窓際日記・福島原発

窓際という仕事の雑感

ダークマター・35・宇宙の進化を表すフリードマン方程式の導出(2)

2019-08-14 01:36:09 | Weblog
よく理解していない部分の記事を書くとこうなる、と言うのが前の記事の曲率の部分でした。
自分で読んでもわからないのだから、すでに理解している方を除いては、人様が分かるはずはないでしょう。

・ロバートソン・ウォーカー計量(注1)
http://archive.fo/sJKt4

EMAN物理、やっぱりこれが丁寧ですね。
プラスの曲率の宇宙を想定していますが、4次元球の半径としてのRが3次元空間のガウス曲率Kと
K=1/R^2
という関係にあることを明示してくれています。

そうして、それをつかってアインシュタイン方程式からフリードマン方程式を導出するのが
・フリードマン方程式
http://archive.fo/WAohV
になります。
但しアインシュタイン方程式に出てくる定数kは
k=8*Pi*G/C^4
を使っているため、最後に出てくるフリードマン方程式にC^4項が残る事になります。

そしてこのページの記述の中で注目すべきは
『つまり、宇宙がエネルギー密度ε、圧力pの一様な完全流体で満たされていて、その物質が静止して見えるような座標「共動座標」を採用したときには、ロバートソン・ウォーカー計量が実現している、というわけである。』
であろうと思われます。

これはつまり「フリードマン方程式というものは空間の伸び縮みを計算するのだが、その際に空間に含まれている物質成分(あるいはエネルギー成分)は空間に対しては運動しないという前提を置く」ということになります。
ミクロに見れば、たとえば放射優勢期ではあらゆる方向に放射が飛び回っているのですが、それなりの大きさの空間であれば、どこを切り取ってもその中の放射の運動量の合計値はほぼゼロになる、それが「放射が空間に対しては運動していない」ということであり、そのような座標系を使うという事でもあります。

それは又現在の宇宙ではそれぞれの銀河は固有の方向に運動してはいるが、それなりのサイズの空間を想定すれば、銀河の運動量の合計値はほぼゼロになる、その様な座標系がある、という事でもあります。

そしてまたより直感的には、宇宙背景放射に対していずれの方向にも運動が検出されない座標系が「その場所での空間に対して静止している座標系」であり、フリードマン方程式が記述するスケール因子を観測するとすればその様にして決められた2つの点の間の距離を観測するのが本来の方法となるはずであります。


他方でニュートン近似によるフリードマン方程式の導出は、物質成分が空間に対して運動している、という前提で式を立てて解いています。

「7 宇宙の運命」 5P~6P

ニュートンの力学は「空間は固定して静止しており、その中で物質が重力の相互作用を受けながら運動する。」と言うように理解するものですから、その様になります。

他方でアインシュタインの力学は空間そのものが膨張、収縮する力学ですので、一見、同じような形のフリードマン方程式に行き着きますが、内容はまるで違う、とそういう事になります。

特にアインシュタイン方程式からのフリードマン方程式では、物質成分は空間に対しては運動してはいない、という事は前述したとおりであります。
そこでは空間そのもの、それは空間に静止して付随している物質(それはエネルギー成分を含むのではありますが)そのような内容物で充満した空間そのものの挙動を解いているのです。

といってもそれほどたいしたものではなく、単に膨張しているか、止まっているか、収縮しているか、それだけが分かるのではありますが、、、。
しかしながら一見単純に見える、その様なことで我々が暮らすこの宇宙の過去と未来を知ることができる、ということはそれなりにすごい事ではあります。


臨界密度ρ0について
臨界密度ρ0=3*H^2/(8*Pi*G)にその時の宇宙の物質密度ρが等しければ宇宙はフラットで開いており
ρ>ρ0ならばプラスの曲率、つまり宇宙は閉じており
ρ<ρ0ならばマイナスの曲率、つまり宇宙は開いているのであります。

そうして臨界密度はたとえば
「臨界密度(宇宙の)」
http://archive.fo/FH1lp
の様に説明されています。

その導出の仕方は
フリードマン方程式
http://archive.fo/xhqQz
あるいは上記で示した「宇宙の運命」の「7.3 フリードマン方程式」のようなやり方になります。

しかしながら、ここで注意しなくてはならない事は「宇宙項(宇宙定数)がなく圧力も無視できる宇宙において・・・」というような前提条件を付けることなく、たとえばEMAN物理で導出された宇宙定数を考慮した形のフリードマン方程式から直接的に臨界密度が導かれる、という事であります。

それは「宇宙定数」の4ページにあるような方法で宇宙定数Λの効果を物質密度ρの中に取り込み、そのフリードマン方程式の曲率項をゼロにする為には、新たに定義しなおした物質密度ρをいくつにすればよいか、と問う事であり、その答えとして臨界密度ρ0が求まる事になります。

従いまして、臨界密度を求める時にいちいち「宇宙定数がない場合・・・」などと断る必要はどこにもない、という事になります。
しかしながら、これは臨界密度というコトバの従来からの定義でありましょうから、その表現を受け入れない、という事ではありません。


さてそういう訳で、宇宙の曲率と物質密度、あるいは真空エネルギーまで含めたエネルギー密度との関係はハッブルパラメータHを通してフリードマン方程式により結び付けられており、その両者は一方が決まれば他方も決まる、とそのような関係にある、という事になります。

こうして宇宙の初めにエネルギー密度と宇宙の曲率、そうしてハッブルパラメータの3つが同時に決められたという事が分かるのでありました。
(上記3つのパラメータのうち2つが決まれば残る1つはフリードマン方程式により決められてしまう、そういう事であります。)


さて宇宙の形としてのトポロジーから言いますれば、宇宙は閉じているか開いている、ということであり、つまりはプラスの曲率であるのか、それともマイナス曲率~フラットであるかの2つに分類されることになり、宇宙の歴史の途中でプラスからマイナスになる、という事はありえない、という事になります。
(宇宙が閉じている時は、どれほど巨大であろうがその体積は有限であります。
他方で宇宙が開いている時はその体積は無限、これは宇宙の最初期からその様なのである、という事になります。)

そうして、宇宙が膨張するにつれてプラス、マイナスの符号に関係なく曲率はゼロに近づくことになります。
これはインフレーションモデルがビッグバンモデルが抱えていた「平坦性問題」を解決したと認められている理由と同じ理由によるものです。

そうしてもし宇宙の初めからフラットな宇宙であれば、その宇宙はいつまでもフラットである、という事をフリードマン方程式は保障しています。
しかしながら最初期の宇宙がフラットであれば、宇宙がその後も安定してフラットである、というのは単純化された一様等方の宇宙という前提でなりたつ理論解であって、実際にそのようにロバストにフラットであり続ける事が保障されるかどうかは議論の余地があると思われます。

さて、そういう訳で宇宙のかなたの最終散乱面のパターンの見え方によって、我々の宇宙の曲率がどのようであったのか、そうして今もどのようであるのかが分かる、とそういう事になるのでした。

注1:ロバートソン・ウォーカー計量の表現
ロバートソン・ウォーカー計量の表現はEMAN物理にある様に
k=1/R^2
として扱う方法、、それからWikiにあるように
k=0、±1として表示する方法の2つがあるようです。

EMAN物理の方法は物理的な意味がとらえやすいものになります。
他方でWikiの表示方法は一見、曲率が離散的になっており、見慣れないと違和感が残るものであります。

さて、宇宙の曲率はプラスかゼロかマイナスの3通りしかなく、そうしてプラスの場合は4次元球の表面形状としての曲率をもった3次元空間となります。

そうして、確かに4次元球の半径Rによってさまざまな曲率値をもつ3次元空間が存在することになるのですが、すべての4次元球は相似形であり、その意味では「種類としては一つの4次元球しか存在しない」としても間違いではありません。
いろいろと存在するようにみえる4次元球は単にその半径Rの大きさが違うだけであります。

そうでありますから「k=+1は単にそのような状況の時に成立するものとしてのロバートソン・ウォーカー計量を表している」と主張しているのがWikiの表現方法である、と解釈することができそうです。

同様にマイナスの一様な曲率を持つ3次元空間というのも、曲率半径が違うだけで種類としては1種類しかない、その様に理解することになります。

より厳密な、あるいは難しい議論は
ロバートソン・ウォーカー計量
http://archive.fo/6ZMp4
を参照願います。

注2:ガウス曲率Kを使ったフリードマン方程式
・フリードマン方程式
http://archive.fo/xhqQz

上記ページ(4.7)式を参照願います。

そうしてガウス曲率Kとロバートソン・ウォーカー計量に出てくるkの関係式は
(4.8)式となるようです。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

http://archive.fo/Ymfu8
コメント
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