香が散る

本を読むのが大好き、少し前からノロノロですが走るのも好き
そんな、代わり映えのしない、でも大切な日々を書き綴っています

火山のふもとで

2012-06-17 22:07:20 | 本のこと
雑誌「新潮」7月号に一挙掲載された
松家仁之さんの『火山のふもとで』

雑誌『芸術新潮』、『考える人』の編集長・松家仁之さんのデビュー作
建築家・村井俊輔が主催する村井設計事務所に大学を卒業して入った
ぼくこと坂西くんのの目線で、書かれた小説
1980年代の、設計事務所の様子が手に取るように想像できる
村井設計事務所は、夏になると「夏の家」という
北軽井沢の別荘に事務所ごと移り仕事をする
朝、大きな窓に向かった設計室で、無言で鉛筆を削る音
先生の作品の青焼図面、フランク・ロイド・ライト、アスプレンド
所員それぞれの設計のくせ、考え方、淡々と過ぎて行く毎日
内田さんが作るおいしそうな料理に、山の植物や鳥の名前、
浅間山が見える自然の中に本当にいるような情景描写
時間をかけて、夢中になって読めた幸せな1週間を過ごせました
雑誌だったので、心が震えた部分にアンダーラインをひいたり、
何度も読み直したり、前に戻ったり、
読み終えることがもったいなくって・・・
最後はちょっと意外な感で終わったのだけど、
知らない間に涙がぽろぽろと流れていて、
泣く小説とは思わなくてこれまた意外
すっごく、すっごく、好きな文体、世界感の小説

ちょっとだけ、気になった文章を
 「一点の隙も曇りもない、完璧な建築なんて存在しない。そんなものは、
 誰にもできはしないんだよ。いつまでもこねくりまわして相手を待たせて
 おくほどのものが自分にあるのか。そう問いながら、設計すべきなんだ」
 「竣工して初めて、建築は生命を与えられる。」
 「ひとりでいられる自由というのは、これがゆるがせにできない大切なものだね」
これ、全部先生の言葉
この村井先生の考え方、佇まいがそのまま小説の世界観を作っている感じだった

一挙650枚掲載ってどれだけと思ったら、上下2段で210ページ分
単行本にしたら、結構厚い本になるのではないかしら
単行本になるのが、心から楽しみだな

雑誌『新潮』といえば、宮本輝さんの流転の海シリーズ最新『満月の道』が
連載されているのだけど、途中で読んじゃうのはなぁと、読みたい気持ちと
葛藤したけれど、やっぱり読まない 単行本まで我慢する
流転の海シリーズはとても大切な小説なので、途中はダメだよね

そんなこんなで、ゆっくりと本を読んでいたので久し振りの更新になっちゃった
毎日元気に働きに行って、食べたり飲んだり、たまには走ったりと
変わらない生活をしております 幸せなことです

事務所の近くのお家の庭に咲いていた花や

北菓楼のピスコットに癒されております