風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

雪の金沢、北の幸 2-(1)

2016-04-13 | 中部(北陸)
その1からの続きです。

○ この日は荒くれ男川

金沢2日目の早朝、起きて窓の外を眺めます。
まだ薄暗く、窓が二重になっているため、どんな天気かよくわかりません。

朝食前に、辺りを少し散策しようとホテルを出ると、雪がしんしんと降っていました。
わあ、前日の雨が雪になっちゃった。



犀川と浅野川という2本の大きな川が、金沢の町を流れています。
その流れ方から、犀川はおとこ川、浅野川はおんな川と呼ばれるそう。
前日に浅野川を渡ったので、今度は宿のそばの犀川に行ってみました。

昨日からの雨を受けた犀川は、流れの早い濁流になっており、見ていて怖いくらいでした。
かなりの荒くれ男です。
前日よりもはるかに冷え込んでおり、寒いので、早々に宿に戻ることに。
この日は宿を出たら、一日ずっと外にいる予定ですが、大丈夫かしら。

○ 1日1本のバスを逃す

午前中には、白山比(ひめ)神社に行こうと思います。
神社まで一本で行けるバスがホテル近くを通るため、それに乗ろうと早目に行って待ちかまえていました。

バス停は、片町のバス発着所事務所の前にあります。
行先方面はわかりますが、何番系統なのか確かめたくて事務所の人に聞くと、親切にバスの路線図を広げて説明してくれました。
ちょっとそわそわしながら聞いていましたが、その間に待っていたバスがやってきました。
はっと気がついてダッシュで事務所から出て、手を振って少し追いかけましたが、気づいてもらえず、バスはスピードを上げて去って行きました。。。

なんということでしょう。
その日一本しかない、直行バス。ワンチャンスだったのに、目の前で失ってしまったんです!
待ちかまえていて、乗れないのがおかしいような状態で、乗れなかったなんて。
ガックリです。肩を落として、事務所の先ほどの人のもとに行き、乗り損ねたと報告すると「あ、雪が降っているのに時間通りにきたんですね~」というのんびりした反応。
まあ、それはすごいですけどね!

「じゃあ、まずは野町駅行きのバスに乗って、それから北陸鉄道石川線に乗り、終点でまたバスに乗り換えて下さい」
こともなげに言われましたが、実際には大変なルートになります。
まさか、こんなことになるなんて。かなり打ちひしがれました。

○ どちらの神社

この日の午前中は白山比神社、午後は能登半島の気多大社に行こうと考えていました。
距離が離れているし、交通の便が悪いため、かなり分刻みの予定を立てていましたが、まるっと見直さなくてはならなくなりました。

気多大社へのアクセスも大変ですが、金沢駅から大社まで一本で行ける一日数本の限定バスがあります。
それにはまだ間に合いそうなので、気分をがらりと変えて、金沢駅に出て気多大社の方に行こうかな、と野町駅とは反対方向の金沢駅の方に行きかけました。

ただ、足が停まります。
予定通り、白山比神社にした方がいいのではないかという心の声が聞こえます。
両方の神社を参拝するのは不可能。どちらかを選ばなくてはなりません。
今いる片町からだと、白山の方が行きやすいのです。

今回は、やはり白山比神社を訪れることにしました。
金沢駅に向かおうとしていましたが、回れ右して、再び野町駅の方を向きました。

さっき乗り損ねたバスだと神社前まで行けましたが、それを逃したとなると、バス→電車→バスと乗り継いでいくルートになります。
時間も手間もかかりますが、これしか道はありません。

○ 駅まで歩く

野町駅までバスで、と教えられましたが、目の前で目当てのバスを逃したショックが強くて、違うバスに乗る気になれません。
能登に行くのをやめたことで、分刻みに急ぐの必要はなくなったため、駅まで歩いて行くことにしました。
徒歩圏内ですが、20分ほどかかります。
しかも風が舞い、雪が降りしきる中を歩くのは、寒いし濡れるし足元はぬかるんでいるしと、全然散歩モードにはなれません。
それでも、予定と違う行先のバスに乗ったらさらに落ち込みそうだったので、やるせない気持ちを抱えて歩いて行きました。

朝の散歩で見に行った犀川の大橋を渡ります。
朝よりも水かさが増し、濁流の流れは激しくなっています。
雪がどんどん降り続けています。
これは、一日降っていそうです。



○ 水で雪を解かす

車道の真ん中の中央線から水が出て、雪が積もらないような仕組みになっていました。
おお、青森で見るシステムと同じ。北国仲間だわ。
金沢出身の人も「北陸には、水を道路に撒いて雪を溶かす消雪パイプがほとんどの道路にあるので、よほどでない限り車道は雪道になりません」と言ってたっけ。



でも、札幌を訪れた時に、向こうの友に話したら「こっちでは見たことがないよ。道路に電熱線が仕込んであって、熱で溶かすんだよ」と言われました。
雪国はどこも、同じ対策を取っていると思っていたので、驚きました。
親に話すと「札幌は海が遠いからじゃない?」という意見。
海水を使っているのかしら。たしかに水道水だと予算がかかるし、金沢も青森も海沿いです。

○ 北陸鉄道石川線

雪の降る中を、ひとりてくてく歩いて行きました。
「今年は暖冬だから、雪は降らなそう。雪道になるほどの天候なら、運が悪いと思って諦めて」
「もし新規に雪が降ったら、完全防水の靴じゃないと水浸しだよ。ゴアテックスとかね」
旅行前、富山の友人がそう教えてくれましたが、まさか雪が降るなんて思わずに普通の靴で来た私。
靴が濡れたら足が冷えて指先が凍ってしまうため、足元に気を付けながら一歩一歩進みます。



北陸鉄道の野町駅に着きました。小さな鉄道で、1時間に1、2本しか電車は来ません。
あせってもどうにもなりません。ここで20分ほど電車が来るのを待ちました。

北陸鉄道に乗り放題の一日乗車券があると知り、これを使ってみようかなと思いましたが、駅員さんに聞くと、使える石川線と浅野川線の接続はないそうです。
つながっていないの?
両線で重なる駅がないのだとか。
乗り換えられると思った駅は、新西金沢駅と北鉄金沢駅。ちょっと違いました。

「2本の線を乗り継ぐ時はどうするんですか?」と駅員さんに聞くと「バスですね」との答え。
うーん。土地勘がない私に一日パスは使いこなせそうになかったので、やめておきました。
加賀百万石らしく、金沢金箔仕様のカードだったんですが。

やってきた電車に乗りこんだのは、私を含めてほんの数名。運営は大丈夫かしら。

車両の中には『わたしのマーガレット展』ポスターが掲示されていました。
東京で前の年に行われた展覧会が、国内5カ所を巡って北陸にやってくるみたい。
オスカルがいます。ベルばらってマーガレットで掲載されていたのね。
会場には、往時の北陸乙女たちが大集合することでしょう。



○ 始発から終点まで

昨日の北陸新幹線と同じように、北陸鉄道石川線に始発から終点まで乗っていきます。
途中停まる駅の名前が、雰囲気があっていい感じ。



「乙丸(おとまる)」・「 四十万(しじま)」 ・「陽羽里(ひばり)」・ 「日御子(ひのみこ)」など。
自分の中の中二病やヅカ要素を刺激されるわ~。



正面から撮れていないものは、看板に近づく前に電車が発車してしまった時。
数名しか乗っていないので、バシバシ写真を撮りまくって、悪目立ちしたくないという気持ちもありました。



終点の「鶴来」も「つるぎ」という響きだと、「剣」に思えます。

○ ポンポン電車

北陸鉄道、おもしろかったです。
なんだかすごく揺れるんです。横じゃなくて縦に。
座っていると、ぶるぶるじゃなくてポンポン、いやというほど跳ね上がります。
時刻表を見ていましたが、とても文字を追えずに(これは無理だわ、読めないわ)とあきらめました。
でも、地元のおばあさまたちは慣れている様子で、全く動じる風もなく、落ち着いて雑誌を読んでいました。

座席もスプリングが効いているため、トランポリン並みの弾みのよさ。
ポンポンがずっと続いても、乗客は誰も動じず、眉一つ動かしません。ひとりで内心笑っちゃっているのは、私くらい。
上下運動によって、ダウンコートの中から首元に空気がパフッパフッと来るほどでした。

うーむ、今まで乗ったうち、酔いそうなほど横揺れがすごかったのは上信電鉄でしたが、私の中での縦揺れ王者はこの鉄道になりそう。

○ 能登はパス

北陸鉄道でポンポン飛び跳ねて気分転換ができ、朝いちのバスを逃したブルーな気持ちはかなり晴れました。
そのバスに予定通りに乗れたら、気多大社にも多少無理して行ったと思いますが、予想外の雪という慣れない天候の中で、時間を気にしてせわしなく移動することもないですね。
チェックしていた羽咋のUFO博物館、コスモアイルも、ちょうど休館日でしたし。
能登半島の方には、いつかじっくり訪れたいなと思います。

○ 駅から歩く



30分ほどで着いた終点、鶴来駅。レトロな駅舎です。
鶴が飛来するんだろうな、と思います。
(横浜には鶴見があるなあ、つるぎとつるみ。)なんて考えていたら、この町に金剣宮という神社があり、そこが地名の元になっているのだそう。
同じ響きですからね。
鶴は関係なかったみたい。

さて、ここからまた歩きます。バスはやはり1時間以上やってきません。
改札口の駅員さんに切符を渡しながら聞くと、詰所から地図を持ってきて詳しく教えてくれました。
こちらの人たちは、みなさん親切です。

行き方を教わり、駅から神社に向けて、歩き出しました。
雪だからか、誰も歩いていません。車もほとんど通りません。
鶴もいません。寂しいわー。



一般家屋にしてはなんだか雰囲気のある建物だと思ったら、それは一ノ宮駅跡でした。
昔はここまで来る電車があったそうです。今でもあったら、こんな苦労はしなかったのにー。
建物の前にはバス停がありました。朝のバスに乗れたのなら、ここで降りたはずでした。
まあ、ハプニングも旅の思い出~。

○ 参道に一人



鶴来駅から30分ほど歩いて、神社の入り口につきました。
鳥居をくぐり、まっすぐ山へと続く表参道を通ります。
雪景色になりつつある、自然たっぷりの道。
雰囲気があって「美しい日本の光景」という感じ。
長い参道には、誰一人いません。
こんな雪の日に、白山を祀る神社に行くもの好きは、私くらいなのでしょうか。



ここは白山信仰の中心となる、全国の白山神社の総本宮。
全国に白山神社は3000以上あるとのこと。
前から来たかった場所です。
きれいな空気が集まっている場所で、心が洗われたようなきもちになりました。

自然と一体化したように、狛犬がいました。



平成29年の白山開山1300年に向けての、イベントが行われるそう。
ここ、加賀の白山比神社のほかに、以前、越前勝山の平泉寺白山神社を訪れたことがあります。
苔が美しい、自然いっぱいの素晴らしい神社でした。
その二社に美濃白鳥の長滝白山神社を加えた三社は白山の三馬場と呼ばれ、いま牛王宝印スタンプラリーが行われているようです。
馬場とは、霊峰白山に向かうそれぞれの出発点のこと。
北陸人だったらやってみたいところです。

○ 白山神社の総本宮



上に上がると、拝殿そばには数名の参拝客がおり、社務所も開いていました。
考えてみれば、雪景色はこちらの人にはさして珍しいことではないのでしょう。



拝殿前にいるのは女性がほとんど。私がいる間、拝殿柱の陰に隠れるように、一心にお祈りをしている女性がいました。
邪魔をしないように、そっと離れました。



境内には奥宮遥拝所もありました。
霊峯白山の御前峯(標高2702m)にある奥宮を拝む場所です。
現世とかけ離れた空間。静かで心洗われる、すばらしい雰囲気です。



大正三、四年戦役戦利兵器と刻まれた陸軍省奉納の石碑がありました。
第一次世界大戦の頃のものですね。



雪が降って幻想的ですが、やむ気配もなく降り続け、見てわかるほどどんどん雪が積もっていったので、(これはいけない)と思いました。
あまりムードにひたってもいられません。
ここはかなり山に近い場所。雪山に長居は無用です。
ほかの参拝の方々は、荷物も少なく、皆さん車で見えているようです。
旅行の全荷物を持って歩いている私は、遭難しないようにしなくては。
参拝をすませたら、すみやかに登ってきた石段を降ります。



白山比神社にいる間、雪が気になりつつも、あまりに美しすぎて、時がたつのを忘れてしまうほどでした。
本当に神が宿っている感じでした。
東京の根津神社の近くに白山という地名があり、そこに白山神社もあるため、本家がずっと気になっていたんです。
山の神社は好きだし、行けて満足だわー。身体の底から冷えましたが!

○ 門前町の面影

電車発車時刻は40分後だと、先ほど確認しておきました。
バスの時間にはうまく合わず、駅まで再び30分強の徒歩。少しだけゆとりがあるので、歩きながら、行きよりも念入りに町を眺めました。



かつては門前町として栄えたのでしょうか。
古い家並みが残されていました。



酒造会社や酒屋などがレトロ。



○ 天狗のお肉

「天狗乃肉」というお店があってびっくり。
人魚の肉を食べたという人は、昔話で聞いたことがありますが、天狗のお肉については、ついぞ聞いたことがないですね。
食べたら空を飛べるのかな?鼻が伸びるのかな?



お寺の一言。うーむ、深い。
寒すぎて頭に血が巡っていないから、あとでじっくり意味を考えようっと。



○ 再び北陸鉄道

ちょうど、というかぎりぎりの時間に駅に着きました。
先ほど道を教えてくれた駅員さんに「行ってこれました」とお礼を言い、電車に乗り込みます。
ああ、中が温かい。行きの電車を降りて以来の暖房です。
降り続ける雪の中を歩いて冷えきった身体が、少しずつ温まってきました。

駅から眺めた白山連峰。
雪は解ける様子もなく少しずつ積もり始めています。
明日には、辺りはすっかり雪景色でしょう。



電車の中で生き返った気分。雪に濡れたダウンコートも乾きましたが、外は相変わらず、雪が舞い踊っています。
電車は2両。乗客は私を含めて2人のみでした。
運営、本当に大丈夫かしら?

でも、途中の駅からちらほらと人が乗ってきて、行きよりはずいぶん人が増えていました。
金沢の町の方へいく人が多いからでしょう。

○ お客様の中に・・・

野々市駅に電車が停まったところで「どなたか、5千円札を両替できませんか~?」と車掌さんが声をあげました。

「どなたかお医者さんは~?」のシーンには、これまで出くわしたことがありません。
あったところで、私は助けになれなませんが、その変化形に遭遇したわけです。

お財布を見ると、ちょうど千円札を5枚持っていたので、「ありまーす」と言うと、車掌さんと一人の女性がやってきました。
その人が5千円札しか持っておらず、車掌さんはおつりを出せなかったのでしょう。二人にお礼を言われました。
私も石川県の役に立ったわね!(広げすぎ)

石川線は、両端と新西金沢の3駅以外の14駅は無人駅。
電車もワンマン。だから駅に停まっても、両替のしようがないんですね。
その間、電車は止まったまま。運行時間は少し遅れたと思いますが、乗客は誰も何もいいません。
のどか~。

JRの駅と接続している新西金沢駅で、大勢の人が降りていきました。
金沢駅と隣駅とはいえ、かなりの距離があるようです。
地方のJRを甘く見てはいけません。駅と駅の間隔は、首都圏とは全然違うのです。
私はがらんとした車内に残り、終点の野町駅まで乗っていきました。

その2に続きます。


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2 Comments

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Unknown (アネッティワールド)
2016-04-17 11:43:19
一日に一本のバスに乗り遅れ
普通なら頭にきて行くのをやめるところが
乗り継いで乗り継いで行く行動力に
びっくりしましたが
なるほど。

素晴らしい景色が待っていてくれたんですね。
雪は寒いけど
その見返りも大きいですね。
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アネッティワールドさん (リカ)
2016-04-18 15:39:11
うーん、でもバスに置いていかれたので、別のバスに乗る気はもう起きなくなっちゃいました!
近所だったら、ぷりぷりしてやめちゃったかもしれませんが、なかなか行けない北陸なので、なんとか必死でしたよ~。
こういう時、車旅行っていいなあって思います~。でも運転下手なので、とても一人で乗る気にならなくって(^_^;)
まあ、なんとか行けてよかったです!
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