Saitolab 「なにもせんほうがええ」

婚しては妻に従い ボケては猫に従う

なにもせんほうがええ

2019年12月16日 | 書籍・映画・音楽
70年代の東宝、東映のスペクタクル映画を観まくる。「日本沈没」は勿論1973年の映画。人間ドラマとしての完成度も高い。子供の頃の記憶では特撮パートばかりに目を奪われていたが、冷静に観返すとD1計画、D2計画が骨子としてリアリティーと説得力を底支えしている。むしろ特撮パートはオマケと言ってもいい。このBlogの表題にも使わせてもらった「なにもせんほうがええ」こそが真骨頂でありこれこそが日本人のアイデンティティーの根幹をなす。日本を沈没させてこそ見えてくる作家の日本民族への問いかけが深い。リメイクされた2006年樋口のそれとは較べるべくもない。現に2006年版は誰しも既に忘れ去っているではないか。次なる映画は「新幹線大爆破」。これも何度も観返しているが何度観ても飽きることが無い。緻密に構成された脚本。無駄のないセリフ。これがヘッポコ映画「君よ憤怒の河を渉れ」と同じ佐藤純彌監督作品とは思えない。しかも驚くべきことに「新幹線~」は1975年、「君よ憤怒~」のほうが76年作なのだ。主演はどちらも高倉健。敢えて両者の違いを探すなら東映と大映の違いか。「新幹線大爆破」を観ると当時の公安、警察の捜査力の恐ろしさに慄く。夕張の貨物ターミナルに捨てられていた煙草の銀紙から指紋を採取し学生運動家の山本圭を炙り出すあたりは黒澤映画「天国と地獄」の刑事の執念の捜査を髣髴とさせる。犯人逮捕と乗客1500名の生命を守る葛藤、新幹線の安全設備が裏目に出るジレンマ。よく練り込まれたストーリーは最後の最後まで観る側をぐいぐい引き込んでいく。観客の誰もが主犯である高倉健に感情移入してしまうことをしてこの映画が成功していることがわかる。こういう名作を観るにつけいつから邦画は駄作ばかりになってしまったのか。芸術作品でなくてもいい、娯楽大作であれ大人が観るにたえる映画が途絶えたことが悲しいのだ。

新幹線大爆破ロケ地

天国と地獄ロケ地

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« BIN・KANルージュ | トップ | 神田川 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

書籍・映画・音楽」カテゴリの最新記事