風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

鎌倉で侯爵邸と流鏑馬を見る-2

2020-01-24 | 神奈川

その1からの続きです。

● 鶴岡八幡宮へ

一条恵観山荘を出て、再びバス通り沿いの細い歩行者通路を歩き、八幡宮へ向かいました。
徒歩で30分ちょっとかかります。
バスに乗る人が多い距離ですが、私たちは元気に歩いて行きました。

横浜国大付属小学校の前の道から神社の敷地に入ります。
門には白黒の幕が張られて、中に続く道に馬場が整備されていました。

時間は12時20分。流鏑馬が始まる40分前です。
観る場所を探して、本殿正面で時間になるのを待ちました。
開始10分前には、本殿へと続くすべての参道は閉鎖されました。
閉鎖されることってあるですね!初めて見ました。

その頃になると、辺りは大勢の人でごったがえしていまました。
かつて、元旦の初もうでに来たことがありますが、その時の途方もない激混み状態を思い出します。
私たち一般人は、立って陣取っています。ご招待席もすべて満席。

● 参道封鎖

開始少し前には、参道に縄が貼られて全面閉鎖され、ムシロの覆いを取って馬場にしました。

● 流鏑馬の流派

招待席のところに、小笠原流の特別席がありました。
作法かな?と思ったら、流鏑馬の流派でした。

鶴岡八幡宮で年に2度例大祭で開催される流鏑馬。
4月の鎌倉祭りでは武田流、9月の例大祭では小笠原流。
今回は小笠原流なんですね。

神官が、馬場と見学者たちをお祓いします。
この後、こちら側のお祓いもしていただきました。

● 拝殿神事

さあいよいよ始まるわと思いましたが、そういうわけではありませんでした。

本殿で、神事である流鏑馬を行うという宣誓が述べられます。
射手の装束姿の駐日イタリア大使、ジョルジョ・スタラーチェ氏が、流ちょうな日本語でを奏上していました。

 
拝殿に向かう人々

その様子が、日本語と英語のバイリンガルアナウンスで流れ、馬場で待つ人々のもとにまで届きます。
流鏑馬を英語で言うと、horseback archeryなんですって。
喋っているのは巫女さんでした。
見学者には海外の人も多いんですね。
確かに馬場の向こう側には西洋人のご夫婦、そして私の後ろには、大柄の西洋人男性がいました。

 
馬場へ向かう射手の行列

神殿で参拝を済ませ、馬に乗った射手が次々にやってきます。
当時の装束に身を包み、絵巻物から飛び出てきたよう。

● 流鏑馬とは

さて、流鏑馬(やぶさめ)の説明をします。
流鏑馬とは、疾走する馬に乗りながら、的に矢を射る、日本の伝統的な騎射儀式。
馬を馳せながら矢を射ることから、初めは「矢馳せ馬(やばせうま)」と呼ばれていたのが、「やぶさめ」になったといわれています。

 『吾妻鏡』には源頼朝が西行に流鏑馬の教えを受けて復活させたと記されており、鎌倉時代には武士の嗜みとして、盛んに稽古・実演されました。
執権・北条時宗(元寇を退けたあの人ですよ)の時代までに、鶴岡八幡宮では47回の流鏑馬が納められたとされています。

そういったわけで、ここ鶴岡八幡宮での流鏑馬神事は、かなり大きな意味を持っています。

● 流鏑馬の行われ方

馬を疾走させる直線の道が馬場で、長さは2町(約218メートル)かそれ以上。
進行方向の左手に、間を置いて3つの的が立てられます。
的は方1尺8寸、厚さ1分ほどの檜の板。
馬場から的までの距離は5m前後、的の高さは2m前後。
狩装束を纏った射手は、馬を疾走させ、連続して的に矢を射かけます。

● 「射手」の読み方

ところで、「射手」は『魔弾の射手』のように「しゃしゅ」と読むと思いますが、流鏑馬では「いて」と読むそう。

「射手座の"いて"ね!」と言ったら、射手座の友人は「私は『魔弾の射手』を”まだんのいて”って読んでたよ」と言いました。
いて座あるある?

● 立ち見のつらさ

すべてが整うまでに1時間かかり、実際に流鏑馬が行われる時には、2時過ぎになっていました。
その間ずっと立ちっぱなしなので、脚はかなりだるくなってきています。
しかし、前には馬場、後ろにはびっしりと人垣ができており、もはや離脱はできません。
いよいよ始まりました!馬場の端から、馬が疾走してきます。


砂を蹴散らして疾走する馬

速い!



速すぎてよくわからない間に、初めの一巡が終了。

● 流鏑馬の声

みんな「イーアオ~!!」など大声で雄たけびを上げながら走ってくるので、びっくりしましたが、それもまた作法の一つなんだとか。

流鏑馬を行う際に、射手は声を掛けます。
掛ける声も、決まっているのだそう。
一の的手前・・・「インヨーイ」と短く太く掛ける
二の的手前・・・「インヨーイインヨーイ」と甲声でやや長く掛ける
三の的手前・・・「インヨーイインヨーイインヨーーイ」と甲を破って高く長く掛ける。
略式的には「ヤアオ」「ヤーアアオ」「アラアラアラアラーーッ」などと掛けるそうです。

● 危なくないの?

馬場の両側に観客はいます。
皆さん訓練を積んだ優れた射手のため、的に当たる成功率は高く、外しても惜しいレベル。
間違っても、人に当たることはありません。
当たったとしたら、もはや、故意的な事件のにおいです。

● 神事は3人

馬は全部で6頭いるのに、3人だけでいったん終了しました。
え、どうして?ほかのお馬さんは?

流鏑馬神事として行われるのは、3人と決まっているそう。
それにのっとり、3名の射手は鎌倉時代の狩装束姿、18名ほどいたその後の射手は、江戸時代の軽装束姿と、着ている衣装の時代も異なっていました。
細かい決まりがあるのでしょうね。

● いったん解除

流鏑馬は3回に分かれて行われます。
1クールが終了した時に、短い休憩時間があり、参道が通れるようになりました。
この行事があるとは知らずに来た参拝客も大勢いるでしょうから、あまり閉鎖しておけないのでしょう。
それでも、またすぐに閉鎖になり、さらに神事は続きました。

TVで見ることはありましたが、実際に見ると、馬の速さはまちまちだと気がつきました。
割とゆっくり目の人から、激走していく人まで。
速く走る人は、腕に自信があるんでしょうね。

爆走していく馬は、馬場の砂を蹴散らしていくため、通った後、辺りはモウモウとします。
まさに砂かぶり席。相撲以外にもあったとは。


外国の射手もいました。「ジャン・ドナデュー射手」とアナウンスされていました。
あれ『のだめカンタービレ』に出てくる人?聞き間違っちゃったかも?


まさに、矢のような速さ

(動画)2019.10.6 鎌倉鶴岡八幡宮での流鏑馬-1

(動画)2019.10.6 鎌倉鶴岡八幡宮での流鏑馬-2


● 射終えた射手たち

射終えて馬場末から馬場元に戻る射手と馬たち。
馬場の両側から惜しみない拍手が注がれます。

 
射手は本殿前で一礼します


● フル堪能

全てが終了したのは3時でした。
もう脚がくたくたですが、少しずつ見学者が減っていったため、最初は前から3列目だったのが、終盤には最前列になり、かぶりつきで見ることができました。 

ローカルニュースなどでは、上手な人の映像を流すので、結構な頻度で的に当たらないということも、実際に見てわかりました。
それでもすごいことですが。

 友は「やぶさめは知っていたけど、流鏑馬って字は読めなかったので、一人で来てたら表示を見てもわからずスルーしてたと思うわ」と喜んでいます。よかった。

● 遅いランチ

しかし、おなかが空きました。
大勢の人の波の中、ゆっくりと若宮大路を歩いて、キャラウェイに向かいます。

 

ランチタイムを過ぎた変な時間でしたが、それでも外で待っている人がいます。
順番を待って中に通されました。

女性からの人気一番というチーズカレーを注文。
周りの人が食べているご飯の量にびっくりして、ライスは少なめをチョイス。
それでもけっこう盛ってもらいました。大盤振る舞いが人気のお店です。

ルーをライスの上によそった段階で、濃厚な粘りを感じて、期待感が高まります。
うん、おいしい!チーズ入りカレーって、食べるの初めてかも。
とろっとろチーズでカレーのコクが深まって、う~ん、止まらない~!
これは通えるおいしさです。

● キャラウェイ

 (店名のキャラウェイって何だろう?)と気になっていたら、帰りのレジのところでわかりました。
ヒメウイキョウ(姫茴香)というセリ科の香辛料だそうです。
答えがわかって頭がスッキリ~。数粒噛んだら、お口がスッキリ~。
ニッキのような味でした。

次に、友人は白玉の茶房でデザートを食べたかったようですが、ラストオーダー時間の4時を過ぎていたため、あきらめました。

● モータープール

駅に向かう途中で、ホテルニューカマクラの前を通ります。
「ここは、映画のロケ地にもなったんだよ」
「えー、観てみたい」
(V6の岡田くん主演の『おと・な・り』(2009)という映画でした)

ホテルの前の駐車場には、「MOTOR POOL」と書かれています。
「プールっていうのにプールじゃない」とつぶやいたら、友人は
「えっ、何言ってるの?」とあきれ顔。
「モータープールって、車停めるとこやん!」
そう、友人は関西ルーツなのでした。

関西では、駐車場はモータープールと書かれると聞いて、ビックリの私。
通りに「P」の標識が出ているのを見て、
「ほら、Pってプールじゃない!」と自信満々の友。
「パーキングでしょ!」と食い下がる私。
「あ、そうか、気づかんかった」

私が知る限り、関東でここ以外では、モータープールの表示は見ないですね。
思わぬところで、関東と関西の違いを知りました。

満足感いっぱいだし、脚がくたびれていので、薄暗くなった6時近くに帰途につきました。

● epilogue

この日のメインは旧華頂宮邸の見学で、合わせて一条恵観山荘も見学しましたが、思わぬ偶然から流鏑馬を見ることができて、とてもラッキーでした。
ずっと生で観てみたかったのです。
帰宅しても、興奮冷めやらずにポーッとしていました。

流鏑馬神事で射手によって射抜かれた板は「的中的板」といって、家運隆昌・商売繁盛の縁起ものとされます。
若宮大路や小町通りのお店に寄ると、店内に的中的板が飾られていることがあります。
これまでその板を見かけて、どんなものかお店の人に教えてもらったりしていたので、(これなのね)と実際に分かったのも、また嬉しいことでした。

普段は観られないものを、この目にしっかりと焼きつけられた一日でした。

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