ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 130大統領と企業 「この何十億ドルというプラント建設はセールスマンが熱心さのあまり本社の許可なしに提案したことだ、とベクテル社が釈明したのです。しかしベクテル社の一幹部が匿名で雑誌“サイエンス”にベクテル社が知っていたことを暴露しました。セールスマンと言ったって、中古車を売っているわけじゃない。間違いがないよう、ベクテル本社にすべて報告していた。国務省もわが社の動きを完全につかんでいたし、おそらく原子力エネルギー委員会委員長もすべて知っていたはずだと怒っていました」 議会が怒る!という文字が画面にでる。 「ベクテル社が世界一危険な技術を不用意に売ろうとしたことが発覚したため、議会が激怒して、核燃料保証法はとうとう可決されなかった。核燃料による大儲けの夢が消え去ったのです」 「汚染除去でも儲ける」と大きな文字がテレビ画面に出てきた。 「すでにベクテル社は、大戦中の原爆製造“マンハッタン計画”で使われた放射性物質を抱える十三州三十二地点の汚染除去のため、三億二千万ドルの契約をエネルギー省から獲得していました。ベクテル社のシュルツが国務長官に指名されたころには、核廃棄物の貯蔵のため年間数億ドルの政府資金が導入され、廃棄物処理業界の最大手になっていたのです。この仕事は特にペンシルバニア州スリー・マイル島の原子炉で事故発生後、レーガン政権の大きな援助が必要となり、事実、その力を借りたのです」 レーガンの写真がアップになる。 「レーガンは、全米一の原子炉メーカーであるゼネラル・エレクトリック社のスポークスマンとして演説してきた時代から、ずっと手放しで原子力を支持してきました。大統領に当選後も、直ちに原子力重視の政策を再度強調したのです。「私は原子力を信頼している」とレーガンは記者会見で言い切り、政府の原子力許認可手続きをスピードアップさせる方針を発表しました。この問題は反原発運動家によって不必要に妨害されてきました。推進の障害になっている意味もない法令を改正し、反対運動家の干渉を認めている規則をなくしてしまえば、原子力を永続的に発展させることが可能だ。レーガンがこの仕事を任せたのは、かつて原子力エネルギー委員会のメンバーで、過去二十年間ベクテル社の原子力事業を率いてきたW・ケネス・デイヴィスだったのです」 カーター大統領の写真。 「インド政府が核拡散防止条約を受け入れないため、カーター政権がインドに原子力発電所の修理に必要な部品の販売を禁止していました。ところが、ニューデリーを訪れたシュルツは、インドの条約に調印するかどうかにかかわらず、アメリカは近く必要部品の販売を許可する、と極秘の約束を取り交わしたのです。元ベクテル社の人間であるシュルツ、ワインバーガー、ディヴィス、そのほかレーガン政権のメンバーの努力が相乗効果を発揮し、ベクテル社内では原子力ブームに沸いていたのです」 スリー・マイル島事故の映像が映る。 「ところがスリー・マイル島事故が起こりました。近隣の住人は原発を危険なものだと確信しました。それに反して、核産業の人たちは、事故はたいしたことはなく、何の問題もないと言いました。しかし口を封じるために、核産業の人たちは奔走しました」 画面にはドルの札束。 「原子炉を運転していたメトロポリタン・エジソン社は、住民から“沈黙”を買うため、ひそかに和解金を支払い、訴訟を食いとめようとしていたのです。娘が失明しかけているベッキー・ミースも、今では電話をしても答えてくれません。完全に沈黙して、語ろうとしません。この町では沈黙する人が多いのです。電力会社がお金で片付けたケースもあります。メアリー・オズボーンは語る。実際、ブラッドレー・ベーカー夫妻の場合、事故直後にダウン症の赤ちゃんが誕生し、百九万五千ドルで和解していたのです。“被害者ゼロ”と主張してきたエジソン社自身が、おそるべきことに裏では自ら因果関係を証明しているのです。何ということでしょう」 金は「でも、障害があれば、それだけ金が必要というわけだろう……」と被害者に同情している。 ミス・ホームズ「でも、隠蔽を共謀している可能性が大ね。他の人たちはどうなるのかしら」 障害児の写真。 ガン患者の写真。
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