King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

これはいい『時間封鎖』

2009年09月10日 09時28分45秒 | 読書

アメリカのTVドラマとか映画とかの特徴は
とにかく正義は圧倒的に正しく、強く、かなり
困難な状況に追い込まれつつ、そして最後は
勝つというパターンが定着していて、それ以外
の要素が入り込む余地がないほどになっていると
感じていました。

ふと3年前の自分のブログを読み興味深いことが書かれて
いました。

『LOST』とか『ER』とか最近のドラマは主人公が
負け続け失い続ける物語となっているということです。

リーマンショック後の今は、もっと簡単にもっと白黒
はっきりしていて、とにかく正義は勝つというものに
変わっているのか。

昔からアメリカ映画は、アクションと能天気に正しく
勝つ強いヒーローばかりでした。

そんな世界に、毎週同じ時間にチャンネルを合わせる
だけの魅力を持たせられるはずもなく、編み出された
のが、謎に満ちた島や過去の失敗や人生の失敗から
現在に導き出した生きる知恵だったり、決断だったり
クリントイーストウッドなどは愛の形としての生だったり
したわけです。

アメリカでも映画をあれだけばかばかしい内容に塗りこめ
ていても、文化であり芸術だとする人がいてデートに
誘う第一の目的に映画に行こうと言う台詞が多く聞かれ
ます。

そんなアメリカ世界に文学で人々を魅了し人生の深遠を
覗かせてくれるものなど育とうはずもないと思って
いました。

しかし、SFだけは飛び切りに面白く、人生の謎と世界の
謎に突き詰めてもしやこういうことではと現実の世界も
考察させるものが数多くあります。

この本もまさにそんな一冊で、私はヒューゴー賞受賞と
いうことと帯にあるSFが読みたいベストSF第1位という
キャッチに触発されたのですが、まさかここまでという
意外感に包まれました。

よく人類の最後を描く小説はありますが、コーマック
マッカーシーのように大絶賛された本でもただ人類が
核戦争を起こしてしまい、生き残った人類のサバイバル
だったり、というありそうだけどどうしてそうなってその
次どういう世界が展開されるのかという小説はなかった
のです。

その中で、時間封鎖は太陽が膨張し地球を飲み込んで
しまう人類最後の時を描いており、その時何が起きて
何がどうしてしまうという意外なドラマです。

それでありながら、不思議な臨場感に満ちていてありえない
世界がその不思議な現象の謎を見極めたいという欲求の
ままにドラマは進行し、人類の最後はこうかもしれないという
同意感でつつまれます。

今でも話題の『1Q84』の打ちっぱなしの弾のような物語
と違い、打った先、つまり着弾点がはっきり見えるような
そしてその打った先の一つがこの1Q84のひとつにもあたって
います。

久しぶりの読書の醍醐味を味わえた本でした。

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