まずは一番単純な宇宙から始めましょう。
その宇宙には物質もダークエネルギーもありません。
↓
初期条件
H0=+1、Ωm=0、ΩΛ=0、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(+1)
それで解くべき式は
x’=(1)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1))^0.5,x(0)=1を-10から15まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/9oFGu
実行アドレス
↑
この宇宙はミルン宇宙という名前がついています。
厳密解を見ますと、なるほどこれは我々がよく知っている、切片が1の傾きが1の直線を表す式になっています。
さてしかしこれは単なる直線を表す式ではありません。
何と言っても「宇宙の進化を表すフリードマン方程式を解いた答」でありますから、ゆめゆめおろそかにはできません。
その宇宙には物質はもちろん真空エネルギーも存在せず、空間だけが存在する宇宙になります。
そうであれば、この宇宙の真空では仮想粒子の対生成、対消滅が起こっているのかどうかは不明です。
それはつまり「BHをよそからこの宇宙に持って来れば、そこでBHは安定して存在できると思われますが、ホーキング放射が起こるかどうかは不明」という事でもあります。
それから曲率はマイナスで値がマイナス方向の最大値Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(+1)をとります。
しかしながらこれは一体どうしたことでありましょうか?
物質が存在しなければ空間はフラットなミンコフスキー空間ではなかったのか?
どうやら話はそう単純ではない様です。
「物質分布が一様で等方である」という、そういう前提の宇宙についてアインシュタイン方程式を解くと、その解は「空間の中にエネルギーが存在しない」という想定では、驚くべきことに「その宇宙はマイナスの曲率を持つ」という事を示します。
臨界密度にみたないエネルギーしか存在しない場合はその空間の曲率はマイナスであり、そのような状況の極限としてミルン宇宙が存在します。
そうしてどうやら実際の我々の宇宙はそのような宇宙でありますから、空間の中に「臨界密度に相当するエネルギー成分がないと空間はフラットにならない」と、そういう事になります。(注1)
もう一つ指摘しなくてはならない事は、スケール因子がゼロを越えてマイナス領域に入っても、フリードマン方程式としては「問題ない」としている事であります。
但し物質成分が宇宙の中に存在しますと、スケール因子がゼロの場所では宇宙の膨張、あるいは収縮のスピードが無限大となりそこで計算は終了します。
(その点は前者がビッグバンのスタートポイント、後者はビッグクランチで宇宙終了のポイントとなります。)
これはつまり、それ以降のスケール因子がマイナスのエリアについてはフリードマン方程式は成立していない、という事になります。
しかしながら、物質成分が存在しない場合はマイナスエリアでもフリードマン方程式は成立しているかの様であります。
そうして後述いたしますが、この事は宇宙項Λを有効にした場合でも同様の事が言える様です。
それからこの宇宙はどのような値のハッブル定数値であっても問題ない様です。
それはつまり、Hがゼロに近い値でもよく
(それはたとえばH0=+1.0*10^-100とか)、たぶんその極限としてH=0であってもこの宇宙は存在できそうです。
そうしてその宇宙は曲率はマイナスではありますが、膨張も収縮もしていない「静止宇宙」になります。(注5)
つまりはアインシュタインが求めて得られなかった宇宙というのは、実は内容物がなにもない、空っぽのミルン宇宙そのものであった、という事になります。
そうしてその様な宇宙が存在可能であるとすると、単に空間の曲率がマイナスである、というだけでは宇宙は膨張し始めない、つまりマイナス曲率であるという事だけでは空間が広がり始める事はない、と言えそうです。
この事は逆に言いますと「空間がプラス曲率をもつだけでは空間は収縮することはない」という事を言っている様に思われます。
しかしながら我々の常識の範囲内では、「空間にエネルギー存在する事」以外に空間をプラスに曲げる方法をしりません。
従って現実には空間をプラス曲率にする為にはその空間に臨界密度を越えるエネルギーが存在する事が必要であり、それは通常言われています様に「物質による重力場が空間をプラスに曲げる」という表現になる訳であります。
あるいは「空間に存在するエネルギーが作る重力場が空間を収縮させる」の方がより直感的かと思われます。
但し一様等方の宇宙でありますから、どれだけの密度で空間内部にエネルギーが存在しても任意の場所におかれた微少質量のテスト粒子はいずれの方向にも力を受けることはなく、従いましてそこには我々が感知できる重力場は存在してはいない、という事には注意が必要です。(注2)
そういう訳で我々は空間、あるいは真空と呼ばれているモノについてはあまりよくわかってはいない様であります。
さてそれで、その様な宇宙の曲率、あるいはハッブルパラメータをどのようにして観測するのか?
これはそういう宇宙に三角形に配置した衛星を持ち込んで、レーザービームで三角形を作りその内角の和を観察する、そうしてまたそれぞれの衛星間の距離をこれもまたレーザービームを使って測定する、そのようにするしかなさそうです。
次の宇宙はド・ジッター宇宙です。<--リンク
http://archive.fo/R4E2Q
↓
『ド・ジッター宇宙とは、正の宇宙項を持ったアインシュタイン方程式の真空解、すなわちエネルギー運動量テンソルがゼロの場合の解である。
空間は一様等方であり、スケール因子は指数関数的に増大する。
初期宇宙のインフレーション時にはこのような膨張則が実現していたものと考えられる。』
この宇宙は我々が暮らす宇宙の真空のみからできています。
(物質成分はありません。)
そうして多分、この宇宙に持ち込んだBHはホーキング放射をすることが可能であると思われます。
それでまずは宇宙項Λによって空間がフラットになった、という条件で解きましょう。
初期条件
H0=+1、Ωm=0、ΩΛ=1、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(1-1)=0
それで解くべき式は
x’=((1-1.0)+1.0x^2)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1-1.)+1.x^2)^0.5,x(0)=1を-5.8から1.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/cPaWb
実行アドレス
厳密解はx(t)=EXP(t)=e^t
ビッグバンはありません。
無限にゼロに近いサイズから、無限の時間をかけて少しずつ膨張してt=0でようやくa=1に到達しました。
そのような、空間の曲率がフラットな宇宙です。
この宇宙はミルン宇宙を真ん中にしてアインシュタイン-ド・ジッター宇宙と反対側の位置にあります。
後述しますが、アインシュタイン-ド・ジッター宇宙はビッグバンに始まり、無限の時間をかけて無限のかなたまで広がり、そこではH=0になる、宇宙項ΩΛはゼロで物質項Ωm=1の空間曲率がフラットな宇宙です。
さてそれで今度は少しだけ真空エネルギーを上げてみましょう。
ΩΛ=1ー>1.1と0.1増やします。
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1-1.1)+1.1x^2)^0.5,x(0)=1を-5.8から1.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/7E3g3
実行アドレス
スケール因子が0.3あたりでH=0となっていそうです。
『((1-1.1)+1.1x^2)^0.5の根』と入力して確かめますと
x=1/sqrt(11)=0.301511・・・という値がかえってきますので、ここでボトムになっていることがわかります。
そうしてこのカーブの前半分は
H0=ー1
と設定し、妥当な計算範囲を設定すれば確認できます。
実行アドレス
こうしてこの宇宙は収縮から膨張に変化する、ビッグバンなしの
曲率項Ωk=-0.1
というプラス曲率をもった宇宙であることが分かるのでした。
そうしてもちろんこの宇宙もまた「ド・ジッター宇宙」であります。
以上の事から分かります事は、宇宙項ΩΛがΩΛ>1の時には空間はプラスの曲率をもち、スケール因子はゼロに到達する前に収縮速度がゼロになる、ということです。
それはつまり宇宙項ΩΛは物質項Ωmと同様にプラスのエネルギーを持つ、従って空間をプラス方向に曲げる事になりますが、しかしながら宇宙項ΩΛは空間を膨張させる力を持つ、それはこの宇宙がボトムから反転して膨張に移行していく事から明らかなことです。
それは前回示した膨張から圧縮に物質の重力によって反転する宇宙での重力の働きに、働く方向は真逆ですが相当する力の様に見えます。(注3)
こうしてΩΛ>1(Ωm=0は前提条件)の場合は「ド・ジッター宇宙」はプラスの曲率をもち、そうして収縮から膨張に変化する、ビッグバンなしの宇宙を表すことになります。
そうしてこれはすでに前回「アインシュタインが目指した宇宙」で紹介したビッグバンに始まりビッグクランチで終わることになる、
Ωm=2.1、ΩΛ=0
という宇宙、この宇宙はより一般的には
Ωm>1、ΩΛ=0
と表すことができるのですが、その宇宙に対してミルン宇宙を真ん中にして反対側にあるのが今回見ていただいた空間内部には物質が存在しない、ΩΛ>1の「ド・ジッター宇宙」という事になります。
注1:臨界密度
臨界密度(宇宙の)
↑
『現在の臨界密度はハッブルパラメータの現在の値であるハッブル定数を用いて、3*H0^2/(8*Pi*G)となり、1ccあたり10^-29グラム程度の値となる。』
別記事「7 宇宙の運命」によれば
『現時点での臨界密度は1 立方メートル内に数個の陽子がある程度(≒水素原子5個程度らしい:引用注)の密度であり、現代技術では実現不可能な超高真空状態である。』
とのこと。
さて、そんな程度の物質が存在するだけで宇宙の曲率が最大のマイナス値からフラットにまでなるのでありますから、なかなかこれは微妙なものです。
あるいは、現在の宇宙はまさに「その程度に空っぽである」という事でもあります。
追記(9/26日)
1 立方メートル内に水素原子5個程度、、、と書きましたが、少々訂正です。
実際の内訳は
ダークエネルギーが水素原子で3.5個分相当
ダークマターが水素原子で1.25個分
そうしてようやく目に見える(?)物質成分が水素原子0.25個分相当
そうでありますから、本当に目に見える限りの宇宙(=電磁波で見ることが可能な宇宙)は「からっぽ」なのです。
そうして、そのおかげで広い空間をわずか5%程度の物質成分が我が物顔をして活動できる、とそういう具合になっております。
注2
恒星が作る重力場、あるいはBHが作る重力場、そうしてそれに対応する形で作られている空間の曲がり方、それらは全て「重心に向かってテスト粒子を加速させる」という特徴を持ちます。
他方で、一様かつ等方な宇宙が作っている曲率をもつ空間はそのような「特定の方向への加速度運動を引き起こす」という事はないのであります。
注3
プラスのエネルギーを示しながら、それが重力を作るのではなく、いわゆる反重力、あるいは斥力をつくる。
これが宇宙項ΩΛの神秘であります。
そうしてそのような働きを解釈して「ダークエネルギーはマイナスの圧力を持つ」などという事に現状ではなっております。
そうしていわゆる「宇宙初期のインフレーション」を引き起こした力というものはこのような力だったのではないかと想像されています。
それは又ビッグバン宇宙の最初期の膨張速度を決め、ひいては現在のハッブル定数を決めているものでもあります。
注4:ミルン宇宙がマイナスの最大曲率を持つことについて
宇宙は内容物にエネルギーを含まず、何もない場合は開いた空間であることを基本としている、その様にいう事が出来そうです。
そうして閉じた空間が必要であれば、閉じた宇宙にする為にはそれなりのコストが、エネルギーが必要であると主張しているかの様です。
もしミルン宇宙がフラットであったとすると、ほんの少しのエネルギーの存在で宇宙は閉じてしまう事になります。
あるいは言い方を変えますと「フラットである状態はロバストではない」という事になります。
その状態は安定状態とはいえず、少しのノイズで宇宙は閉じたり開いたりしてしまう、そんなことが予想できます。
有限と無限の間を行ったり来たりのチャタリングを起こしてしまう事になります。
そういう意味では、ミルン宇宙がマイナスの最大曲率を示す、というのはなかなか巧妙な事であるとも言えそうです。
注5
上記記事中
『・・・たぶんその極限としてH=0であってもこの宇宙は存在できそうです。
そうしてその宇宙は曲率はマイナスではありますが、膨張も収縮もしていない「静止宇宙」になります。』
と言ってますが、これは間違いの様です。
H=0ですと臨界密度はその定義からゼロという事になりますので、まさに「エネルギーが存在しない空っぽである宇宙=ミルン宇宙」はその時は曲率はフラットになる、そうしてH=0ですから「静止している」のです。
そうしてそのような空間を我々は従来から曲率ゼロのミンコフスキー空間と呼んでいました。
さてしかしながらそのような空間が少しでも膨張、あるいは収縮し始めますと途端に空間の曲率がマイナスになる、という事になります。
そうなりますと問題は「静止しているミンコフスキー空間を加速膨張させ、宇宙のインフレーションを開始した力は何であるのか?」という事になります。
・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク
http://archive.fo/a39Fl
http://archive.fo/UZKrx
その宇宙には物質もダークエネルギーもありません。
↓
初期条件
H0=+1、Ωm=0、ΩΛ=0、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(+1)
それで解くべき式は
x’=(1)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1))^0.5,x(0)=1を-10から15まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/9oFGu
実行アドレス
↑
この宇宙はミルン宇宙という名前がついています。
厳密解を見ますと、なるほどこれは我々がよく知っている、切片が1の傾きが1の直線を表す式になっています。
さてしかしこれは単なる直線を表す式ではありません。
何と言っても「宇宙の進化を表すフリードマン方程式を解いた答」でありますから、ゆめゆめおろそかにはできません。
その宇宙には物質はもちろん真空エネルギーも存在せず、空間だけが存在する宇宙になります。
そうであれば、この宇宙の真空では仮想粒子の対生成、対消滅が起こっているのかどうかは不明です。
それはつまり「BHをよそからこの宇宙に持って来れば、そこでBHは安定して存在できると思われますが、ホーキング放射が起こるかどうかは不明」という事でもあります。
それから曲率はマイナスで値がマイナス方向の最大値Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(+1)をとります。
しかしながらこれは一体どうしたことでありましょうか?
物質が存在しなければ空間はフラットなミンコフスキー空間ではなかったのか?
どうやら話はそう単純ではない様です。
「物質分布が一様で等方である」という、そういう前提の宇宙についてアインシュタイン方程式を解くと、その解は「空間の中にエネルギーが存在しない」という想定では、驚くべきことに「その宇宙はマイナスの曲率を持つ」という事を示します。
臨界密度にみたないエネルギーしか存在しない場合はその空間の曲率はマイナスであり、そのような状況の極限としてミルン宇宙が存在します。
そうしてどうやら実際の我々の宇宙はそのような宇宙でありますから、空間の中に「臨界密度に相当するエネルギー成分がないと空間はフラットにならない」と、そういう事になります。(注1)
もう一つ指摘しなくてはならない事は、スケール因子がゼロを越えてマイナス領域に入っても、フリードマン方程式としては「問題ない」としている事であります。
但し物質成分が宇宙の中に存在しますと、スケール因子がゼロの場所では宇宙の膨張、あるいは収縮のスピードが無限大となりそこで計算は終了します。
(その点は前者がビッグバンのスタートポイント、後者はビッグクランチで宇宙終了のポイントとなります。)
これはつまり、それ以降のスケール因子がマイナスのエリアについてはフリードマン方程式は成立していない、という事になります。
しかしながら、物質成分が存在しない場合はマイナスエリアでもフリードマン方程式は成立しているかの様であります。
そうして後述いたしますが、この事は宇宙項Λを有効にした場合でも同様の事が言える様です。
それからこの宇宙はどのような値のハッブル定数値であっても問題ない様です。
それはつまり、Hがゼロに近い値でもよく
(それはたとえばH0=+1.0*10^-100とか)、たぶんその極限としてH=0であってもこの宇宙は存在できそうです。
そうしてその宇宙は曲率はマイナスではありますが、膨張も収縮もしていない「静止宇宙」になります。(注5)
つまりはアインシュタインが求めて得られなかった宇宙というのは、実は内容物がなにもない、空っぽのミルン宇宙そのものであった、という事になります。
そうしてその様な宇宙が存在可能であるとすると、単に空間の曲率がマイナスである、というだけでは宇宙は膨張し始めない、つまりマイナス曲率であるという事だけでは空間が広がり始める事はない、と言えそうです。
この事は逆に言いますと「空間がプラス曲率をもつだけでは空間は収縮することはない」という事を言っている様に思われます。
しかしながら我々の常識の範囲内では、「空間にエネルギー存在する事」以外に空間をプラスに曲げる方法をしりません。
従って現実には空間をプラス曲率にする為にはその空間に臨界密度を越えるエネルギーが存在する事が必要であり、それは通常言われています様に「物質による重力場が空間をプラスに曲げる」という表現になる訳であります。
あるいは「空間に存在するエネルギーが作る重力場が空間を収縮させる」の方がより直感的かと思われます。
但し一様等方の宇宙でありますから、どれだけの密度で空間内部にエネルギーが存在しても任意の場所におかれた微少質量のテスト粒子はいずれの方向にも力を受けることはなく、従いましてそこには我々が感知できる重力場は存在してはいない、という事には注意が必要です。(注2)
そういう訳で我々は空間、あるいは真空と呼ばれているモノについてはあまりよくわかってはいない様であります。
さてそれで、その様な宇宙の曲率、あるいはハッブルパラメータをどのようにして観測するのか?
これはそういう宇宙に三角形に配置した衛星を持ち込んで、レーザービームで三角形を作りその内角の和を観察する、そうしてまたそれぞれの衛星間の距離をこれもまたレーザービームを使って測定する、そのようにするしかなさそうです。
次の宇宙はド・ジッター宇宙です。<--リンク
http://archive.fo/R4E2Q
↓
『ド・ジッター宇宙とは、正の宇宙項を持ったアインシュタイン方程式の真空解、すなわちエネルギー運動量テンソルがゼロの場合の解である。
空間は一様等方であり、スケール因子は指数関数的に増大する。
初期宇宙のインフレーション時にはこのような膨張則が実現していたものと考えられる。』
この宇宙は我々が暮らす宇宙の真空のみからできています。
(物質成分はありません。)
そうして多分、この宇宙に持ち込んだBHはホーキング放射をすることが可能であると思われます。
それでまずは宇宙項Λによって空間がフラットになった、という条件で解きましょう。
初期条件
H0=+1、Ωm=0、ΩΛ=1、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(1-1)=0
それで解くべき式は
x’=((1-1.0)+1.0x^2)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1-1.)+1.x^2)^0.5,x(0)=1を-5.8から1.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/cPaWb
実行アドレス
厳密解はx(t)=EXP(t)=e^t
ビッグバンはありません。
無限にゼロに近いサイズから、無限の時間をかけて少しずつ膨張してt=0でようやくa=1に到達しました。
そのような、空間の曲率がフラットな宇宙です。
この宇宙はミルン宇宙を真ん中にしてアインシュタイン-ド・ジッター宇宙と反対側の位置にあります。
後述しますが、アインシュタイン-ド・ジッター宇宙はビッグバンに始まり、無限の時間をかけて無限のかなたまで広がり、そこではH=0になる、宇宙項ΩΛはゼロで物質項Ωm=1の空間曲率がフラットな宇宙です。
さてそれで今度は少しだけ真空エネルギーを上げてみましょう。
ΩΛ=1ー>1.1と0.1増やします。
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=((1-1.1)+1.1x^2)^0.5,x(0)=1を-5.8から1.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/7E3g3
実行アドレス
スケール因子が0.3あたりでH=0となっていそうです。
『((1-1.1)+1.1x^2)^0.5の根』と入力して確かめますと
x=1/sqrt(11)=0.301511・・・という値がかえってきますので、ここでボトムになっていることがわかります。
そうしてこのカーブの前半分は
H0=ー1
と設定し、妥当な計算範囲を設定すれば確認できます。
実行アドレス
こうしてこの宇宙は収縮から膨張に変化する、ビッグバンなしの
曲率項Ωk=-0.1
というプラス曲率をもった宇宙であることが分かるのでした。
そうしてもちろんこの宇宙もまた「ド・ジッター宇宙」であります。
以上の事から分かります事は、宇宙項ΩΛがΩΛ>1の時には空間はプラスの曲率をもち、スケール因子はゼロに到達する前に収縮速度がゼロになる、ということです。
それはつまり宇宙項ΩΛは物質項Ωmと同様にプラスのエネルギーを持つ、従って空間をプラス方向に曲げる事になりますが、しかしながら宇宙項ΩΛは空間を膨張させる力を持つ、それはこの宇宙がボトムから反転して膨張に移行していく事から明らかなことです。
それは前回示した膨張から圧縮に物質の重力によって反転する宇宙での重力の働きに、働く方向は真逆ですが相当する力の様に見えます。(注3)
こうしてΩΛ>1(Ωm=0は前提条件)の場合は「ド・ジッター宇宙」はプラスの曲率をもち、そうして収縮から膨張に変化する、ビッグバンなしの宇宙を表すことになります。
そうしてこれはすでに前回「アインシュタインが目指した宇宙」で紹介したビッグバンに始まりビッグクランチで終わることになる、
Ωm=2.1、ΩΛ=0
という宇宙、この宇宙はより一般的には
Ωm>1、ΩΛ=0
と表すことができるのですが、その宇宙に対してミルン宇宙を真ん中にして反対側にあるのが今回見ていただいた空間内部には物質が存在しない、ΩΛ>1の「ド・ジッター宇宙」という事になります。
注1:臨界密度
臨界密度(宇宙の)
↑
『現在の臨界密度はハッブルパラメータの現在の値であるハッブル定数を用いて、3*H0^2/(8*Pi*G)となり、1ccあたり10^-29グラム程度の値となる。』
別記事「7 宇宙の運命」によれば
『現時点での臨界密度は1 立方メートル内に数個の陽子がある程度(≒水素原子5個程度らしい:引用注)の密度であり、現代技術では実現不可能な超高真空状態である。』
とのこと。
さて、そんな程度の物質が存在するだけで宇宙の曲率が最大のマイナス値からフラットにまでなるのでありますから、なかなかこれは微妙なものです。
あるいは、現在の宇宙はまさに「その程度に空っぽである」という事でもあります。
追記(9/26日)
1 立方メートル内に水素原子5個程度、、、と書きましたが、少々訂正です。
実際の内訳は
ダークエネルギーが水素原子で3.5個分相当
ダークマターが水素原子で1.25個分
そうしてようやく目に見える(?)物質成分が水素原子0.25個分相当
そうでありますから、本当に目に見える限りの宇宙(=電磁波で見ることが可能な宇宙)は「からっぽ」なのです。
そうして、そのおかげで広い空間をわずか5%程度の物質成分が我が物顔をして活動できる、とそういう具合になっております。
注2
恒星が作る重力場、あるいはBHが作る重力場、そうしてそれに対応する形で作られている空間の曲がり方、それらは全て「重心に向かってテスト粒子を加速させる」という特徴を持ちます。
他方で、一様かつ等方な宇宙が作っている曲率をもつ空間はそのような「特定の方向への加速度運動を引き起こす」という事はないのであります。
注3
プラスのエネルギーを示しながら、それが重力を作るのではなく、いわゆる反重力、あるいは斥力をつくる。
これが宇宙項ΩΛの神秘であります。
そうしてそのような働きを解釈して「ダークエネルギーはマイナスの圧力を持つ」などという事に現状ではなっております。
そうしていわゆる「宇宙初期のインフレーション」を引き起こした力というものはこのような力だったのではないかと想像されています。
それは又ビッグバン宇宙の最初期の膨張速度を決め、ひいては現在のハッブル定数を決めているものでもあります。
注4:ミルン宇宙がマイナスの最大曲率を持つことについて
宇宙は内容物にエネルギーを含まず、何もない場合は開いた空間であることを基本としている、その様にいう事が出来そうです。
そうして閉じた空間が必要であれば、閉じた宇宙にする為にはそれなりのコストが、エネルギーが必要であると主張しているかの様です。
もしミルン宇宙がフラットであったとすると、ほんの少しのエネルギーの存在で宇宙は閉じてしまう事になります。
あるいは言い方を変えますと「フラットである状態はロバストではない」という事になります。
その状態は安定状態とはいえず、少しのノイズで宇宙は閉じたり開いたりしてしまう、そんなことが予想できます。
有限と無限の間を行ったり来たりのチャタリングを起こしてしまう事になります。
そういう意味では、ミルン宇宙がマイナスの最大曲率を示す、というのはなかなか巧妙な事であるとも言えそうです。
注5
上記記事中
『・・・たぶんその極限としてH=0であってもこの宇宙は存在できそうです。
そうしてその宇宙は曲率はマイナスではありますが、膨張も収縮もしていない「静止宇宙」になります。』
と言ってますが、これは間違いの様です。
H=0ですと臨界密度はその定義からゼロという事になりますので、まさに「エネルギーが存在しない空っぽである宇宙=ミルン宇宙」はその時は曲率はフラットになる、そうしてH=0ですから「静止している」のです。
そうしてそのような空間を我々は従来から曲率ゼロのミンコフスキー空間と呼んでいました。
さてしかしながらそのような空間が少しでも膨張、あるいは収縮し始めますと途端に空間の曲率がマイナスになる、という事になります。
そうなりますと問題は「静止しているミンコフスキー空間を加速膨張させ、宇宙のインフレーションを開始した力は何であるのか?」という事になります。
・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク
http://archive.fo/a39Fl
http://archive.fo/UZKrx