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オウィディウス(前43-後18)『変身物語』(上)「巻4」(34)「マルスとウェヌス」:ウルカヌス(火と鍛冶の神)は妻ウェヌス女神(ヴィーナス)の軍神マルスとの不義をアポロン神から知らされた!

2022-08-16 16:05:29 | 日記
バッコスの祭りに参加せず家の中にこもり、機織(ハタオリ)をしていたミニュアスの娘たち(アルキトエ、レウコノエ、アルシッペ)の2人目、レウコノエが「ウェヌス女神と軍神マルスの不義」の物語を話し始めた。
(1)ウェヌス女神(ヴィーナス)の軍神マルスとの不義を最初に見つけたのは、太陽神アポロンだった。このことを、その密通の場所も含めてアポロンは、ウェヌス女神の夫であるウルカヌス(火と鍛冶の神)に知らせた。ウルカヌスは肝をつぶしたが、思い直すと、たちまちのうちに「真鍮の細い鎖で編んだ網」の罠を作った。この網は肉眼ではとらえがたい、蜘蛛の巣にも負けない出来栄えだった。
(2)ウルカヌスは、この「網」の罠を密通の寝床のまわりへ張りめぐらせた。で、妻ウェヌス女神とその情人(軍神マルス)とがひとつ床に入ると、夫ウルカヌスの腕前と、新案の「鎖で編んだ網」の罠の働きで、2人は見事にとらえられ、抱き合ったまま身動きできない。
(3)ただちにウルカヌスは象牙の扉を開いて神々たちを呼び入れた。ふたり(ヴィーナスとマルス)は、ぶざまにも、くっついたまま横たわっている。陽気な神々のなかのひとりが、「こんなぶざまな恰好になってみたいな」といって、みんなを笑わせた。この話は、長い間、天界のいたるところで、誰知らぬもののない語り草となった。

《感想》ウェヌス女神(ヴィーナス)とウルカヌス神が別れることはない。ウルカヌスは妻の密通に怒るが、妻(美の女神ヴィーナス)に心底、惚れている。他方、ウルカヌスは、生まれつき片足が悪く、そのことに引け目を感じている。

《参考》ミニュアスには3人の娘、アルキトエ、レウキッパ(レウコノエ)、アルシッペがあった。彼女らは後に、バッコスの怒りにふれる。

★ティントレット『ウルカヌスに驚かされるヴィーナスとマルス』(1555頃):ティントレットはオウィディウスが語る神話を独自の解釈で描く。寝室に突如現れた夫ウルカヌス(ヘパイストス)に、ヴィーナス(ヴェヌス)とマルス(アレス)が驚き慌てる。ウルカヌスは妻の浮気を疑っている。逢瀬を楽しんでいたヴィーナスは平然とした態度でベッドに横臥する。ウルカヌスは妻の衣服を持ち上げ浮気の証拠を探そうとする。だが実は、背景の丸い鏡は磨かれたマルスの盾であり、浮気相手のマルスがテーブルの下にいる。マルスは顔を出し、威嚇する犬をなだめている。エロス(キューピッド)が窓辺のゆりかごで眠ったふりをしている。


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