そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
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樹の海

2007年07月09日 | 人間/社会派ドラマ


2004年 日本 119分
2005.7.18 横川シネマ
  2007.7.2 wowow
■監督  瀧本智行
■出演  
   萩原聖人(朝倉正彦)  井川遥(手島映子)  
   池内博之(タツヤ)  津田寛治(山田敏男)  
   塩見三省(三枝清)   余貴美子(大瀬道子)
      中村麻美(居酒屋の店員)

 《story》

「この森で 生命に出会う」

 4つのエピソードからなる
1つ目は、暴力団にそそのかされ、公金を横領し、殺されて樹海に捨てられた朝倉。しかし、彼は死んでいなかった。そこで、今自殺しようとしている人に出会う。「止めないでくれ」と言われ、その場から離れたが・・・
2つ目は、悪徳金融のタツヤの携帯に、夜逃げした顧客の女から電話がかかる。自殺しようと樹海に入ったが、足をくじいたので助けてほしいという。客を失いたくないと、樹海に入るタツヤだが、ここにその女は本当にいるのだろうか・・。
3つ目は、平凡な生活を送っている山田のもとに、探偵の三枝がやってきた。二人は居酒屋で飲みながら話すのだが、三枝の話によると、自殺した女が持っていた写真に山田が写っているらしい。山田は心あたりがなかった。しかし、話が進むうちに・・。
4つ目は、駅の売店で働く映子は、かってストーカーをしたことがあり、今はひっそりと暮らしていた。しかし、あるとき、そのストーカーをしていた相手と出会う。ところが相手は映子のことを覚えていなかった。映子はあまりのショックで、自殺をしようと樹海へ向かうバスに乗り込んだ。

死ぬために集まってくる人々。しかし、それは「生きる」ためだった。4つのエピソードで構成されているが、それぞれが少しずつ交差している。すれちがっているようで、「生きる」ために重なり合っていく。樹海は、自殺の名所で、少し歩いただけでも遺体が発見されることもあるという。死を求め、ここにやってくる人々の心の叫びは、実は「生きたい」「だれか助けてほしい」という生への叫びであり、訴えなんだとつくづく感じることができる。死、恨み、哀しみ、そしてオカルト的な雰囲気のあった樹海が、実は生に向けて必死にサインを送っている。わたしたちのまわりの人間がそのサインを受け取らなければいけなのだろう。

     2007.7.2 wowow 

 誰も本当は死にたくはない
どんなに借金があっても、つらい日々でも、人は心の底には生への願望がある。死にたいと、いくら口にしても、生きていることの幸せを感じたいはずだ。ほんのちょっとのやさしさで生きて行けたら・・・ほんの小さな美しいものに心をいっぱいにできたら、きっと生きていける。山田と三枝が、死んだ女性のことを語り合うように、自分のことを見つめてほしい。死んでからだったらわからないけど、きっと死ぬ前にそう思ったにちがいない。人は自分の存在を知ってほしいものなんだ。自分の存在価値をかみしめたいものなんだと思う。
樹海・・・そこは死ぬための場所・・・そうではないと思う。原点に帰る場所だ。木は本来生き物の味方なんだから。ただ、木々のなかにうずもれて、自分も木になってしまいたいと思ってしまう。樹海は死の場所ではなく、生が広がる場所のはず。だから、そこで振り返るのだ。田中さんだってきっと振り返りたかったはず。


公式サイト「樹の海」