
『ひいおばあちゃん』 モニカ・ハルティヒ作 イルムトゥラウト・グーエ絵 高橋洋子訳
講談社(世界の子どもライブラリー) 小学校4年から 187頁 1989年(原書で)
昨日ご紹介した『おばあちゃん』(ヘルトリング作)は、交通遺児という特殊な立場でしたが、より一般家庭寄りなのが、この『ひいおばあちゃん』。
この本ね、今の日本にも通ずるところがあって(介護は女性の仕事とかネ)、共感しやすい!とっっってもよかった!もちろん、例によって絶版ですけど

作者は精神療法の女医さんだそうで、子どもの心理描写がもうお見事で

≪『ひいおばあちゃん』あらすじ≫
小2女子のヨシは一人っ子。妹がほしくてほしくて、たまらないのに、ある日突然家にやってきたのは、妹ではなくしわくちゃで泣き虫のひいばあ。部屋は取られるわ、世話は焼けるわ、汚いわ、で早くひいばあに出て行ってもらいたくてたまらないヨシ。ところが、いつの間にかひいばあが大好きになっていって・・・年をとるって、どんな感じかを教えてくれる物語。
【ここがポイント】
・同居の大変さ&素晴らしさ、老いていくとはどういうことかが分かる
・近所の精神障がい者の子の存在が光る

・ひいばあの昔の楽しかった家族の話、戦争の話が心に残る
・ヨシの心の成長が素晴らしいの一言に尽きる
・一人っ子を気に病んでいる人にぜひ
忙しくていつもヨシの話を聞いてくれない両親。子育て世代は、読んでドキッとします


子どものペースと同じで、話を本当の意味で「聞いて」くれるのはお年寄りなんですよね。ところが、現代ではその子どもたちすらも「急げ急げ」でノロノロの老人にイライラしちゃう

・・・とてもふしぎなことが起こった。ヨシは、まるで魔法のメガネをかけているような気がした。とつぜん、いままで見たこともないものが見えてきたのだ。まわりのものがみんな、ちがって見える。やぶやしげみは、いちめんにぴっかぴかの金ぱくや真珠でおおわれている。ほかの木は、銀色の羽毛のずきんをかぶったり、枝と枝のあいだにうすくすけるレースがたれさがったりしている・・・
そう。いかに普段私たちがキラキラした美しい“そこにある”世界が見えていないことか。ドライブの帰り、夕日が沈む光景がとてもきれいで、お父さんは車をとめると、ひいばあは手を合わせて小声で言うんです。
「すばらしい一日でした。ありがとう!」
それ聞いて、なんだか私とっても感動してしまったんです

神さまはきっと、きょうはいつものたのみごとのかわりに「ありがとう!」のひとことが聞けて、うれしかったにちがいない。だって、「ありがとう!」は、すてきなお祈りのことばだもの。
と。大好きな場面は書ききれないくらいいっぱいあるのですが、もう一つ印象的だった場面。実は、ヨシは母方の祖父母があまり好きではないんですね。口うるさくて、いつもきちんとしろと言われて・・・よくある今の祖父母だなあ、と


「だれにでもあることですもの。」
これね~、言えそうで、なかなか言えない一言。さらに、実はベッドも汚してしまったと告白するひいばあには、
「気にすることはありませんよ!せんたく機があるじゃないですか。」
「いまからあったかいおふろにつかって、さっぱりしたものに着がえましょう。そして、ぜんぶわすれてしまいましょうね。」
って。なんて、思いやりのある言葉


最後のほうで、ヨシがひいばあを名前で呼ぶところ、ひいばあが亡くなるところはもう涙、涙


誰にでも来る老いと死の物語。とても現実的で、かつ心に残る素敵な物語でした
