風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

ひさびさ箱根の黒玉子 1

2017-02-06 | 神奈川
● prologue

2015年6月、箱根火山の観測史上初めて、大涌谷で小規模ながらも噴火が起こりました。
噴火警戒レベルが引き上げられて、大涌谷周辺への立ち入りが規制される非常事態は、神奈川県民にとってかなりショッキングな事件でした。


それから1年がたち、噴火の可能性が下がってもなお、火山ガス濃度は高いままで、大涌谷はずっと立ち入り規制状態が続いていました。
その間ずっと、大涌谷のことが頭の隅にあり、(今はどうなっているんだろう)と、ときどき思い出していました。
やっぱり箱根は、神奈川県民の心の山ですからね。

2016年7月26日に、大涌谷周辺への立ち入り規制が解除されて、箱根ロープウェイも動き始めました。
ようやく!1年3ヶ月ぶり!
時間制限がかかっているし、ハイキングコースはまだ立入禁止ですが、それでも久しぶりに大涌谷まで行けることになったのです。
神奈川県民にとって大切な湯の元、箱根。みんなホッとしたことでしょう。

噴火してからずっと気になっていた大涌谷。行けるようになったからには、さっそく行きたいわ。
ということでてきぱきと計画を立て、8月1日にミライさんと一緒に箱根ドライブをすることにしました。

ミライさんは、去年箱根が噴火した直後に、大涌谷まで様子を見に行った、フットワークの軽い友人。
その後に入場規制がかかり、それからずっと行けなくなってしまいました。
こういう時にこそ、決断力と行動力が光りますね!

● 大涌谷にまっしぐら

朝に横浜から車で出発。快適に高速を進んでいきます。
小田原まで、電車で行くと結構時間がかかりますが、車だとあっという間。
夏休み期間ですが、休日を避けて平日に行ったところ、道路はスイスイで、一度も渋滞にはまることはありませんでした。
ロマンスカーの停まっている箱根湯本から、くねくね坂道を登っていきました。

まず最初に、大涌谷をめざします。
常にボコボコと硫黄が吹き出ているあの地獄谷が、噴火後にはどうなったのか、とても気になります。
緑深い林の中のカーブを縫うように走って行くと、近づくにつれて硫黄のにおいがしてきました。

道の突き当りが、大涌谷です。
到着して車から降りると、目の前にはモウモウと湯気が立ち上っていました。
高いところまで上ってきたので、普段ならまず下界を見下ろして見晴らしを楽しむところですが、今回は勢いよく上がる煙の方に引き寄せられます。



箱根にはちょこちょこ来ていますが、芦ノ湖の方にばかり行っていて、大涌谷を訪れたのは久しぶり。
それでも、これほど煙が上っている様子を見るのは初めてです。



● 噴煙と硫黄臭

噴火から1年がたち、少しは事態が落ち着いたといっても、地下ではまだまだ活発な火山活動が続いている模様。
硫黄の強いにおいがリアルで、くらくらしそう。
異世界に取りこまれそうです。



煙が出ている辺りの地表は、硫黄が降りかかって、黄色く変色していました。
向かいの山には、立ち枯れの林も見えます。
噴火活動が活発になる1年前は、特に影響もなく緑の木々が生い茂っていたのでしょう。



やはりこうして覗いてみると、恐ろしさが身体の底から、ひしひしとせりあがってきます。
熊本の阿蘇山は、まだ立ち入り禁止。
ここよりももっと激しく煙が上っているのではないかと思います。

ここまでの道はずっとすいていましたが、大涌谷には人がびっしり。
駐車場も私たちが停めたすぐ後に、満車になりました。

みんなも気にしていたんだろうなと思います。
久しぶりにここまで来られるようになったので、私たちと同じく、喜んでやってきたのでしょう。
噴煙の立ち上る火山状況を間近で観察したい人も多いことでしょうし、夏休みということで、老若男女、さまざまな年代の人たちがひしめき合っていました。



それでもまだまだ、危険状態であることは、周囲のあちこちに貼られているポスターを見ればわかります。

しばらく煙を眺めてから、ジオミュージアムを覗きました。
火山岩などが展示されている、地学好きにとって楽しめる内容。
ここも、人でいっぱいでワサワサしていました。



実際には、こんなに混んでいる大涌谷。
地獄めぐりが行われる別府の人は、これを見ても驚かないかもしれませんが、箱根は地獄じゃありません。
これは通常モードじゃないですよ~。
大涌谷の谷底からなら、煙は上がっていますが、山肌からはこんなに噴出していない、レアな光景です。

● なつかしの黒玉子

さて、お目当ての黒玉子売り場へと向かいましょう。
黒玉子キティちゃんがいました。キティちゃん、こんなことまでしてるのね・・・。



いよいよ、お待ちかねの黒玉子との再会ですよー。
売り場には長い行列ができており、はやる胸を押さえて並びます。



大涌谷が閉鎖をするとのニュースを聞いて、反射的に(黒玉子はどうなっちゃうの?)と気になっていました。
きっとみんなも同じ気持ちだったのでしょう。
「30個」とか「50個」とか、大量注文している人が何人もいて、ビックリ。
きっと、ご近所さんに配るんでしょうね。
今回は、妙に人々とのシンパシィを感じます。



黒玉子ゲット~!
熱いくらいにほっかほか。火山の地熱を感じます。

● さっそくいただきます

さて、熱いうちにいただきまーす(^O^)♪
真っ黒ですすけており、持つ手も白くなりますが、そんなの気にしません!



真っ黒な殻をむくと、ツルンと真っ白な玉子が顔を出します。
外側は火口から取り出したように真っ黒ですが、割ってみると普通の白い茹で卵。



黒と白の、いいコントラストです。



あちこちに置かれている黒玉子椅子と、そっくり。
どの黒玉子椅子にもすでに人が座って、黒玉子を食べています。椅子取り競争には勝てません。



おいし~い。久しぶりに食べました。
普段、標高の高い大涌谷までやって来たときには、たいていエンドレスな山道カーブで車酔いして、何も食べられなくなっています。
でも今回は、ミライさんの運転が上手だからか、楽しくおしゃべりしてこれたためか、くねくね箱根カーブを通っても気持ち悪くはなっておらず、無事に食べられました。
「黒玉子って、本当に箱根だけなのねー」
「ほかは温泉玉子だしねー」

黒玉子を一つ食べると、7年間長生きできると言われています。
「別に、そんなに長生きしたいってわけじゃないけど」
「寿命よりも、健康が大切だよね」
と、妙に現実的な話をしながらも、おいしくて、お互い2個続けて食べちゃいました。
14年間、寿命を延ばしたわ~。健康も一緒に延びますように~。

● ロープウェイと作業員

再開したロープウェイが、人々をぎゅうぎゅうに乗せて動いているのが見えます。
そのもっと手前の方に、火口の方へと続く太いワイヤーがあります。
その太いワイヤーは、作業員たちを乗せるゴンドラのよう。
ヘルメットと作業着姿の作業員の姿を見つけて、近くの係員に「あの人たちは何をしているんですか?」と尋ねました。

下まで降りていって、火口周辺を調査したり、吹き出し口を岩などが塞いでいた場合には、動かしたりするのだとか。
「硫黄は大丈夫なんでしょうか?」と尋ねると、「とりあえずガスマスクはめいめい持参しています。今見る分には、誰もしていないので、今は大丈夫そうですが。
下で作業しているうちに気分が悪くなる人もいるので、本当に様子を見ながらの作業になります」とのことでした。
火口調査を行う方々はみんな大変ですね。気をつけて下さい!

久しぶりの箱根は、想像していたよりもはるかに荒々しく、ありあまる生命力をふんだんに放出していました。
火山と言ったら、ハワイのキラウェア火山やイタリアのベスピオ火山。
行ったことはありませんが、どこもこういう感じなのかしら。

● 大涌谷ラッシュ

駐車場を出て下りの道に入ると、そこには100台ほども駐車場待ちの車が列を作って待っており、なかなか列の末尾にたどりつけないくらいでした。
行列の中には、路線バスも2台いました。
私たちが入った時には、空いていたのに、これだといつ駐車場までたどり着けるかわかりません。
早目に来て、正解でした。

やっぱり、みんな箱根のことが気になっていたんだろうと思います。
大涌谷まで来れる日を、今か今かと待ちかねていたのでしょう。
繰り返しますが、神奈川県民にとって、箱根は大切な温泉処。
ここで温泉デビューをした県民が多いのではないでしょうか。

といっても、神奈川県下だけではない様子。駐車場内の向かいの車は、なにわナンバーでした。
大阪から?まあ夏休みですからね~。



● はじめての箱根神社

次に向かったのは箱根神社。
箱根に来ると、必ず道路の赤い大鳥居をくぐり、芦ノ湖にある赤い大鳥居を写真に収めますが、そういえば肝心の神社をまだお参りしたことがありません。
大涌谷から芦ノ湖まで下って行きました。



手を清め、苔むした石段を登った先に、神社はあります。
その途中にあるお社は、まだ新しいものでしたが、お社を守る一対の狛犬の古めかしさに引かれて、参拝。

この狛犬、いいわ~。ちょっと修復しているけれど、デザインもオリジナルでバランスも良くて。
明治40年のものでした。
ぐるりと狛犬を眺めた後、参拝をし、「あれ、そういえばここに祀られている神様って?」とキョロキョロ探す私。プライオリティが逆ですね。
そこは曽我神社。曽我兄弟を祀る神社でした。



「曽我兄弟って、お兄さんが十郎で、弟が五郎なのよね。順番が逆じゃない?
あと、一郎から四郎と、六郎から九郎はどこにいったのかしら?」と私。
「『真田丸』みたいじゃない。弟が源次郎で兄が源三郎。イチローも長男じゃないし」とミライさん。
むむ、確かにその通り・・・。



そうして本殿へ。立派ないいお社です。
古木に守られて、全体的な空気がとても心地よかったです。
外国人団体ツアー客が来ており、スペイン語の通訳さんがついていました。



絵馬にも、縦書きや横書きで、さまざまな言葉での願い事が書かれていました。
「ワーゲンS オフ会成功祈願」とか。どんな会なんでしょうね。

● 神楽殿で獅子舞

境内で、笛や太鼓の音色が聴こえてくるので、音のする方に行ってみると、神楽殿で獅子舞が演じられていました。
2人がかりの獅子舞。獅子舞というと獅子頭を思い浮かべますが、実際には獅子の舞のことなんですよね。



剣を持ったり衣替えしたりしながら、舞台の上を所狭しと動いて舞っていました。
周りを取り囲んでいたお囃子係の演奏者は、皆さんご年配者でしたが、演舞後に獅子頭を取った姿は、青年2人でした。

その横では小笠原流の野立て。風流です。
苔むした狛犬が見ていました。



境内には杉の巨木が何本も立っていて、神聖な雰囲気。
生命のパワーを感じます。
今は山全体が活動中ですから、なおさらそう感じるのでしょう。



参道の石段をまっすぐ降りていくと、芦ノ湖にたどり着きます。
そこまで行ってみました。
さっきまでいい天気だったのに、突然パラパラと雨が降ってきました。
ここの神社は天照大神を祀っていますが、摂社の九頭竜神社で、水を司る龍神を祀っているからかもしれません。



● 平和の鳥居

どんどん石段を下りて、大きな鳥居のところまで来ました。
いつも遠景でしか見たことがありませんでしたが、こうなっているんですね。



鳥居を下から見上げます。
突然の雨に、人々が急いで去り、静かになった湖畔。



鳥居のところから湖を眺めて、願いをかけました。



日本語と英語で書かれた石碑がありました。
英語の石碑って、珍しいですね。
癖のある字体の日本語が読みづらくて、「えー、なんて書いてあるんだろ」と私が難儀しているうちに、バイリンガルのミライさんは英語をささっと読んで、すらすら説明してくれました。
できが違う・・・!

湖上の水中鳥居は、昭和27年に戦後のサンフランシスコ講和条約締結を記念して建てられたもの。
昭和39年には、鎮座1200年と東京オリンピック開催を記念して、「平和鳥居」と名前が変わったそうです。
鳥居にはサンフランシスコ講和条約に調印した吉田茂の字で「平和」の扁額が掲げられているとのことです。
うーん、これは日本語でも難しい説明でしたね。

● 剣道少年たち

小ぬか雨の中、剣道着姿の少年たちが大勢集まって、神社の敷地内で竹刀の素振りをしていました。
みんな、雨を気にせずとても元気。
剣道の奉納なのか、チャンバラなのか、よくわからないくらいに夢中でした。



その2に続きます。



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