続く）

Web句会

Web句会　題：木　

生命の神秘伝える古代杉　　

         　佳作　美和　山吹

「川柳歳事記」

紙

紙芝居ほどのジャンルで生きている

卓袱台で天声人語噛み砕く

パピルスを得た人類の借用書