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『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

架空の友だちとサヨナラするとき

2017-05-07 22:56:14 | 幼年童話


昨日は、児童養護施設の里子ちゃんとじいじの合同バースデイ祝いをしました~

手作りケーキにするか迷ったけれど、毎回一緒にお菓子作っていて、逆に手作りじゃないほうが新鮮かな?とお店に上記写真のようなバースデイプレートを用意してもらいました~。
写真には写ってないけど、バチバチ花火付きのね

当たり!セブンティーンの里子ちゃん大歓喜!!!

本の虫だった(過去形)里子ちゃんに、児童文学贈ろうか迷ったのだけれど、
「もう今は読むひまないし、友だちとしゃべってるほうが楽しい!」
とイキイキとして話しているので、押しつけはグッと我慢(笑)。

リアルな友だちとのコミュニケーションが楽しくてたまらないというのだから、それ以上いいことってないよね、って

人には時として、孤独なときも必要。
それがあるからこそ、人のあたたかみが実感できるから。

今日ご紹介する一冊は、児童文学というよりも幼年童話ですが、そんな孤独なとき一緒にいてくれた、自分にしか見えないお友だちのお話。リアルな友だちができる予感とともに、見えないお友だちのほうは去っていきます。



『ちびドラゴンのおくりもの』(1989年)
イリーナ・コルシュノフ作 酒寄進一訳 国土社
HANNO MALT SICH EINEN DRACHEN (1978)


絵は、伊東寛って・・・ああ、いとうひろしさんか!

ちなみに原書の表紙絵はこんな感じ↓



原書では1978年に書かれたお話ですが、いとうひろしさんの挿絵もあってか古さは感じさせません。

主人公のハンノーはデブでトロくて、いじめられっ子。
そんなハンノーの元に現れたちびドラゴンも、やっぱりドラゴン界では同じく、劣等生。

ところが、人間界に来てみれば、いままで知らなかったことだらけで、ちびドラゴンの好奇心は炸裂します
そんなドラゴンに促されて、色々チャレンジしているうちに、ハンノーは自信をつけていくのです

弱者に対する作者の目線がとてもとてもあたたかいのです。
というのも、作者自身幼少期つらい目にあってきたから。

ここで、注目したいのは、ちびドラゴンのほうだって、彼の世界では劣等生だ、ってこと。
でも、新しい世界をのぞいてみれば、好奇心旺盛でチャレンジャーになっている。そして、それを持ち帰って自分の世界へ戻るんですね。

今いる世界だけが、世界だと思うと息が詰まりそうになるかもしれないけれど、世界はそこだけじゃない!

自信のない子に贈りたい一冊です





低学年&女の子に『おーばあちゃんはきらきら』

2016-12-05 21:10:36 | 幼年童話


『おーばあちゃんはきらきら』たかどのほうこ作 こみねゆら絵 福音館書店


≪『おーばあちゃんはきらきら』あらすじ≫

チイちゃんは小学1年生。おーばあちゃんとは、チイちゃんのひいおばあさんこと。
おーばあちゃんは小さくて、しわくちゃで、目が緑色の湖みたいにすきとおっていて、チイちゃんはおーばあちゃんが大好き。
おーばちゃんのしてくれるおーばあちゃんの小さい頃のお話は、どれもちょっと不思議で、もしかしたらおーばあちゃんは魔法使いなのかもしれない、ってチイちゃんは思ってます。


赤い鳥と青い鳥を追いかけていたら、おばあさんになった自分に会った話、魔法をかけられて緑の魚になった王子さまの話、『妖精のぼうし』の話、外国の本の中に入って、小人の家になった靴の話、思い出をとってきて色を塗ってくれる金色トカゲの門番の話・・・などなど。

文字大きめ(108頁)読み聞かせるなら幼稚園から。自分で読むなら小学校低学年から。

表紙の絵の印象通りの、ふんわりふわふわ優しいお話が8話、おーばあちゃんが話してくれるという形で入っています。女子で夢見がちな子は好きかも

私も小さい頃読んでいたら、好きだったかもな~。ただ、大人になってから読むと、ふわふわしすぎていて、大人も読みたい、というより、子どもに読んであげたい物語かな。
うーん、なんでしょう?内容や発想は好きなのだけれど、文体が合わないのかな。ピュアすぎて、ちょっぴりくすぐったい

著者のたかどのほうこさんは、絵本と幼年童話のときは、平仮名の名前を、児童文学のときは高楼方子と漢字の名前でと使い分けていらっしゃるのですが、漢字の高楼方子さんのほうが個人的には好きなんです。平仮名の時と漢字のときでは、内容もずいぶんと雰囲気や印象が違うんですよねー。

同じ内容を安房直子さんが書いたら、どんな風に仕上がっていたんだろう、と個人的には興味があります。発想が似てるんですよね。ただ、たかどのさんの世界がキレイキレイな世界であるのに対し、安房直子さんはいつも人間の悲哀も少し感じさせる。だから、安房直子さんの物語は大人にも響くのかな。ただ、幼い時期はキラキラしているものだけでも、いいんだと思います

やられたぁ

2016-06-29 21:41:15 | 幼年童話
   

『かいぞくオネション』山下明夫作 長新太絵 偕成社

ああああああああ、やられたぁ~。
まあるく濡れたシーツに羽毛布団。羽毛布団もかいっ。大物やってくれるなあ。怒ったって仕方ないし、怒っちゃいけないことなんだけれど、梅雨時にやられるとへこむんです・・・。しかも、こういうときに限って来客。

三男は2歳のときから既に大丈夫なのに、次男だけはなかなかオネショを卒業できない。一時期は大丈夫になってたのにまた戻ってしまった。長男からボコボコにされてることがかなり影響されてますが、これやっぱり「僕にも関心持って」という無意識からのメッセージなんだろうなあ。まともな会話ができない長男と違って、次男は大人の会話ができるし、情緒も安定してるから私もついつい頼っちゃうんです。いっぱい抱っこはするし、いっぱい甘えさせてるつもりだけれど、でも言ってみればラクな子なので、ついつい意識は大変な長男のほうに集中してしまう。河合隼雄氏の『家族関係を考える』(これ面白いです!)にも書かれていたけれど、真ん中っ子っておねしょする子が多いんですって。兄弟関係において忍耐せざるをえない立場が関係してるのかな~。

そんなオネショの終わらない次男に以前読んであげた本が上記の『かいぞくオネション』。
ナンセンスが男子にはツボらしくて(私には正直いまいちその面白さが理解できない)、ちょっとほっとできるのか、時々思い出したかのように「あのおねしょして海賊になる本借りてきて~」と言います。

毎日のようにおねしょをしてしまう男の子ヒロ。ある日窓がノックされ、「オネション様」と海のマンボウがヒロを迎えにくるのです。シーツのおねしょの跡がどくろマークに似ていることからヒロは海賊と間違われてしまったというわけ。海の魚たちとオネション様の冒険物語。

実は私自身は幼年童話自体があまり得意ではなくて。自分自身の幼少期振り返ると、幼年童話すっ飛ばして児童文学読んでた傾向にあったので思い入れが少ないのと、やっぱり大人が読むには物足りないところがありまして。しかも、この手のナンセンス童話も不得意{ときてる/namida/}。

でも、この本読んだとき次男がほっとした顔してクスクス笑ってるのを見ると、ああ読んでよかったなあ、って。
全国のオネション様たちの強い味方の本です