ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 178芸術の国フランスも…… 輝代の顔がトマトのように熟し、美しい黒髪が逆立った。キイーと目はつりあがっていた。両手を前に出した。 大きな爆発音ともに、閃光がして、部屋も揺れた。 みんな、どういうわけか、そんなことさえ気にもならなかった。 こんなことは、たいしたことじゃないと人々は思った。 「フランスでは、原発を推進しています。それは世界一だったと想うわ。全部の電気を原発でつくろうなんて、スローガンまであったほどよ。それだから、原発の恐ろしさは伝えないようにしたのです。サミットに参加したほとんどの国がそうであったようにね。でも、その中でもフランスは何も伝えなかった。イタリアでも死の灰が降下したのに、フランスでは、大丈夫ばかり教えられていたのよ。ひどいと思わない? チェルノブイリにはフランスの方が近いでしょう。反対運動をする人たちの中には監獄に入れられた人たちもいるわ。本当は指導者こそが、犯罪者であるはずなのに……。そんな国だから、核実験を強行したのよ。ムルロア諸島の人たちは、何の健康被害もないといいながら、フランス本国に患者として極秘に連れて来ていたのよ」 ムルロア諸島で核実験をフランスは繰り返してきた。 そのフィルムが流れている。 そんな用意いつしたのだろう。 でも、僕は何も知らされていないしと勉は思った。 それにこれはミステリー・ツアーだからなあー。 「フランスは多くの武器を輸出する国でもある。しかし、平和主義で人道主義と名乗る偽善者たちでもある」 ソフィーは語った。 多くの人はそういうソフィーがフランスの国の人から非難されるべきではないと思った。 非難されるべきはフランス政府や死の商人たちなのである。 フランスの核政策も、決してオープンとはいえず、また安全とも言えないだろう。 「私はフランス代表ではないけど、フランスを愛している。芸術の都ともいわれることを誇りにしている。でも、こんなことを許していたら、芸術も色あせ、芸術も嘘つきの道具と思われるわよ。だからこそ、怒るのよ」 静かな部屋の中、一人拍手する者がいた。 それはロシアのイワンである。 イワンが話す。 「たとえば、放射能で汚染された肉があると、汚染されていない肉と混ぜたりしました。そうすれば安全の範囲だから、売ってもいい。ロシアじゃなく、他の国だけど、汚染された国の肉を他の国に売った。その国では、ベーコンにして、元の国に売った。また発展途上国の人たちは、放射能に対して知識がないからと、その国の牛乳を買い、放射能に汚染された牛乳を安く発展途上国の人たちに売った。それに、みんな、どこの国の食材を食べているか、本当はわからないらしいよ……」 「発展途上国だから、関係ないわけじゃないのよ」 ミス・ホームズは推理した。推理する以前に理解できるだろうが……。 「そうだとも。そのためにも、チェルノブイリ事故はたいしたことはなかった、と信じ込ませる必要があったのだろう」とイワン。 「じゃ、プルトニウムについての国際協力について、話すわ」 博士はプルトニウムの毒性について話した。放射能を発するだけではなく、毒性さえあるのだ。世界一の毒物だと博士は述べた。 「このことは、どんな偉い学者や政治家が違うっていっても、事実を曲げることはできない。科学にそんな身分や階級、そんなものは通用しない。だから、僕は科学が好きだ」 輝代が、目をつむっている。
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