春の嵐

　昼過ぎの小平。
　パラパラと雨がふったりやんだりとしている。

　風は強く冷たい。
　風は咲き誇っていた桜の花びらをそぎ落としていく。

　散った花びらが風に舞う。
　雨が花びらを地面に固着させる。
　ほのかに赤白い桜の死骸はアスファルトで舗装された道にこびりつく。

　俺はパン屋の仕事を終え、次の仕事先である新聞屋へと急いでいた。

　風が冷たい。　
　寒い。
　新聞屋に向かうにつれ雨は強くなっていく。

　雨も冷たい。
　冷たい雨粒が俺の体温を奪っていく。
　背中の首筋に冷たい雨が叩き付ける。
　それが驚くほど冷たい。
　猫背な俺は、雨が首筋にあたらないように背筋を伸ばして歩く。

　新聞をカブに積み終わり店を出かけている時に雷が光った。
　すぐに雷鳴が轟く。
　いつの間にか、雨は激しさを増し、春の嵐となっていた。

　雨の中をカブで走る。
　少し走ると、たちまち軍手は濡れ、手は寒さでかじかんでくる。

　前を走る自動車はバシャァーと水しぶきをあげ水たまりを突っ切る。
　カブに乗る俺は大きな水たまりをよけて徐行する。

　新聞の配達をはじめるとすぐに足元も濡れてきた。
　靴も靴下もずぶ濡れで、つま先が冷たすぎて痛い。

　手先と足元から冷え、いくらあがいても体温は上がらない。
　ただ寒くなる一方。

　気がつくと、雨は小ぶりになっていた。
　少し体温も上がる。
　やっと寒いという事以外の事も考えられるようになった。

　寒すぎる。
　風邪を引きそうだ。

　仕事が終わったら、立川の日高屋で野菜たっぷりタンメンでも食べよう。
　そして帰宅したら、風呂に入って温まるんだ。　

水曜の朝

昨日の夕方から、弱い雨が降ったり止んだりしていたみたいで地面がずいぶんと濡れている。今朝もまだポツポツと弱い雨がたまに降るが傘をさすほどではない。雲は多いのだが晴れ間も見える。風はなく、空気はひんやりとしていて少し寒い。