風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

横浜工場夜景アドベンチャークルーズ 2

2018-05-25 | 神奈川
その1からの続きです。

● 闇に浮かぶ光の城

クルーズ船に乗り、根岸の工場群を海から見学しています。
中でもひときわ目立つ、不夜城のように大きな建物が、私たちを出迎えてくれました。



それはJXTGエネルギー根岸製油所。
「光の城」という呼び名の通り、闇の中で煌々と輝いています。



隣の埠頭は、もう磯子エリア。
東京電力南横浜火力発電所やJ-POWER磯子火力発電所といった大きな建物が並びます。
石油コンビナートも、静かに佇んでいました。







● 宇宙遊泳気分

日中はかなりノイズに囲まれたイメージの工業地帯。
そんな喧騒は完全になりをひそめた、硬質感あふれる夜の工場プラント群と向き合います。
フレアスタックが、静かに炎を上げて、燃え続けています。





足元はゆらゆら揺れており、宇宙船に乗って、宇宙ステーションに接近しているような気分。
非日常的なのに、臨場感たっぷりでした。









● 寒さと船酔い

この日は日中ずっと雨が降っていて気温が低く、5月なのに冬に戻ったような寒さでした。
そんな日の夜に、岸からずっと離れた海の真ん中にいる、船上の私たち。
寒すぎて、ガタガタ震えます。
顔も手も冷たくて、今にも風邪をひいてしまいそう。
寒さに耐えかねて、帰りルートにはみんな、暖房が効いた船室に入りました。

ただ今度は、激しい揺れで、船酔いしそうになります。
極寒と船酔い、どちらがマシか。
う~ん、極寒ですね。
ほかの乗客は船室から動きませんが、私と友だけ、揺れに耐えながらまた外に出ました。
さっきまで座っていた座席は、すっかり波をかぶっており、スタッフに撤去されていました。
そこで、柱につかまりながら、両足を踏ん張って立っていきます。
もうクルーズ船だとは思っていません。海賊船に乗り込んだ感じです。

「え~、私はこの道50年、さまざまな船を動かしてきました」と、とつぜんアナウンスが語りモードに一変。
えっ?船長、自分の話をはじめちゃうの?
国内外の貨物船に乗り込み、キャリアを積んで、独立したそうです。
マイクを通して、彼の半生が語られましたが、船酔いしていた私は、正直あまり耳を傾ける余裕がありませんでした。

● みなとみらいの光



暖房の部屋から外に出て潮風を受けていたら、少しずつ船酔いが収まってきました。
ほかの人はあいかわらず暖かい船室から出てきませんが、船酔いよりは寒すぎる外の方が全然マシです。

再びベイブリッジの下を通り、湾内に戻ってきました。
みなとみらいの光の都市が近づいてきます。



船長は「行こうかな~、どうしようかな~」と言いながら、汽車道の方にまで入ってくれました。
わあ、屋形船に乗らないと見られないと思っていた、海からのみなとみらい近景だわ~。



甲板に立って橋の下を通ると、上から人々が手を振ってくれます。
「落ちよっかな~」「受け止めるよー」
知らない人と軽い会話を交わしながら。



観覧車やランドマークタワーを海から見上げながら、船は日本丸の方まで行って、また戻りました。





● TVに出た船長

みなとみらいから、今度は象の鼻埠頭の方へと向かいます。
波止場近くなって「え~、わたくしごとではありますが」と話し始めた船長。
「先日NHKに出ました。大岡川の桜の番組を観た人はいませんかー?」と、マイクを通して船長は私たち乗客に尋ねてきました。
「NHKドキュメンタリー:小さな旅"さくら色の水辺で~横浜市 大岡川~"」でした。

「あ、私、その番組観たわ」と友に話します。
ただ、船室の外の船尾辺りにいたので、返事をしても聞こえないと思い、声を上げずにいました。
船室内にいる人たちは誰も反応しなかったようで、
「えー、見てないの?」
「視聴率10%の番組だって聞いたから、10人に一人はいると思ったのに…」
「今日は12人いるのに…」
「休日の朝だったからかな…」
マイクを通した声が、どんどんしょんぼりしてきました。
船長、元気出して!あとで話すから!

● ピア・象の鼻

サンタバルカ号は、ゾウの鼻埠頭に着岸しました。
出航場所とは違う、この場所で下船します。



運転席から離れ、私たちの前に立った船長と対面したときに「番組、見ましたよ!」と話しました。
「えっ、本当に?」
日焼けした浅黒い船長の顔が、ぱあっと明るくなります。
「グランデ号を運転していたやつだよ」と船長。
「特別養護学校の子どもたちを乗せていましたね」



その番組では、子どもたちが満開の桜の花にタッチできるように、岸のそばギリギリまで寄ってあげたりしていました。
船長がボランティアで毎年子どもたちをお花見クルーズに招待していると番組で紹介されて、(立派な方だなあ)と思って観ていたのです。
あの永井船長が、あなただったのね!
うれしくなりました。

● 冒険を終えて

予想をはるかに超える、ハードボイルドな船の冒険。
ムーディさはまるでありませんでしたが、ワイルドでアドベンチャラスなシー・ジャングルクルーズでした。
加えて、いい人オーラがにじみ出ている船長のキャラがよくて、アナウンスを聞きながらずっと笑っていました。



夜の海の上で、こんなに爆笑するとは思わなかったなあ。
ハッピーな気持ちで船を降り、桟橋から手を振って、お別れしました。

● epilogue



キリンのようなガントリークレーンや、聖火のようなフレアスタック、そして輝き立つ光の城。
目を閉じると、今でも瞼の裏に浮かび上がります。
馴染んだ横浜ですが、海から眺めた光景は、想像もしなかった別世界でした。

近場なのに、遥か彼方、宇宙まで旅をしてきたような浮遊感です。
予想外にワイルドだったのも、スリル満点でワクワクできました。
予想以上に楽しかったひと時。
次は、京浜運河のコースにも行ってみたいなあ。



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