「老いて新鮮」 （松ひさし）

壊れないか

ヒトさまがぼくらを責める
ぼくらは猛毒を出し危険だ
ヒトさまが大勢命をなくしたり病気になる
自然が汚れ生き物たちが生きていけなくなる

山や野の地中でウラン鉱石として静かに眠っていたぼくら
ぼくらを檻に入れて上手に飼えば
暮らしに役立つ魔法の力を出すと見抜いて
ぼくらを地中から掘り出したのはひと様
ぼくらはおりの中で飼われているとき
魔法の力が役立つと喜んでいたヒトさま

あるところで突然ぼくらは猛毒を出しヒトさまを恐れさせた
前ぶれもなく急に大地が大揺れ
壊れないはずの檻が壊れぼくらは本性のまま飛び出す
魔法の力が猛毒に変わって広がりヒトさまは逃げまどった
ぼくらだって猛毒を出したくない　出てしまうのだ
ヒトさまや生き物たちがどうなるか心配だ
「繰り言」（つづく）