「不死身の特攻兵」(鴻上尚史著、講談社現代新書)を読み終わった。9回特攻隊として出撃を命じられながら、すべて生還したという佐々木というパイロットの物語である。佐々木氏はベテランパイロットであったが特攻隊に選抜された。飛行機には爆弾が固定されて外れないようになっていたが、所属した隊長の判断で「爆弾を投下できるように」改造が加えられ、実際に9回中2回は爆弾を投下、相手に損害を与えている。どう考えても1回の突入で自爆するよりも戦果としては大きい。こういう冷静な判断をできる隊長が残っていたのも奇跡のようなものである。
筆者は特攻攻撃というものに終始批判的である。特に「実際に特攻に参加しなかった人達が戦後になって特攻を賛美する」という現象には自分も極めて大きな違和感を感じる(今回のコロナ騒ぎでも、現場でコロナ診療に直接かかわらない人ほど、テレビに出演してきてずいぶんと勇ましい意見を言っていた)。ただ戦争中はヒューマニズムとは完全に別の論理で物事が進むわけで――それはアメリカも例外ではなかったし、旧ソ連がスターリングラード戦で取った戦術などはもっと陰惨である――この筆者の意見に100%賛同もできぬ。国家のエゴがぶつかりあう現場はいつの時代も悲惨である。
Wikipedia「鴻上尚史」
空母ガムビアベイ