ringoのつぶやき

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マーケット波乱のマグマ(上)日米欧「債務の罠」―財政リスク、見えぬ解。

2011年06月06日 07時23分47秒 | 

2011/06/06, 日本経済新聞

グローバルな投資資金の流れが変調をきたし始めた。石油をはじめ商品の価格が乱高下し、株式は方向を見失い、逃避資金は国債に走る。日本は経済と金融市場が外頼みの色彩を強めているのに、政治は内を向き迷走する。市場波乱のマグマには警戒を怠れない。

道遠い自律回復


 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月末、上から3番目としている日本国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。「税制改革の範囲や実効性を重視する」といい、3カ月以内と早い時期に結論を出す。

 税収が当初見積もりの41兆円を下回るのは必至。国債発行額も当初予算の44兆円を上回る情勢だ。菅内閣に対する不信任案はからくも否決されたものの、参院で多数を握る野党とのねじれは続いている。


 今年度に37兆円近くにのぼる赤字国債発行の裏付けとなる特例公債法案の成立のメドが立たず、歳入の4割に当たる部分に穴が開いている。20兆円を限度とする政府短期証券を発行したり、国債償還の元となる国債整理基金への資金繰り入れの時期を遅らせようとするなど、政府は財政の資金繰り破綻の防止に必死だ。


 そんな綱渡りの続く日本の債券に、時ならぬ外国人投資家の買いが殺到している。4月の買越額は1・6兆円。5月は28日までに2・6兆円も買い越し、2008年8月の2・8兆円に迫った。皮肉にも「安全資産へのシフト」と称する世界的な債券買いの一環だ。


 米景気回復の鈍化を懸念し、米長期金利は3%の節目を割った。ギリシャなど欧州の債務危機が深刻さを増し、資金が安全性の高いドイツなどに逃避した。昨年と同じ市場の変調が、今年も繰り返されている。先進国が08年のリーマン・ショック後の落ち込みから、自律回復を達成できていない証拠でもある。


 問題の震源地は依然、米国の住宅。「市場の回復には数年かかる」。楽観論を繰り返してきたガイトナー米財務長官は、最近になってこんな認識を示した。住宅市場の低迷は銀行の不良債権を膨らませ、米金融システムを不安定にする。


 欧州はソブリンリスク(政府債務の信認危機)という爆弾を抱える。「ギリシャは12年4~6月期には債務の一部借り換えができなくなる」。ショイブレ独財務相のそんな発言が金融市場を揺さぶった。
 先進国が「債務の罠(わな)」に陥っているのを、市場は強く意識している。大規模な景気テコ入れ策と税収の落ち込みで、日米欧主要7カ国(G7)の政府債務残高は34・2兆ドルに膨らんだ。

 しかも、痛みを伴う財政赤字の削減は深刻な政治対立を引き起こす。米国では政府債務が法律で定める上限に達してしまったのに、民主・共和両党の財政赤字削減協議が前に進まない。


ショック療法も


 「市場が合意を危ぶめば、米国債利回りはいきなり1~2日で0・25~0・5%変動するだろう」。オルザグ前米行政管理予算局長はこう述べ、与野党合意には債券市場によるショック療法が必要との認識さえ示す。


 日本の背負う課題は米欧よりも重い。国内総生産(GDP)の2倍もの政府債務を抱えながら、震災復興という待ったなしの仕事に直面しているからだ。


 財政の持続可能性に疑問符が付いた途端、債券市場が反乱を起こし、今は1%すれすれの長期金利がハネ上がりかねない。一方で、復興のための第2次以降の補正予算をほったらかしにしておいては、企業や家計の景況感を悪化させ、株式市場の懸念を強めてしまう。


 菅直人首相が退陣を示唆し、震災対応もできていないなかでの解散・総選挙という異常事態はかろうじて回避された。それにしてもいまは、与野党の区別なく、短期の震災復興、中長期の財政再建という課題に取り組むときのはずだ。
 無為を重ねると、米欧と比べものにならない市場の混乱を誘発しかねない。それは天災ではなく人災だ。(編集委員 滝田洋一)

 



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