風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

雪の金沢、北の幸 2-(2)

2016-04-20 | 中部(北陸)
その1からの続きです。

○ ゴジラが打ち砕く

白山比神社からの参拝帰り、またもや北陸鉄道を端から端まで乗って、野町駅に降りました。
朝と同じ場所ですが、数時間の間にずいぶん雪が積もっています。
悪天候のため、もう遠出はせず、辺りを散策しながら金沢駅に向かうことにしました。



交番の前に、バットを構えた地元出身の松井選手のポスターが貼られていました。
「打ち砕け!振り込み詐欺」
いやー、ゴジラだけでも迫力満点なのに、すごいコピーですね。
そうか、詐欺師とは書かれていないから、人を打ち砕くってことじゃないんですね。
雪の中、ポスターの前で足を止めてそんなことを考えます。

○ 九谷焼の窯元

行きは初めての道なので、わかりやすい大通りを歩きましたが、今度は一本それた細道を選びました。
細い水路沿いを歩いていくと、九谷焼の窯元、久谷光仙窯が見えてきました。



ここで、芸術的なお椀の数々が作り出されているんですね。
初心者も絵付け体験ができるそうです。
自分が描いた九谷焼が作れるなんて、すてきです。

○ にし茶屋街

水路のそばにある、にし茶屋街に向かいました。



前日に訪れたひがし茶屋街は有名ですが、(東があるなら西もあるのでは?)と思ったら、やっぱりありました。
京都でも(東寺があるのなら西寺もあるはず)と、同じ理屈で西寺の跡を見に行ったことがあります。
ほかに主計町茶屋街もあり、金沢の町には、茶屋街が3箇所もあるのだそう。



ひがし茶屋街ほど観光客はいませんでしたが、その分静かでいい感じ。
古めかしい建物が並びながらも、きれいで清潔感がある通り。
金沢城で感じた「古そうだけど新しい」感に満ちていました。

○ 室生犀星との共通点

さらに裏道を通り、室生犀星記念館の前に着きました。
金沢の人なんですね。
小学生の頃に、彼の著作『杏っ子』を読みましたが、早すぎたようで、さっぱりわかりませんでした。
今読み返したら、前とは違う感想を持つかもしれませんが。
泉鏡花記念館のような日本家屋かと思いきや、モダンな建物でした。



そんなわけで、作家としてのこの人のことはイマイチなんですが、誕生日が同じなので、親近感があります。
彼のペンネームは犀川から一字もらったことを知りました。
動物のサイが好きなのかと思ってた…。

○ 加賀藩の武家屋敷

予想外のプラン変更。近くには有名な忍者寺がありますが、事前予約をしていないため、行けません。
そこで、武家屋敷の辺りを散策することにしました。

水路沿いを歩いていくと、少しずつ人が増えてきました。
突然の雪の日とあって、どこも人の出足が少ないだろうと思いましたが、ここの辺りは天候にお構いなく、人は大勢います。



加賀藩の武家屋敷があった、風情たっぷりの界隈。
土塀の小道沿いの壁には、樹木の雪対策のように藁がけがされていました。
土がはがれ落ちるのを防ぐもので、冬の金沢の風物詩となっているそうです。



武家屋敷は、一軒二軒だけ、ぽつんとあるのかと思っていましたが、通り全体にずらりと立派なお屋敷が続いていました。
独特の非日常感を醸し出しています。こんなに雰囲気がいい場所だとは思いませんでした。
21世紀美術館の次に人がたくさんいた場所。真逆のテイストですが、どちらも人気の観光スポットなんですね。



中に入ってみようとしたところ、団体客でいっぱいだと入場制限がかかっていたので、驚きました。
そこまで人がいっぱいとは。
あっさりあきらめ、混雑を避けて、人が少なそうな方へと移動することにしました。



○ 本降りの雪

雪はやむ様子もなく、どんどん本格的な本降りになってきてした。
強い風の中、長傘を差していても、顔にまで雪が飛んできます。
写真を撮る余裕さえ、なくなってきました。
手ではらうと落ちる雪は、雨よりもしみにくくていいのですが、ひっきりなしについて、はらってもはらっても追いつきません。
そのうちにコートに染み込んでいって、服が徐々に重くなります。
さらに、足元からかなり冷えてきました。
手足の指がかじかんでいます。転ばないようにしないと。
ああ、つま先用カイロを持ってくるんだったわー。

「北陸の雪は半端なかったよ。溶けずに黙々と積もって行く感じ」と、友が言っていました。
単身赴任をしたら、冬は暗くて引きこもりになりそうです。



○ 足軽の資料館

そんな雪にめげそうになりながら、人気の武家屋敷から少し離れたところにある足軽資料館へと向かいました。
武家屋敷は別の場所でも見たことがありますが、足軽資料館って聞くのも初めて。



地図で見つけて、気になっていたのです。なんたって足軽ですからね!
人を選びそうな場所で、今度誰かと北陸を旅することになっても、同行者が行きたがるとは限らないので、今のうちに行っておこうと決めました。



資料館といっても、現代風の四角いコンクリの建物ではなく、足軽の家を再現した江戸風平屋なので、臨場感があってウキウキします。
足軽をフィーチャーした場所はなかなかないから、レア度高いわー。テンション上がるわー。



土間に入ると、菅笠と蓑がかかっていました。さすがは雪国、笠地蔵の世界です。
無人の建物の中にお邪魔しました。



外はしんしんと降り積もる雪。時代劇の世界に入ったみたい。
入場制限を行っていた武家屋敷とは打って変わって、みごとに誰もいません。
足軽の家をまるごと独り占め。のびのびと満喫できました。



なんと、明治以降の一戸建ての原型になった家のつくりだそうですよ。
私たちは、足軽の家の派生形に住んでいるわけですね。案外身近じゃないですか。



足軽というと、武士の中でも下の階級になり、普通は長屋暮らし。
でも、加賀の足軽は、家付き一戸建ての平屋に住んでいたそうです。
恵まれた、いい暮らしぶりで、快適そう。



しかし足軽の家には暖がありません。
囲炉裏の跡はありますが、今は火はついていません。
雪風はしのげるものの、ますます寒くなるばかり。
外に出ると、私一人だけの足跡がつきました。しかも帰りの分だけ。
家の中に入ったのはほんの10分くらい前のことでしたが、その時の足跡はもう見えません。

東京では、雪が降ってもそんなに積もりませんが、金沢ではみるみるうちに雪が降り積もっていくんだなあと、その違いを実感しました。



○ 降りしきる雪

足軽の家に満足したところで、この辺の観光は切り上げて、そろそろ駅へ向かうことにします。
前日の散策で、おおよその町の距離感はわかったつもりでいましたが、この時はちょっとぬかりました。
前日は雨で、この日は降りしきる雪。
雨から雪に変わったことで、歩く時間に影響が出たのです。

バス通りまで思ったよりも距離があり、そのうちに手足の指先がかじかんで、感覚がなくなってきました。
しも焼けにはなりたくないなあ。



花に雪がかかってきれい。美しさに一瞬寒さを忘れますが、花だってこごえています。



雪は、降りながら風に乗って舞い上がり、まつげにつくほど自由自在に飛び交っています。
そんな雪が踊りまくる中、ひたひたと道を進んでいきます。



途中の大きなお寺の立派な門の下で、一息ついて雪を払いました。
スローモーションのように雪が降るさまがドラマチックで、引き込まれそうでした。
真宗大谷派の専光寺。この辺りのお寺は浄土真宗が多いようです。北陸は主流なのでしょうか。



ライオンズマンションの前には、ライオンがにらみをきかせていますが、親子バージョンを見かけました。
いつも一匹なので、親子でいるのが珍しいなと思います。北陸だから?
寒いから寄り添っているようでした。
考えてみれば、ライオンって普通は雪の降る場所にいないですね。。。



酒店に飾られていた「俺の生きがい」。地元金沢の麦焼酎です。
名前がいいですね(笑)。そう言って壺を抱え込む男性が目に浮かぶようです。

○ 駅にたどりつく

アーケードがある道に入ったときには、ほっとしました。
バス通りに出ましたが、もう駅も見える距離なので、歩き続けることにします。
屋根がある通りですが、それでも雪が四方八方から舞い込んでくるため、傘は差し続けました。



そうしてようよう、駅に着きました。
ふー、まさかここまで本格的に北国の雪を味わうなんて。

雪が枝につもって白い桜のようになった樹木。
絵本でみる絵のようで幻想的でしたが、そばまで行ってみる身体のぬくもりと心の余裕は、もうありませんでした・・・。



前日は雨をバックに見た鼓橋を、この日は雪の向こうに見ます。
ええと、これは巨大なやかんでしょうか?
雪が積もって、なんだか立体的になりつつありました。



時計を見ると、14時半になっていました。
ランチをゆうに過ぎた頃。
それでは行ってみましょうか。

一人旅をする時は、つい食をおろそかにしがちな私。
一人でものを食べても味気ないので。
ただ今回は(北陸に行くなら、のどぐろを食べたいな)と思っていました。
東京のほうでは、普段、なかなか口にする機会がないからです。

○ のどぐろハッピー

前日に仕事で会った人が「ランチにのどぐろを食べたよ」と教えてくれました。
回転寿司店にあるとのこと。
「日曜昼は混んでいて、1時間近く並んだけど、明日は平日だから、帰りの時間を考えながら行ってみたら?」
ほかの北陸出身の友人たちからも、回転寿司を勧められていたので、根性を出すことに。

実は私、ひとり回転寿司をしたことがありません。
そもそも一人外食をしたいタイプではないので、今回のミッションのハードルの高さに、かなり腰が引けていますが、もうこの旅では、ここでしか食べるチャンスがないのどぐろなので、悩んではいられません。
のるかそるか。行くか行かないか。人生は二択の連続です。

緊張しながら店の前まで行くと、並んでいたのは思いがけなく一組のみ。
もうお昼の時間も過ぎている、半端な時間が幸いしたのでしょう。
さほど待たずに、カウンターに通してもらいました。
わあ、ラッキーだわ。

隣にも、おひとりさま女性が座りました。
(おお、仲間ね)とシンパシィを感じましたが、私がメニューを見ている間に、その人はちゃっちゃと3皿ほど頼み、すぐに食べ始めていました。
わあ、頼みなれているわ。
対して何かにつけてぎこちない私。ピノキオのようにぎくしゃくとオーダーします。
カウンターで、目の前に寿司職人がいるのに、声掛けをしてオーダーするのではなく、タッチパネルから注文するシステムだったので、女性一人でも入りやすいお店で、助かりました。
隣の女性はぱくぱく食べ続け、あっという間に7皿あけて、さっと帰って行きました。
男前~!

でも私も、お目当ては決まっているので、そんなに時間はかけません。
さっそくのどぐろ三点盛り(生、炙り、漬け)をオーダー。

手前がお刺身、真ん中は漬けにぎり、奥が炙り塩です。
食べ慣れた首都圏の回転寿司よりも厚切りなのが嬉しいところ。

う~ん、脂がよーくのった、とろけるおいしさ!
本当に柔らかくてやさしい触感。とても魚とは思えないほどです。
のどぐろにつられて、私の口もとろけそう。



たたき三点盛りは、かつお、ぶり、びんちょうまぐろ。
どれもいい味です。このお店では、何を頼んでもおいしそう。



おいしさと感激と初体験のテンションで、2皿で早々と胸一杯になりましたが、せっかくだからと、さらにのどぐろ2巻を頼みました。



とろっとろです。幸せ~!
あの感触は、どう言い表せば良いものかわかりません。。。

教えてもらった通りに、回転寿司屋で食べられて、満足。
緊張しながら単身で料亭に行かずに済みました。幸せをかみしめてきたわ~。

実は、話は聞いていたものの、一人で回転寿司に入るなんて無理だとあきらめていましたが、その店でのどぐろの寿司を食べたと教えてくれた人の話を聞いたことで、やはり行きたいところと、再び予定に入れました。
さらに2日目は雪で、気多大社行きをあきらめたので、時間に余裕ができて(これなら並べる)と思いました。

駅に着いたのが3時近かったので、平日の昼と夜の合間の、一番空いている時間に割とあっさり滑り込めたのもラッキーでした!

料亭はとても一人では無理だったので、本当によかったです。
のどぐろ、めちゃ美味しかった~!我が家で養殖したいくらい(笑)!



駅の外はさらに雪が積もって、氷の世界へと近づいていましたが、もう外は歩きません。
おなかも満ちて身体も温まり、すっかり余裕ができました。

○ おみやげ

冷え切った体が温まって、おいしいものを食べられて、ハッピー!
ひと心地ついたところで、みんなへのお土産を探しましょう。

金沢には、おいしいお土産がたくさんありますね。
駅のお土産コーナーで一番人気の、圓八のあんころ餅を買ってみました。
賞味期限は当日中ということで、自分用にします。

金つば(金つながりで?)や、ひゃくまんさん菓子などを買ってから、はっと思い出します。
(そうそう、母に治部煮と笹饅頭を買わないと!)



加賀麩 不室屋(ふむろや)で、お麩饅頭と治部煮を買いました。
本場の味です。自分用もゲット。幸せ~。
生ものなので、帰宅するまでの時間分の保冷剤を入れてもらいました。

○ 幻の加賀料理本店

みなとみらいに、時々親と行く加賀料理店・大志満があります。
そこで、加賀の麩饅頭と治部煮の味を知りました。
せっかく金沢に来たことですし、本店はどこにあるんだろうと調べてみました。
するとなんと、こちらにお店はなく、店舗は首都圏にあるだけだとわかりました。

加賀料理店なのに加賀にないなんて。そんなことってあるんですねー。
たしかに金沢の友人に話しても「聞いたことない店名なあ」と首をかしげていたのです。
でも歴史はきちんとあり、元々は山中温泉の旅館で出していた料理だとのこと。
その旅館がもうないようですが、味はいいので、これからもお店には行こうと思っています。

○ 雪はあとかたもなく

そうして帰りの北陸新幹線に乗り込みました。
金沢、さようなら。
窓の外を眺めても、雪景色がよくわからないくらい窓に雪が降きつけていましたが、富山を超えて長野に入ると雪は雨に変わりました。
更に関東に入ると雨も止んで、降り立った東京は何事もなかったかのように、からりと乾燥した冬日でした。
日中、雪の中をさ迷い歩いていたのがうそみたい。



帰宅して、圓八のあんころ餅を、お茶と一緒にいただきました。
柔らかいお餅と甘すぎないあんこが癖になる味。
お麩饅頭もいただきました。おいしくってニコニコー。



○ epilogue

あっという間の1泊2日でした。
改めて金沢って、いい場所だなあと思います。
新幹線のおかげで、気分的にこれまでよりもぐんと距離が近くなった感じがします。

暖冬だったのに、突然予想外の大雪に見舞われて旅程変更となりましたが、それはそれ。
難儀をしましたが、古都金沢に降りしきる雪と辺りの雪景色を見られたので、後で考えれば結果オーライです。

巡るによし、食べるによし、やはり古都は味わい深いですね。
次に北陸を訪れる時には、能登半島にも行ってみたいなあと思います。
かなり久しぶりの金沢。町を散策して、改めてファンになりました。


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2 Comments

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Unknown (アネッティワールド)
2016-04-21 14:55:06
雪景色いいですね。
撮りたくなります。
寒いのは苦手だけど、こんな景色なら
全然へっちゃらかもしれません。

来た時の足跡が残らないくらい
降ってたんですね。

帰りの足跡だけ・・・
なんとミステリアスな。

推理小説のトリックの一コマみたいです。
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アネッティワールドさん (リカ)
2016-04-21 16:43:56
雪景色、寒くなければいいんですけれどね~。手も足もかじかんで、ブルブルでしたよ(^_^;)
北陸は雪が深い場所だなあと身にしみて感じました。東京だと、ちょっと降ってもすぐに溶けてしまいますが、金沢ではみるみるうちに積もっていって、違う景色に変わっていきました。
今写真を見返すと、なかなか幻想的ですけれどね!

足跡が消えた・・・犯罪のにおい・・・!?(笑)
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