風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

北海道・岬と神社と馬を見に(積丹~襟裳) 4-(2)

2013-09-16 | 北海道
◇ 4th day-(2)[浦河→様似→襟裳岬→→→苫小牧]

◯ 一路えりもへ
◯ えりも岬到着
◯ 帰りはこわい
◯ 浦河神社の石段
◯ 倒木
◯ 台風ショック
◯ 命からがら
◯ 白老牛ステーキ店「びび」
◯ なごみの湯
◯ 夜のはくちょう饅頭

4-(1)からの続きです。今回は、怖い思いをした話です。

◯ 一路えりもへ

シベチャリ橋を通った後、車はさらにえりも岬を目指して走りつづけました。
だんだん雨がひどくなってきます。
海沿いの道なので、波の荒さをダイレクトに感じ、(やっぱり北海道は、波が高いのね)と思っていました。



気がつけば、道を走る車の数も減っています。
「結構風も強くなってきた」と梢さん。
ハンドルをギュッと握りしめます。



浦河町の辺りで、車の前を三台のバイクが走るようになりました。
全員仙台ナンバーなので「きっとえりも岬に行く旅行者だね」と、親近感を覚えました。
嵐の中の友。このまま、私達の前で、岬までリードしてほしいわー。



二人でどんどん心細くなり、心配を募らせていたところだったので、ほっとしました。
私達よりもタフそうな男性3人組。
旅は道連れ、世は情けです。

ただ、心の頼りにしていたバイク3台は、襟裳(えりも)前の様似(さまに)で突然ガソリンスタンドに入りってしまいました。
ええ~、いなくなっちゃうの~。
寂しくなる私達。

給油後にたらあとを追ってくるかと思いましたが、そんな様子もなさそう。
「やっぱり嵐だから、やめないかってことになったんじゃない?」
なんとなく声が震えてしまう私達。
それでも、悩みながら進んでいきます。



バイクがいなくなり、突如さびしくなった道。
車の数も少なく、私達の前を走る車がいたかとおもうと、スッと道からそれていなくなってしまいます。



大丈夫かしら・・・?
道を知っている梢さん、「もうちょっと、あとちょっとで到着するから・・・」と、うわ言のように言っいながら、ハンドルを握っています。
どんどん雨風は強くなり、ザーッという音に黙りこむ私達。

灯台がありました。灯台公園ですって。
でもそのまま通り過ぎます。



◯ えりも岬到着

いよいよ岬が見えてきました。
荒れ狂う海がさらに近くなります。
「この辺りではアザラシが見えるんだけど、さすがに今日は無理ね」

前を走っていたライトバンがいましたが、さらに道を進んでいきました。
「この岬の下に一つ集落があるから、そこの人なのかも」



ようやくのことで到着した襟裳岬。
広い駐車場には、車が一台も止まっていません。
大雨が風にあおられ、アスファルトの上を、ザーッと波のように流れていきます。

ものすごい風に、梢さんの大きく頑丈な車ごと揺らされました。
ここで完全に危険を感じた私達。
「とてもじゃないけど車のドアを開けられないね。もういられないから、今すぐ帰ろう」と、車をUターンさせる彼女。



駐車場の先には、灯台と風の施設「風の館」が見えました。
風の館には、電気が付いているように見えましたが、こんな日に人は常駐しているんでしょうか。
車がないので、点灯させているだけなのでしょうか。

動画を撮ったものの、追い詰められて切羽詰まった私達の声が録音されており、とてもここに掲載できるものではありませんでした。
観たみんなが、怖くなっちゃうから・・・!

◯ 帰りはこわい

明らかに非常事態だと、本能的に悟ります。
帰り道となり、助手席の私側が、海になると、荒れ狂う波がすぐそばに見えて怖気づきました。
でも、「こわい、風に車ごとあおられる、こんなの体験したことがない」と、相当怖がって余裕が無い梢さんのために、(自分は落ち着かなくちゃ)と心に言い聞かせます。
これまで7,8回襟裳岬に来たことがあるという彼女ですが、こんなに悪天候なのは初めてだそうです。



恐怖を感じての帰り道、数台の車とすれ違いました。
「彼らもやっぱり嵐の中を岬まで行く、命知らずの人たちなのかな?」
「もしくは近くの集落に帰る住民かも。」



考えを巡らせる余裕は、もうありません。
左の海からは荒波が道路を濡らすほどの高さになって押し寄せ、気がつくと、右側の山からは土砂が崩れだして、道路に水が流れ出していました。
「道路が冠水してる!」
梢さんはかなりショックを受けています。
私も呆然。さきほど左の道を通ってきた時には、何事ともなかったんですが、このちょっとの時間の間に地盤が緩んでしまったんでしょう。



「大きな土砂崩れが起きたら、この道路封鎖されちゃうかも」と、切羽詰まった声の梢さん。
ほかに迂回ルートは十勝方面行きしかなく、そうなったらもう一泊するしかないとのこと。
「とにかく、道路が水没する前に、なんとか帰らないと」



緊急事態です。反対車線からやってくる車は、泥水の中を走っており、トラックなどの大型車によるしぶきが私達の車にかかると、一瞬前が何も見えなくなります。
雨で夜になるのが早く、視界が悪くなりそう。
道路には電灯も少ないし、二次災害に巻き込まれるのは避けたいです。





左は荒波、右は土砂崩れ。
だくだくと土砂が流れ出している横を、走っていきます。





かなり追い詰められています。
本当に、危機を感じました。
でも、なにより怖かったのは、土地勘があってハンドルを握っている梢さんでしょう。



カーブに差し掛かり、見慣れないものが目に入りました。
「あっ、土嚢!」
さっきはなかったものが、ずらりと並んでいました。
この短期間に、仕事が速いわ。防災は迅速さが第一です。
「きっと開発局だわ」と梢さん。
北海道開発局ですね。さっきから、あちこちで開発局の車が停まっているのを見ています。
言葉しか知らなかったけれど、行動が早くて、道民の生活に根ざしているようです。

◯ 浦河神社の石段

町に差し掛かったと思ったら、そこは浦河町でした。
パトカーと消防車が出てきてる・・・と思ったら、メインルートと思われる大通りが、冠水で水没していました。



「ああっ!」と悲壮な声を上げる梢さん。
お友達が、この町にいるそうです。
「大丈夫かな。休日だから、うっかり買い出しに出かけて、帰れなくなってたりしないかな」と心配しましたが、自分たちの安全も大事。
通り沿いに、大きな神社がありました。



「この浦河神社の石段を馬に乗って上がるお祭りがあるの」と教えてくれました。
「神社好きのリカさんを連れて行きたかったけど・・・」
今回は、見送ります!馬も大嵐におびえて、馬小屋で震えているでしょう。

喜んで「東京の愛宕神社には、"出世の階段"と言われる石段があってね・・・」と、ひとしきり説明をしましたが、特に興味のない梢さんには「ふーん」と華麗にスルーされました。
梢さん、馬に乗れる人だから、出世の階段を馬で登りきる勇者になれそうなのに。

◯ 倒木

しばらく行くと、スコップ片手に交通整理をしている人がいました。
「あっ、開発局」と梢さん。



どうしたんだろうと思ったら、反対側の道路に、沿道の家の木が、倒れていました。
根こそぎです。
作業をしている人々の横から、土砂が激しい勢いで流れだしていました。



「うわ・・・」としか言えなくなり、あとは押し黙るしかない私達。
衝撃的な光景を、見すぎました。

◯ 台風ショック

あまりの荒天に、さすがに異常事態を感じた梢さんは、途中道の駅みついしに立ち寄り、ネットをチェックました。
「これ、前触れの嵐じゃなかった。本当の台風だった・・・!」
「えっ・・・??」
しばし絶句する私達。

台風って、この日の夕方時点で、東北辺りじゃなかったの?
もう襟裳岬まで来ていたの?
すごく速い速度で、北上したため、私達の訪れとタイミングがぴったり合ってしまったようです。



普段は、台風がたいてい北海道に辿り着くまでに温帯低気圧に変わるため、あまり台風の経験がない梢さん。
動揺して呆然としています。

でもとにかく、帰りを急がないと。
この日、「道の駅三石の温泉」か「新冠のレコードの湯」に立寄る計画を立てていてくれた彼女。
「露天風呂から海に沈む夕日がきれいな場所なの。夕日は無理でも、海くらいは・・・と思っていたのに~」と残念そう。
ここで夕食も取る予定だったそうです。
私も残念!でもこうなったら、無事に帰ることが最優先!

行きに見た新冠の大きな馬の岩絵が消えていないか、そしてあの大岩が崩れ落ちていないか、梢さんは気にしましたが、帰りに見たらちゃんと残っていて、ほっとしました。

◯ 命からがら

ようやく苫小牧市内に入って、二人で「は~~っ」と安堵のため息をつきます。
とりあえず、海に面した道路から離れて、車ごと波や土砂に流される危険はなくなりました。
無事に台風からも逃げ出せたようで、気がつけば、雨もすっかり弱くなっています。
あー、命拾いした気分。

◯ 白老牛ステーキ店「びび」

梢さんが連れて行ってくれたのは、白老牛のステーキ屋さん、和牛レストランログハウス「びび」でした。
すてきな森のなかのログハウスといった雰囲気のお店。



あたたかい明かりを見ると、緊張がほどけて涙がじんわり浮かんできます。
ああ、無事に帰れてよかったわ。





「今はほっき炙り飯の気分じゃないから、お肉ね!!」「ラジャー!」
白老牛の特上肉を頼みます。 肩甲骨の内側にあるミスジなんて希少箇所、初めて知りました。



いつになく、がるる状態の私達。
気持ちがほっとしたら、なんだか急激にお腹が空きました。
きっと無事に戦地の最前線から帰還した兵士が、生命に目覚めてもりもりものを食べる感じね!



炭焼きの炎でじっくりと焼き上げたお肉はとてもおいしく、添え物のスープやサラダ、アイスクリームも、極上の味でした。
お店の人の対応もとても柔らかく、生きている幸せを噛み締めました。(単純!?)





◯ なごみの湯

車を降りた時には、雨は完全に止み、月が出ていました。
え~、さっきまでの、まっすぐ車を走らせられないような嵐は、いったいどうしたのかしら。
もう完全に、台風はいなくなっちゃったのねー。
新千歳からの飛行機が飛んでいくのも見えます。

2日目まで一緒だった純はこの日、はやぶさでゆったりと帰京する予定でしたが、電車がすべて止まったため、急遽最終便のフライトで帰ったとのこと。
飛行機が飛べなかったため、空港は人であふれかえっていたそうな。
あとで聞いたら、飛行機が遅れに遅れて、羽田に着いたのは真夜中2時過ぎだったそうです。



身体を温めようと、市内の「なごみの湯」に行きました。
「三石の温泉か、レコードの湯がよかったのに・・・タオルも持ってきたのに・・・」と、がっかりしている梢さん。

入口を入ったところにあった液晶大型TVで、台風特別情報が流れていたため、まずはソファに座ってかぶりつきで見入ります。
えりも岬では、なんと風速35.4kmだったそう!!
私達が現地を訪れたほんの少し後の測定値です。
風の館では風速約25m/sを体感できるそうですが、今回、はるかに激しい風を、期せずして体験したことに。。。

えりも岬からの道は通行止めになっているそうです。やっぱり・・・。
帰りの、冠水した道路の恐怖を思い出しました。

大風、大雨など、記録的大雨による初の特別警報がずらりと出ていました。
今回から新たに設定された警報だそうです。
今回の台風18号は、日本中に大きな被害を与えたものでしたが、北海道もまた、その猛威にかかり、避難した人もいたということでした。

◯ 夜のはくちょう饅頭

温泉で、ぽかぽかと身体を休めて、無事に帰宅しました。
すっかり雨も上がって、月が綺麗。



車から荷物を出すときに、はくちょう饅頭の袋を発見。
行きのウトナイ湖畔で買ったものです。車の中では、ものを食べるどころではなくて、すっかり忘れていました。
緊張していたので、ドリンクはからになったんですが。
帰宅してからデザート代わりに食べました。
ああ、白鳥の町、苫小牧に帰ってきたわー。

一日ドライバーでハンドルを守ってくれていた梢さんは、大変な一日を無事終え、疲れ切って12時前にコテンと寝ました。
私は、日記を書いてから寝ようと思いましたが、やっぱりクタクタで、彼女とほぼ一緒の時間に就寝。

風速35.4km。忘れられない数値になることでしょう。
すごい一日だったわ~。

最後、5日目に続きます。


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